レトロゲームエンジンPyxelのススメ 2026
・2024/10/10 作品紹介に関する部分などを修正
・2025/2/27 サウンド制作環境や書籍関連部分の記載を最新化し、タイトルを「〜Pyxelのススメ 2025」に変更
・2026/2/19 サウンド関連機能の記載を再度更新し、タイトルを「〜Pyxelのススメ 2026」に変更
・2026/3/22 「AIによる開発」の記載を追加
・2026/5/20 サウンドの記載を再度更新し、8Bit BGM Generator / Pyxel Trackerを使った方法を、後継ツールであるPyxel Composerに置き換え
Pythonで本格的なゲーム開発ができるレトロゲームエンジン「Pyxel」を使って4年くらい個人ゲーム制作をしてきました。
現在は本格的にインディゲーム制作を行って、STEAMやアプリストアに制作した配信したり、noteやXで布教活動をしています。
その私、frenchbreadが全力でゲーム制作に興味のある方へ向けてPyxelをオススメしていきたいと思います。
Pyxelってそもそも何?という説明は公式サイトにゆだねますが、冒頭の簡潔な紹介文だけ引用しておきます。
Pyxel (ピクセル) は Python 向けのレトロゲームエンジンです。
使える色は 16 色のみ、同時に再生できる音は 4 音までなど、レトロゲーム機を意識したシンプルな仕様で、Python でドット絵スタイルのゲームづくりが気軽に楽しめます。
どんなゲームが作れる?
まずわかりやすいところで言うと「ファミコンに代表される8ビットゲーム機っぽいゲーム」が作れます。
自作品で恐縮ですが、PVを作ったものがあるのでご覧ください。
Pyxelと同種のレトロゲームエンジンとして有名のものに「PICO-8」や「TIC-80」がありますが、画面サイズがPICO-8は128x128、TIC-80は240x136であるのに対して、Pyxelは256x256(拡張も可能=後述)なのです。
ファミコンやスーファミの画面サイズは256x224ですので(※)、表示色に関する違いはいろいろとあるのですが、ざっくり「ファミコンやスーファミに近しい画面表現ができる」というわけです。
(※)ファミコンは256x240ですが実質的な表示領域は上下8ピクセル程度を除いた256x224だそうです。スーファミはいくつか画面モードがあり、最も基本的な画面モードだと256x224になります。この記事では詳しくは割愛します。
サウンドについても「ほぼファミコン相当」と思ってもらって大丈夫です。いわゆる8ビット風チップチューンサウンドです。
先ほどの動画を音ありで再生してもらえれば確認できます。
なお、pyxel 2.6.4よりwav/oggを再生できるようになりましたので、素材さえ用意できれば(自分で作れれば)8ビット風チップチューンっぽいサウンド以外も自由に使うことができます。
作品はどうやって公開する?
Pyxelで作ったゲームはexeファイル化(Windows, Mac, Linux対応)できるのと、Webアプリとして実行できるHTMLファイル生成機能を有しています。
WebアプリということはPCでもスマホでもプレイ可能ということで、さらにスマホで起動した場合には自動的にバーチャルパッドがついてくるので、作り手としては実行/操作環境を意識せずに幅広くゲームを遊んでもらうことができます。
また、最近は有志の方によるポータブルゲーム機(ハンドヘルドゲーム機とも、もしくはいわゆる「中華ゲーム機」)上の実行環境整備も進んでいるため、作品を公開して自分以外の方にプレイしてもらう手段がかなり豊富になっています。
自分のサーバーなんてもってない、やり方もあんまりわかってない・・という方でも、GitHubのリポジトリに所定のルール(公式ガイド参照)でプログラムをアップするだけでWeb公開できるので、初期のハードルはかなり低いです。
では、いろんなプラットフォームに配信されたPyxelの作品を見ていきましょう。
自分の把握している範囲でしか書けていませんので、「俺の作品がないぞ!」という方がいたらごめんなさい・・
Steam
冒頭でPVを出した「Dungeon Antiqua」はPCゲームの最有力プラットフォームであるSteamで配信されています(2026.2時点で2作出ています)
itch.io
Steamに次ぐゲームプラットフォームで、制作側としてはSteamよりはハードルが低いitch.ioにはかなりたくさんのPyxel製ゲームが投稿されています。
高品質な作品が揃っており、かつほとんどが無料なので、実際にいくつか遊んで体感してみるといいと思います。
ふりーむ!
国内向け&フリーゲームのプラットフォームとしてはふりーむ!も有名ですね。
他にもいくつかあるかもしれませんが、「GRASLAY」はクオリティが高くオススメです。
App Store / Google Play
Web系にある程度詳しい方ならおわかりのとおり、HTMLアプリ化できるということはそのままスマホアプリ化できるということでもあります。
スマホアプリは審査が少々面倒だったり、スマホアプリゲーム市場は魑魅魍魎な感があるため、主戦場としてはオススメできませんが、実績を作りたかったので私も一本ゲームを作ってストア公開しました。
スマホアプリ化の実現方法などについてはこの記事に詳しく書いていますので、興味があれば別途ご参照ください。
Pyxelの制作環境
Pyxelでかなり本格的なゲームが制作できて、たくさんの人に遊んでもらえたり販売することもできる、ということが理解していただけたと思いますので、続いて目線を制作環境に移していきましょう。
プログラム
プログラムはPythonで書きます。
Pythonはメジャーでとっつきやすい言語ですし、Pyxelライブラリはシンプルで使いやすいです。
私はPyxelに触れる前はPythonのスキルは初心者が教材で学んだ程度の知識しかありませんでしたが、ある程度マスターしている他言語が1つでもあればあまり問題にはならないな、というのが感想です。
なお学習手段については後述します。
グラフィック
Pyxelのグラフィックは原則として以下の16色を使えます。といってもパレットを変更できるので、好きな16色と思って差し支えありません。
(私はこの16色のチョイスがめちゃくちゃ好きなので、頑なにこのパレットを使っています。)

Pyxelにはドット絵エディタが付属しているので、8x8や16x16のドット絵は不自由せずに描くことができますし、Pyxel以外のドット絵を素材を使う場合、画像ファイルをエディタにドラッグ&ドロップすればPyxelのパレットにあわせて自動変換してくれるので、画像素材を準備する上で困ることはあまりありません。
サウンド
初期のPyxelは標準のエディタでサウンドを作るか、サウンドクラスを自前でゴリゴリに操作するくらいしか有力な制作方法がなかったのですが、Pyxel 2.3.0でMMLが、2.6.4でWAV/OGGがサポートされるようになったことで現在は制作の選択肢が豊富になりました。
サウンドを準備する方法をいくつかご紹介していきます。
外部の音源を使う:WAV/OGGの素材はweb上に高品質なものが多数ありますし、DTMのスキルがあれば自分で用意する、もしくは外注することもできます。現実的に最も柔軟な選択肢です。
MMLで打ち込む:MMLなら触ったことがあるという方も多いはず。Webで手軽に打ち込めたりサンプルを聞けるPyxel MML Studioも公式提供されています。ちなみにサンプル曲の提供者は私です。
エディタで作れる範囲でがんばる:制約もまた味なので、エディタで作れる範囲で制作するのは正当なアプローチといえますし、工夫のしがいはあります。itch.ioで購入できるDungeon Witchesなどはこの方式でした。
Pyxel Composerを使う:私が作ったPyxelのサウンドエンジンを使ったサウンドエディタです。PyxelフォーマットのMMLやWAVを生成できます。詳しくはこちら。
文字列でPyxelのサウンドクラスを直接入力する:仕様書に従って直接文字列で入力してしまう方法もあります。長い曲を打ち込むにはかなり根性がいると思いますが、5と同様高品質なサウンドが作れます。これをやっていると思われる猛者も数人知っています。
AIによる開発
軸が違う項目になりますが、2025年末ごろからAIによるコード生成力が飛躍的に向上しました。
Pyxel公式でもこの時流に着目し、AIエージェントがPyxelを動かしやすくするためのPyxel MCPを開発するなどの動きをとっています。
以下の記事で実践的な「Pyxel x AIによるゲーム制作の始め方」を解説したので、こっち方面に興味があれば後で覗いてみてください!
Pyxelの自由度と拡張性
ここはちょっとオマケ的な話ですが、「いくらなんでも今どきファミコン相当のスペックかぁ」という思いが払拭できない方のために。
先ほどのサウンド制作のくだりでも「外部の音源を使ってしまってもよい」と書いたのですが、PyxelはPythonでコードで書けますし外部ライブラリをインポートしても問題なく、制約としてはかなり緩い(自由度が高い)部類のゲームエンジンかと思います。
ゲームエンジンのコアと言ってもいい「256x256で16色、最大4音」という出力系のスペックでさえも、バージョン2から拡張オプションが豊富になりました。
グラフィック面では画面サイズもパレット数も拡張可能です。
たとえば以下は以前に試作した「640x480、256色」の画面モックですが、この例だとひと昔前のツクール制ゲームのような印象になりますね。

サウンドについても、音数を増やしたり波形編集ができるようになっています。
Pyxel 2.0.2 has been released!
— Takashi Kitao (@kitao) December 25, 2023
Example 14 has been added, featuring the audio extension capability. 8-sound simultaneous playback!!
Pyxel 2.0.2をリリースしました!
オーディオ拡張機能を使ったサンプル14が追加されています。#pyxel #python #gamedevhttps://t.co/kQjZxGQNjV pic.twitter.com/MPHWzBhpdA
ただ、このあたりは「解像度や色数・音数は多い(大きい)ほどいい」とは限らない面もあると思います。
ファミコンなどの古のゲーム機同様、オリジナルのPyxelのスペックを遵守することは、短歌や俳句のような一種の様式美という見方もできますし、ロースペックであるほうが一般に制作コストは少なくて済みます(と一概には言えないのですが、トータルではそう言っていいと思います)。
グラフィックやサウンドの制作コストが比較的小さく済むことは、単に「作り手がラク」というメリットにとどまりません。
時間や体力は有限なので、ある部分でかけずに済んだコストを、ゲームデザインを洗練させること、心地よいゲームバランスの調整、細かいユーザビリティの配慮などに注ぎ込むことが、最終的なゲームのクオリティを上げる最良の選択となる場合も大いにあると考えています。
なので、オリジナルのスペック(制約)に沿って作るか、よりリッチなグラフィックやサウンドを使って制作するかは、あくまで作り手の趣向によって決めればいいと思います。
どうやって学習する?
プログラム自体が初心者であれば、まずはPythonの基礎から勉強が必要なのでそれなりに大変ですが、そうでなければ前述のとおりPyxelの学習コストはあまり高くないと思います。
Pyxelの基本の教材は、何と言っても公式ページとサンプルプログラムです。
すでにプログラミングの技能がかなり高かったりセンスがある人はそれで十分なのですが、Pyxelに挑む人にはいろんな適性やスキルの段階があるので、いくつかオススメを紹介します。
書籍
なんやかんやで学習の最初の一歩は書籍がわかりやすいし信頼できる、という方も多いと思います。
現在は公式の書籍が出ているので、質を重視するならこれが一番確実だと思います。
Webサイト
Web上の情報も有用です。
たとえばエンジニアの定番、QiitaのPyxelタグなんかにもそれなりに記事がありますが、こういったものは何か詰まったときなどに調べたりして出会うピンポイント的な情報源だと思うので、ここでは「同じ作者の手による、まとまったPyxelの学習材料」を2つご紹介します。
1つ目はこちら「勉強ボックス管理者ブログ」。
情報量が多くて網羅的で、実例も非常に豊富です。
2つ目はnote上でPyxelの制作関連の投稿を長く綴られているこいでみずさんの記事です。
これは「網羅的な解説サイト」を意図したものではなく、あくまで個人の制作記録の集合なのですが、1つ1つの記事の作りが、ソースコードと画面キャプチャが豊富でとても丁寧なのでオススメです。
おわりに
自分は小学生から高校生くらいのころに遊びレベルのゲームプログラミングをやっていて、そこから20年くらい中断していましたが、もう一度ゲーム制作をやってみたくなってPyxelを始めました。
Pyxelを選択したのは「幼少期の思い出が詰まったファミコンのようなゲームが作れる」「お手軽そう」「Pythonも勉強しておきたい」など、いくつかの理由があるのですが、実は一番大きい要因は作者のkitaoさんが日本人だということです。
自分は微力な個人制作者に過ぎませんが、こんなにも魅力的なレトロゲームエンジンであるPyxelを、1つの日本発の文化として、少しでも発展に貢献できたらいいなという思いをずっと抱いています。
本記事も少しだけその足しになれば嬉しいです。
