初心者フリーランスが標的に!勧誘トップまで経験した女性が明かす「情報商材詐欺」の実態
「スキルも経験もないけれど、独立して稼ぎたい」「フリーランスになったものの、収入が不安定で将来が不安」…。そんな、欲望や心の隙間を狙ってくるのが「情報商材」です。情報商材とは、高収入や成功を得るためのノウハウやツールなどと宣伝して販売される情報のこと。全てが詐欺とは言い切れませんが、一部の人だけが大きく稼ぎ、関わる人が疲弊していったりするケースが後を絶ちません。
現在は会社員として働く佐藤さん(仮名)は、前の会社を退職しフリーランスになったタイミングで情報商材に出合い、一時は「先生という立場で、門下生を勧誘していた」と言います。門下生が増えるに従い収入も増えるはずが「最後のほうはアルバイトをかけもちして、何とか生計を立てていた」という佐藤さんに、ご自身の経験やアドバイスを聞きました。
上場企業の管理職が人生を見直すためセミナーへ
――まずは、これまでのキャリアを教えてください。
佐藤さん(以下、佐藤):大学を卒業後、上場小売企業や上場メーカーの会社員として働きました。小売業では広告や宣伝、販促など幅広く担当し、メーカーでは主にマーケティングに従事して、管理職も経験。その間に結婚して30代後半で出産しました。情報商材にハマったのは40代半ばです。いわゆる「起業塾」のような情報商材でした。
――上場企業で管理職まで務められたのに、情報商材にひっかかったのですね。どんなきっかけでしたか。
佐藤:40歳のときに勤めていたメーカーで大きな組織変更があり、私は主力部門の責任者から外れてしまったんです。このあたりで自分の人生を見直して、もっとやりたいようにやってみようかなと考え、FPの資格を取ったり、心理カウンセラーの講座に通ったりしていて。新しい資格と会社での経験を生かして、自分で何か別の仕事をできないかと漠然と考えているところでした。
――将来について迷っている時期だったのですね。
佐藤:Facebookで“先生”の投稿を読んだのが始まりで、友達でもないのに投稿が流れてきて、心をつかまれてしまったんです。先生は当時20代後半で、ある国家資格をお持ちの女性でした。貧困家庭に生まれて、辛いことがあっても一生懸命勉強して資格を取った。それで起業してビジネスとしてはなかなかうまくいかないときもあったけど、今は同じように悩み起業したい人を指導して、年収1000万円以上稼いでいる。しかも、教え子たちがみんな成功しているという話でした。
私自身、早くに父親を亡くすなど苦労したこともありますが、彼女もすごく苦労して成功していて。こんな人がいるんだ、すごいなってとても感動しました。そのときは、国家資格を持ってビジネスをされている方に、悪い人がいるなんて思いもしなくて…。投稿の最後に無料セミナーの案内があり、会社をやめて自分に何ができるのか、個人で1000万円稼ぐってどういうことか知りたいと思い、行ってみることにしました。
――どんなセミナーでしたか。
佐藤:東京の山手線内の貸会議室に、30~50代くらいの男女10人程度が集まっていました。内容はセルフブランディングで、個人事業主としていかに自分を売っていくかというマーケティングの話でした。私も仕事では何千万円という予算がつくブランディングに携わっていましたが、個人向けはやり方が全然違って、なるほどと目からウロコが落ちて、すごく面白いと思っちゃったんですよ。今、冷静に考えると、そうでもないんですけどね…。ペルソナを書くワークもあり、最後に「起業したいなら個別で相談に乗ります。通常なら数万円だけど、このセミナーに参加した人は無料です」と言われて。次は先生のオフィスに行ってしまったんですよ。
――無料セミナーは、サクラではなくて、本当に皆さんが真剣に参加されていたのでしょうか。
佐藤:いやあ、もしかしたら半分くらいはサクラだったかもしれません。というのも、その後に私もセミナーをする側になったときにサクラを呼んだし、自分がサクラで行くこともあって。へたすれば、私以外は全員サクラだった可能性もありますね。
門下生となり勉強会に参加して、みんなで頑張る
――先生のオフィスではどんなことを話したのでしょうか。
佐藤:ちゃんとしたマンションの一室で、きれいなオフィスでした。当時、私はまだ会社員で、何に興味があり、どんなことをしたいかなど、いろいろお話したと思います。先生は時間や場所に縛られない働き方、お金の自由みたいなことを強調されました。当時はリモートワークが普及していない時代で、会社員の私は毎日出社して、子どもが熱を出したら慌てて預け先を探し、給与以上に稼ぐことはできない状況で。起業すれば好きなことで人の役に立ち、いくらでも稼いで早くリタイアできる可能性があるとか、そういう夢のような話で盛り上がったんですよ。
先生は20代後半でそれを実現していて、さらに先生の“門下生”でうまくいっている人たちの成功事例をアピールされました。
門下生には2つのタイプがあります。1つはカウンセラーや飲食店、ハンドメイドなど自分の事業や特技を持っている人で、先生のコンサルティングを受けて、起業したり自分のビジネスを成長させたりすることを目指すタイプ。
もう1つが、起業したりビジネスを成長させたりしたい人に対してコンサルティングをする「先生」を目指すタイプ。要は先生の分身ですね。
先生に「自分の資格やマーケティング経験を生かして起業するか、もしくは私のようにコンサルティングする先生を目指すか、どちらか選べますよ」と言われ、人に教えることで相手も自分も豊かになるコンサルティングの仕事に魅かれて先生を目指す道を選びました。まずは先生のアシスタントをすることになり、この3カ月後に会社を退職しました。
アシスタントといっても門下生であることには変わりないので、先生から給料をもらうのではなく、先生にコンサルティング費を支払います。3カ月で40万円でしたね。
――安くはない金額ですね。
佐藤:そうですよね。でも当時は高いって思わなかったんですよ。こうして先生にお金を支払って何をしていたかというと、メインは先生のセミナーへの送客でした。自分の友人・知人、異業種交流会やお茶会に行って知り合った人に、「こういう先生がいて、無料ですごく面白いセミナーがあるから来ない?」と連れて行くんですよ。当時は先生を尊敬し憧れて、本当にいいセミナーだと思っていたので、1回に5人とか7人とかたくさん連れて行きました。そして、先生が1対1でクロージングする面談に全て同席して、先生のやり方を見て学び、あとで「あのときになぜ私があれを言ったか分かる?」「あの人はこういう精神状態だった」などと教えてもらうんです。さらにその人が先生のコンサルティングを受ける門下生になったら、その場にも毎回同席しました。
門下生としての私はトップセールスマンで、集客やクロージング率もすごく高かったから、今振り返ればいい気になっていたと思います。週何回も先生のオフィスに行き、先生とよくご飯や飲みに行ってました。先生はセミナーなどで成功事例だけをアピールするのですが、私のことを「会社を辞めてすぐ、こんなに稼いだ人がいる」とよく話していました。
――コンサルティングはどんな内容ですか。
佐藤:自分で資格を生かした仕事やお店をしている人に、ブランディングのやり方を伝えます。肩書を作り、ホームページやブログの設定から書き方まで指導して。なので、実際にテレビの取材が入ったり売上が上がったりするケースもあります。3カ月の契約で1回に40~50万円払い、継続してもらうように働きかけます。
また、個人へのコンサルのほかに、月に1回勉強会があります。私の先生のほかに、先生の立場の人が3人いて。4人の先生とその門下生100人近くが一堂に会する大勉強会が1日かけて行われるんです。有料で必ず出席しなければいけません。勉強会では、実際に成果を上げた人が、こんなことをして、ブログや名刺はこうして…などとブランディングや集客の仕組みを詳細にシェアして、そして「先に与えろ」とか「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」みたいなビジネスの鉄則をみんなで唱和するんです。もう宗教ですよね…。
実は4人の先生の上には、さらに大ボスがいるようなのですが、私は最後まで会うことはありませんでした。
勉強会の仲間は応援し合うので、ブログやSNSはお互い機械的に「いいね」したりシェアしたり。さらに互いにお客さんになって、お茶会があればみんなで行って、商品も買い合う。さらに月2回、自分の先生のオフィスに集まり、みんなで勉強会やコンテンツ作りをして、飲み会も盛んで、一体感を醸成してましたね。
――佐藤さんのまわりで、おかしいと言い出す人はいなかったのでしょうか。
佐藤:思っても言えない雰囲気だったと思います。3カ月終わっても、みんな継続するよねと。なぜなら、続ければみんな成功するという教えだから。コンサルティング費は徐々に値上がりし、払えなくなると子どもの学資保険を解約するなど、家のお金に手をつけてまで続ける人がたくさんいました…。

仕組みがおかしいと気づき、1年かけて脱退
――佐藤さんはしばらくアシスタントを続けていたのですか。
佐藤:私は1年経たないうちにアシスタントを卒業して、先生デビューしました。先生と同じようにセミナーで集客して、クロージングまでできるようになると、ようやく先生にコンサルティング費を払わなくてよくなりました。
そのかわり今度は、自分の売上の半分を先生に上納しなくちゃいけないんです。多いときで私は月5人くらいクロージングしてたのですが、いただいた200万円のうち、100万円を先生に持っていかれる。そんな状況なのに、先生は私のことを「先生デビューして月に何百万も稼いでいる元・門下生」として、あちこちで宣伝していましたね。
私は自分の門下生の仕事すべてに精通しているわけではないので、結局分からないことは先生に聞かなきゃいけないんです。「こういうときはどうしたらいいでしょうか」「こんな質問があったんですけど、どうしましょう」とか。そして、実は先生もその上の先生に聞いていたようです。そういう中ではうまくいく人がいれば、そうでない人もいて、限界が見えてきました。
それでも自分がコンサルティングした門下生にはうまくいってほしいから、門下生が10万円の商品を作ったら、私が自腹で10万円払って使ったり、お茶会があれば人を連れて行ったり。コンサルティング費をもらっても、半分は先生に上納しなきゃだし、収入以上にどんどん出費がかさむんですよ。その頃からちょっと違うなと思い始めました。
――ようやく違和感を持ち始めたのですね。
佐藤:いくつかの要素が重なって、おかしいと気づきました。まずアシスタントを卒業したら先生になり、今度は先生だけの勉強会が月2回あって、それが1回3万円。その段階までくると、いろいろ裏が見えてました。私の先生は比較的地味だったけど、派手な先生のところはみんなでハワイに行ったり豪華客船に乗ったり、出版したり、月に1000万円稼ぐ人もいるようでした。さらに上にいるボスは、上納されたお金で遊んでいることが分かりました。
それに、とにかく集客しなきゃと毎日のように交流会などに出かけると、化粧品や補正下着などのいわゆる「マルチ」に誘われることが増えて。セミナーに行くと、本当のマルチの説明をされて。「一番上の人は六本木のすごいマンションに住んで億を稼いでいる」なんていう話を聞いているうちに、私がいる組織も、マルチとたいして変わらないと気づいちゃったんですよね。
もう一つ、先生が育てたと自慢している人たちが全く顔を見せないのも、なんかおかしいなと。多分、縁を切っているんですよね。
――それでも、お金を稼ぐことはできていたのですか。
佐藤:月100万円くらいで、最高で月300万円。そのうち半分は先生に持っていかれて、勉強会の費用も払わなくちゃいけないし、ミーティング代や貸会議室など、経費もものすごくかかる。まさに自転車操業で、門下生の事業に自腹で投資しつつ、人を集めて一生懸命やるけど、半分以上は上の人に吸い上げられるから、全然おいしくない。手元に残るのは月20~30万円といったところでした。
その反面、友達が減り、先生とのミーティングや全体会議は休めないので、子どもとの時間を確保したくてやっているのに、会社員のときより忙しく土日も休めない。これはおかしいと気づいたときには、私が誘って入った人もいっぱいいたんですよ。
――知人を入れたとなると、やめづらいですね…。
佐藤:そうなんです。その人たちを置いて、私だけ抜けるわけにはいかない。結局、自分の元にいる人をゼロにして抜けるのに1年近くかかりました。皆さんから先払いでお金をもらった分はコンサルティングをして、先生には継続させますと言いつつ、できるだけ継続しないようにしました。セミナーも一応やるけど、全員リリースして。すると最後のほうは収入がなくなるので、家計を回すために車を売って保険を変えて、コンビニなどでアルバイトをしていました。そうやって自分のお客さんをゼロにして、最後は家の事情と嘘をついてやめました。
――今客観的に振り返ってみて、佐藤さんが関わっていたものは何だったのでしょうか。詐欺といっていいのでしょうか。
佐藤:明確な違法行為ではないのでしょうが…私は詐欺だったと思っています。実際、「消費者センターに訴えます」と言い出すトラブルもありました。私たちが抜けるときも、みんなで訴えようという話が出ましたが、それより一刻も早く関わりを断ちたい気持ちが大きくて結局動かないから、表沙汰にならないんでしょうね。
――渦中にいるときは、門下生の役に立っている感覚もあったのでしょうか。
佐藤:ありましたよ。「○○の専門家」のように門下生の肩書を考えて、一緒にホームページやブログを立ち上げると、実際に売上が上がっていましたし、今でも活躍している方もいます。1つのステップとしてアリな人もいたのだと思います。ただ、仕組みとして、やればやるほど先生や上の人が儲かるのがおかしい。先生のプライベートのパートナーに「僕の彼女のためにありがとう」と言われたときは本当にカチンときました(笑)。
勧誘側から見た、詐欺にハマりやすいタイプとは
――たくさん勧誘してきた佐藤さんから見て、こうした詐欺にハマりやすいのはどんな人ですか。
佐藤:私みたいなタイプが一番ハマりやすいですね(笑)。サラリーマンとして経験を積んだ自信があり、フリーランスでもやっていけると思い、好奇心旺盛で、迷わず前に進みがちな人。会社員から見るとフリーランスの世界は華やかに見えて、プロフィール写真もきれいに撮るし、前に出るのが好きな人、承認欲求や自己顕示欲が強い人にとってはすごく楽しいんですよ。
――詐欺を見極めるポイントを教えてください。
佐藤:SNSを見ていると、今も同じようなことをやっている人はいっぱいいます。ポイントは大きく4つあります。
まずメッセージとして、「40代の誰々」「こういうことで悩んでいるあなた」とターゲットを絞り、「今の生活で我慢してませんか」「人生で後悔しないように」などと問いかけて、「そんなことを全部手放して、自分が幸せになり、月々これだけ稼げる」という流れです。「月商7桁」などと桁で金額を表すのも疑ってください。
見極めポイント1:特定のターゲットに対し欲を刺激するメッセージが並ぶ
次に、SNSの本人やフォロワーの肩書にご注目を。何とかの専門家と名乗っている人がいます。例えば、「スキルなし人脈なしでも大丈夫。子どもとの時間を大事にしながらあなたらしく働くためのママ起業支援の専門家」とか。ターゲットが明確で、これに悩んでいる人をこうさせる専門家というのがセオリーなんです。専門家を名乗るのはセルフブランディングとしてはOKですが、フォロワーに「○○の専門家」がたくさんいる場合は、仲間同士で回しているタイプかもしれません。SNSでドレスアップして幸せキラキラな集合写真をアップしている人も怪しいですね。
見極めポイント2:SNSの本人やフォロワーの肩書に注目。「○○の専門家」が多い場合は、仲間同士で回している可能性あり
あと、仕組みとしては「初回無料のセミナー」でビジネス的な話をして納得させた上で、個別面談で悩みではなく「欲」を刺激するんです。自由に働けるとか、ラクして稼げるとか。そういう話は警戒してください。特に、初回無料でその後の料金は行かないとわからないのは危険です。ちゃんとしたビジネスなら、料金を明示していることが多いので。
見極めポイント3:「初回無料で、その後の料金は不明」は危険
そして最後に、気になることはネットで調べましょう。怪しいところはだいたい口コミで悪く書かれていますよ。
見極めポイント4:飛びつかずネットの評判をチェック
――無料セミナーに行ってしまっても、キッパリ断ればいいのでしょうか。
佐藤:ハッキリ断ることができれば大丈夫です。ただ、私の場合、個別に来た人はほぼ100%落としていました。一度断っても頻繁にメールやLINEが届いて、欲を刺激され続けて、結局1年後に入った人もいたので、違うと思ったらメールやLINEは早めにブロックした方がいいですよ。
昔から言われていることですが、とにかくラクしておいしい儲け話はありません。しっかり見極めるようにしてください。
取材/文:佐々木恵美
フリーライター・エディター
福岡市出身。九州大学教育学部を卒業後、ロンドン・東京・福岡にて、女性誌や新聞、Web、国連や行政機関の報告書などの制作に携わる。特にインタビューが好きで、著名人や経営者をはじめ、様々な人たちを取材。

