第163話:ウメばあちゃんの『新作日本昔ばなし』!『しゃべる石塔』
語りかけ
リクちゃん、村の入り口に立っとる石の塔、見たことあるかい?
旅の安全を守るためのもんなんじゃけど――
むかしある村では、それがほんとにしゃべったんじゃよ。
むかし話
むかーしむかしのことじゃった。
村の入口に、誰が建てたのかわからん古い石塔があった。
旅人はそこに手を合わせてから村へ入るのが決まりじゃった。
ある日、旅の商人が村へ向かう途中、
石塔の前で立ち止まった瞬間、
どこからともなく声がした。
「……心を静めよ。災いが来る。」
商人はおそろしくなって引き返した。
すると、その夜、村を大きな地すべりが襲ったんじゃ。
商人は命拾いをした。
それからというもの、石塔はときどき人の心を読んで話すようになった。
悪だくみをして村に入ろうとする者には、
「この先、闇深し」と声をかけ、
素直な心の者には、
「道ひらけ」と微笑むように光った。
ある晩、村の若者・新八が石塔の前で願った。
「もし人の心を読めるなら、誰も傷つけずにすむんだろうか……」
石塔は静かに答えた。
「心を読むより、心を照らせ。」
その言葉を胸に、新八は医者になり、
村の人々を助け続けたという。
そして不思議なことに、
新八が亡くなった年、石塔の声はぴたりと止んだ。
けれど、晴れた朝には今でも、
その塔の影が少しだけ微笑んでいるように見えるそうじゃ。
めでたし、めでたし。
子どもたちへ
リクちゃん、
「人の心を読む」よりも、「心を照らす」ほうが、ずっとむずかしいけど大事たい。
人の痛みを知っても、責めず、受け止めること。
それがほんとうの優しさかもしれんね。
「ぼくも、人の心を照らせる子になる!」
リクちゃんの目が、星みたいに光っとった。
そいぎ、今日はこのへんにしとこうかね。
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