吉行淳之介をめぐる、三人の女性+α
はじめに
吉行淳之介という作家をご存じですか?
国語の教科書には、『童謡』という小説が取り上げられていて、読んだことのある人が多いと思います。
でも、最近は、文庫本のコーナーに行っても、ほとんど置かれていない状態です。ちくま文庫などに少しあれば良い方です。
私が本格的に読み始めたのは、高校2年生の時で、その当時は角川文庫や新潮文庫や集英社文庫などで、何十冊も出ていて、もう夢中になって買って読み漁りました。
吉行淳之介氏は、作家という一面と、対談の名手という一面もあって、昭和時代を生きる色々な人と対談をしていまして、昭和時代を研究している人が最近増えているそうですが、そういう人は是非吉行淳之介氏の対談集などを読んで欲しいです。昭和時代を生きる人の息遣いが感じられると思います。
淳之介氏の本は、出版されている物の9割以上は読んだと思われるのですが、本屋さんで見かけると、手に入れて年に数冊は未だに読み続けています。
今回は、吉行淳之介氏に関係する、三人の女性の本を主に紹介したいとお思います。
1.同居人・女優・宮城まり子さん
◎『淳之介さんのこと』
宮城まり子:著 文藝春秋 文春文庫
(宮城まり子さんといえば、「ねむの木学園」を作った女優さんとして有名です。そして、もう一つは、晩年吉行淳之介氏の同居人であった人でもあります。吉行淳之介氏の小説の中にも女優Mという形で、海外に一緒に出かけたときの話などが出てきます。そのような関係なので、ねむの木学園には色々援助していたようで、文庫本のカバーなどに、ねむの木学園の人の描いた絵を使用していたこともありました。
淳之介氏は、死の直前に、突然入院していた虎の門病院から聖路加国際病院に転院しています。宮城まり子さんの著書によれば、これは、今まで淳之介氏がガンであることを本人に隠していたのですが、虎の門病院の医師が、ポロッと淳之介氏に本当のことを言ってしまったのでした。それに怒った宮城まり子さんが、転院させたということです。)
2.愛人・大塚英子さん
◎『「暗室」のなかで ~吉行淳之介と私が隠れた深い穴~』
大塚英子:著 河出書房新社
(吉行淳之介氏の愛人であった、大塚英子さんが書いた本で、何か火花でも散っているかのような書きっぷりの本です。宮城まり子さんに関しては、『勝手に家に押しかけてきた、行動力のあるM女史』。正妻の人に関しては、『戦後のドサクサにまぎれて入籍した、吉行姓を欲しがる女』などと、もうボロクソに言っています。
そして、自分が淳之介氏に最も愛されていたこと、自分の身体についての自慢、子ができたことがあること、小説を代筆したことがあること、校正などを手伝っていたこと、などが書かれています。)
◎『「暗室」のなかの吉行淳之介』
大塚英子:著 日本文芸社
(『暗室の中で』の続編に当たる作品です。
晩年、入院中の吉行淳之介氏は、頻繁に大塚英子さんに電話連絡をしていたことが書かれています。
死の直前に、病院を移ったことについては、本人の意思では無かったと連絡があったと書いています。著者は、淳之介氏が大好きな街である「銀座」の見える病院に、M女史が勝手に移したのだろうと解釈をしています。)
3.正妻・吉行文枝さん
◎『淳之介の背中』
吉行文枝:著 港の人
(吉行淳之介氏の正妻であった著者が、氏との思い出を書いてある本です。同居人の人や愛人の文章のようにギトギトしているところが無くて、サラッと読めるところが良いです。
若き日の吉行淳之介像が浮かんでくるような本です。)
3.母親・吉行あぐりさん
◎『梅桃(ゆすらうめ)が実るとき』
吉行あぐり:著 文園社
(吉行あぐりさんの自伝的エッセイです。NHKの朝ドラ『あぐり』の原作となった本です。今は、文春文庫?で文庫本になっているはずです。あぐりさんを知る上で良い本です。この本入れるのを忘れていました。追加で入れておきます。)
◎『あぐり95年の奇跡』
吉行あぐり:著 集英社 be文庫
(吉行淳之介氏の母親、吉行あぐりさんの本です。
NHKの朝ドラ『あぐり』のモデルになった人です。戦前から美容師などをしていて、とにかくパワフルな女性です。
夫は、吉行エイスケさんで、ダダイズム思想の小説などを残している人です。少し読みましたが、よく分かりませんでした。
娘には、女優の吉行和子さんがいます。あぐりさんを海外旅行とかによく連れて行って、ヒマラヤとかにも行ったことがあるはずです。
その妹が、詩人で小説家の吉行理恵さん。小説は、何冊か読んだことがあります。文章がものすごく重たかった印象があります。重たい小説が好きな人は、是非読んでみてください。読んでいると、ズウーーーンときます。)
4.友人・村松友規
◎『淳之介流 やわらかい約束』
村松友規:著 河出書房新社 河出文庫
(吉行淳之介氏の年譜をたどりつつ、編集者として、友人として、淳之介氏との「やわらかい約束」について書いてある本です。晩年のあたりの話は、当然ながら希薄です。)
最後に
本当は、『吉行淳之介と三人の女性』とかいうタイトルで、論文のような物が書ければ良いのですが、そのような能力は無く、でもこの三人の女性の話は色々な人に知ってもらいたかったので、本の紹介を始めたついでに書いてみました。
※扉の写真
沼津駅南口の商店街で、閉店したお店の所にあった絵です。何か、もったいないですよね。
