THE「帝国ホテル 京都」2026年春 一泊300万円?!
祇園という町は、どうも不思議なところである。
古いものを大事にしているようで、実のところは新しいものも嫌いではない。
いや、嫌いではないどころか、うまく着物を着せ替えて、いかにも昔からそこにあった顔をさせるのが、たいそう上手なのである。
その祇園に、帝国ホテルが宿を開くらしい。
名を「帝国ホテル 京都」と言う。
2026年の春に開業するそうだ。
「春」というのがいいじゃないか。
春は何を始めるにも都合のよい季節で、人の懐も、理屈も、いくらか緩む。
建つ場所は弥栄会館の跡地である。かつては芝居や映画や踊りなどが行われ、人が集まり、拍手が起こり、帰り道にあれこれ言い合った建物であった。
今ではすっかり年を取り、黙り込んでいたが、ここへ来てまた働かされることになったわけだ。建物も楽ではない。
もっとも、壊されるよりはましである。
帝国ホテルは、この会館を保存して使うという。
壊して新しくした方が、よほど話は早かったろうに、わざわざ手間をかけて、銅板屋根を元通りにし、瓦の「歌」という刻印まで復活させる。
文化というものは、どうやら面倒なほどありがたいらしい。
タモさんも言ってたな、「面倒だからいいんじゃないか」ってね。
内装は榊田倫之という建築家だそうで、伝統と現代を結びつけるのが得意だという。なるほど、古いものと新しいものは、放っておくと喧嘩を始めるからな。間に立つ人物は重要だ。
客室は五十五ある。保存された部屋もあれば、改められた部屋、新しく増えた北棟もある。どこに泊まっても、それぞれ違う景色が見えるというが、同じ金を払っても気分が違うというのは、少々面白い話である。
中でも「インペリアルスイート」という部屋は別格で、広さは193㎡、値段は一泊300万円?!だそうだ。見間違えたか?
もはや寝るための場所ではない。
試されるのは、財布よりも度胸である。
しかも専属の世話係が付き、鐘塔での特別な体験まで用意されているという。鐘を鳴らすのか、鳴らされるのかは分からぬが、ともかく滅多にない経験であることは間違いない。
館内には洋食も和食もあり、酒もあり、湯もあり、泳ぐ水まであるらしい。人はここへ来て、身体を休めるのだか、気を使うのだか、少し判然としない。
時代は流れ文化も変化したが、結局のところ、人は昔と同じように、良い場所に泊まり、良い眺めを見て、良い話をしたがるだけである。ただ、その値段と理由づけが、少し巧妙になっただけの話だ。
さて、この弥栄会館は、帝国ホテルという立派な名前を着せられて、果たして満足するだろうか。
人間と同じで、建物にも、分相応というものがあるかもしれない。
もっとも、祇園である。
何が起きても、さも当然という顔をして、今日も静かに佇んでいるに違いない。
設計施工:大林組
