「ムダな努力」を漬物石に例えた娘と、不器用な私の対話(999字)
「その漬物石で漬けた漬物は、絶対においしい」
とっさに私から出てきたのは、そんな しょうもない言葉でした。
ある日の夕食後。
リビングでくつろいでいたら、高校生の娘が こんなことを聞いてきました。
「諦めなければ夢は叶う、とかいうけど、全員叶うわけがなくない?ムダな努力は無い、とかも言うけどさ」
何だか少し、ご機嫌が悪いようです。
彼女なりに人生経験を積む中で、幼少期から聞いてきた「整えられた励まし」に、現実とのズレを 感じ始めているのかもしれません。
あまり変なことは言えない と思い、立派な誰かの言葉を借りて、私は答えました。
「努力をすれば 必ず成功できるわけじゃない。でも、成功している人は 必ず努力しているよ」
すると娘は、「じゃあ、やっぱり 努力と才能が必要ってことだよね。才能がない人が努力しても、ムダってこと?」
私はまた、別の言葉を借ります。
「報われない努力はあるかもね。でも、ムダな努力は、ないんだよ」
すると娘は、こう切り返してきました。
「それって、目標は達成できなくても、別のことに使えるからOKって意味だよね。頑張って作った彫刻が、漬物石になるようなものじゃない?それって、コスパが悪すぎる」
漬物石とは、わが娘ながら 秀逸な例えです。
思わず笑いそうになるのをこらえて、私は答えました。
「漬物石みたいな 形のあるものじゃなくて、努力によって、自分自身が成長できるんだよ。成長できれば、人生そのものが 豊かになるんだよ」
娘は天井を見上げて、 何かを考えているようでした。

ここで畳みかけよう、と思った私。
「あと、本気で努力したものは、結果が伴わなくても、たとえ漬物石であってもね。後々、自分で勝手に意味づけして、納得できるようになる。だから、安心して取り組めばいいんだよ」
すると、上を向いていた娘が、少し首を傾げ始めました。
マズい。「自分で勝手に」は余計だった。
自己満足 って言われるやつだ。
とっさに私から出てきたのは、こんな言葉でした。
「それに、その漬物石で漬けた漬物は、絶対においしいぞ」
娘は間髪入れず、「コスパ悪すぎ!」と笑って
部屋に戻っていきました。
あれでよかったのかな。
後半は完全に「漬物石」に 引っ張られた答えになってしまいました。
娘が納得できたかは 分かりません。
けれど、最後は笑っていたから、まあいいか。
そんなことを思いながら、 彼女が残していった「問い」の余韻に浸っていました。

