第23話 「山笠が繋いでくれたご縁」
シュエットにヒロシが来るようになり、迎えた初めての山笠シーズン。
ある日、ヒロシが流の関係者の皆さんを連れて来てくれた。
流委員や取締役など、山笠を支える方々ばかり。
山笠は、ただのお祭りではない。
会社のように雇われて運営しているわけではなく、それぞれが仕事を持ちながら、地域のために力を合わせている。
だからこそ、上下のつながりも横のつながりも大切。
信頼関係や人徳がなければ、役を任されることはない。
神事だからこそ、礼儀や秩序を何より重んじる世界だった。
流のトップともなれば、その重圧は計り知れない。
7月1日から始まる博多祇園山笠。
13日まで準備を重ね、14日は体を休め、15日の追い山を迎える。
そんな大切な13日の夜。
最後の打ち合わせを終えた皆さんが、14人でシュエットへ来てくれた。
店に入るなり、
「今日だけは、ご無礼します。」
そう言って、長法被姿の男衆が次々に入って来た。
実はシュエットは天神。
山笠の長法被姿で歩けるのは博多区だけなので、普段ヒロシたちは、わざわざTシャツと短パンに着替えて天神まで飲みに来ていた。
それが山笠の礼儀。
だから、この日は特別だった。
バイトのリカちゃんは、
静岡から一人で福岡へ転勤してきた女の子。
家族も親戚もいない博多で頑張る姿を見ていた私は、どこか娘のように思っていた。
ヒロシたちも、そんなリカちゃんを本当によく可愛がってくれた。
帰る時間になると、
「明日はしっかり体を休めて、15日に備えよう。」
そう言いながら、14人の男衆が店の中に一列に並んだ。
そして、力強く歌い始めた。
博多祝い唄。
博多では、神事や結婚式、お祝いの席で歌われる祝い唄。
「シュエットの繁栄を願って。」
そんな思いを込めて歌ってくださった。

祝い唄が終わると、最後は博多手一本。
博多では、お祝いの席や神事の締めくくりに欠かせない手締めです。
関東の一本締めとは少し違い、手一本の後に拍手はしません。
「この場が円満に納まりました」「異議ありません」という意味が込められ、皆の心を一つにして締めくくります。
店内に響いた祝い唄と博多手一本。
その場にいた全員の気持ちが一つになったような、温かくも厳かな空気に包まれました。
歌い終わる頃には、リカちゃんは感激して涙をポロポロ流していた。
故郷を離れ、博多で頑張っていた彼女には、その歌声が何より温かく感じられたのだと思う。
私も、あの日の光景は今でも忘れられない。
山笠がつないでくれたご縁。
そして、人を大切にする博多の心を、改めて感じた夜だった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、いよいよ追い山の日のお話です。

