曼珠沙華は恋をする
曼珠沙華は、秋の風に揺れながら、人知れず恋をしていた。
その相手は、毎朝この堤を走る青年。
彼は花に目を向けることなく、ただ前を見据えて駆け抜けていく。けれど曼珠沙華は、その足音のリズムや汗に光る横顔を覚えていた。
やがて青年が、足を止める日が来た。
疲れたのか、花の前に腰を下ろし、深く息をついた。彼の吐息が曼珠沙華を撫で、花は赤く燃えるように心を震わせた。
――見てほしい。想いを告げられないまま、ただこの場所で咲き続けている私を。
しかし曼珠沙華は知っている。彼の視線はいつか別の誰かに向かうだろう、と。だからこそ、ほんの一瞬の邂逅を、永遠の恋として胸に刻む。
燃えるように咲き、散りゆくその運命こそ、曼珠沙華の恋のかたちだった。
たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに初参加させていただきます。
とても楽しい企画ですね。
