ぐっときた詩
犬をくれる
犬をくれてやった
六年も飼った愛犬を
気が荒くて噛みつくので
近所から抗議が多いので
彼は小さく黒い自動車に乗り
千葉の農家へ行った
そこで月夜に吼えて
河魚の盗まれるのを衞るのだ
さみしいものか
いずれおれも近く
この愛する大地と別れるのだ
こころよい風と光と
やさしい眼ざしと声々と
いつまでも柔らかい蝋のような心に
びしりと鍛練の鞭をくれてやる
そのひびきの中に
犬も行ってしまった
西条八十
犬をくれる
犬をくれてやった
六年も飼った愛犬を
気が荒くて噛みつくので
近所から抗議が多いので
彼は小さく黒い自動車に乗り
千葉の農家へ行った
そこで月夜に吼えて
河魚の盗まれるのを衞るのだ
さみしいものか
いずれおれも近く
この愛する大地と別れるのだ
こころよい風と光と
やさしい眼ざしと声々と
いつまでも柔らかい蝋のような心に
びしりと鍛練の鞭をくれてやる
そのひびきの中に
犬も行ってしまった
西条八十