『バリ山行』純文学でありながら面白い!
芥川賞受賞作の『バリ山行』(松永K三蔵 著)が面白かった。
今年読んだ中で一番になるかもしれない。
芥川賞の受賞作はこれまでも読んできたけれど、これほど「面白い!」と感じたのは本作がはじめてだった。
面白みを感じることはあっても、夢中になれるほどの作品にはなかなか出会えなかった。
だから個人的には、直木賞作品の方が読み応えがあった。
ただ、エンタメに振り切りすぎた作品にも少し苦手な部分があった。
芥川賞と直木賞のちょうど中間のような作品を求めていた。
そんな中で出会ったこの作品は、まさに自分が読みたかったバランスの小説だった。
文学的な堅さを持ちながらも、読みやすくて、面白い。エンタメ的な盛り上がりもあり、物語としても引き込まれる。直木賞や本屋大賞の候補になってもおかしくない作品だと思う。
個人的に新鮮だったのは、全体に漂う「陽」の空気。読んでいると、なぜか前向きな気持ちになった。それは文体の影響なのか、作品のトーンによるものなのかは分からないが、純文学でこういう感覚を味わったのは初めてだった。
この作品を読んで、純文学に対するイメージが大きく変わった。今後も著者の作品を読みたいと思う。
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本書を読んで、「AIによる文学」について考えさせられた。
本作のような小説をもっと読みたいと思うが、著者は人間である。すぐに次の作品を読むことはできない。
そんなとき、もしAIが同じような作風の物語を書いてくれるなら、それでも読んでみたい、と思ってしまった。たとえ、それがAIの手によるものだったとしても。
とはいえ、本作のように、経験や体験に根ざした作品、いわゆる純文学的な作品は、今のところAIにはまだむずかしい気がする。
そんな想像をして勝手にジレンマになった。結局のところ、著者の次の作品を待とうという結論に至った。
でも改めて考えてみると、芥川賞の作品をはじめ、純文学の中にも、面白いと感じられる小説はあるはず。そう思い直して、これから少しずつ探していこうと決めた。
一読ありがとうございます。
