【Q21.もうすぐ廃止される松山小倉フェリー】2.「フェリーくるしま」で松山から小倉まで
(前回の記事はこちらです)
松山観光港より、フェリーくるしまに乗船
松山観光港フェリーターミナルは、私が着いた19時過ぎの時点で、全ての飲食店が閉まっていた。これから乗ろうとしている松山から小倉までの夜行フェリー「フェリーくるしま」の出港予定時刻は21時55分である。旅行時に自分は携帯ゲーム機やタブレットの類を持ち歩かない。紙の本は持参したりしなかったりだが、今回の旅では持っていない。やることが何もなく手持無沙汰である。スマホとバッテリーをひたすら充電して、ターミナルをブラブラする。

乗船券の発売開始時刻は、20時30分だ。並ぶ。事前に予約はしているのかと、窓口の係員に聞かれたので「いいえ」と答えると、乗船手続きの書類を書かされた。最も安い「二等船室」を買う。小倉までは7時間程度なので、これで充分だ。無事購入。

21時、乗船開始時刻。左右がガラス張りとなった長い通路の先に、ボーディングブリッジが接続されている。乗船。荷物を四階の二等船室の、自分のスペースに置く。二等船室の大部屋が上層階にあるのは、珍しいなと思う。今まで乗ったフェリーでは、最も下の方であった。この船の二等船室は本当の大部屋で、本当の雑魚寝だ。客の数はさほど多くない。


甲板に出て港の様子を眺める。三月の夜風がまだ肌寒い。定刻通り出港。夜景をバックに、タカラ缶チューハイを掲げ撮影を試みる。自撮り棒のような道具も特に無く、自分一人でやっているので、中々難しい。一人で乾杯。甲板には、自分と全く同じことを、缶ビールでやっている男性が居て、限りなく親近感を覚える。

南の方の夜空を、航空機のものらしき照明が飛んでいく。松山空港を離発着する旅客機だろう。
出港からしばらくの間は、この船は南に向かって進路を取る。目的地は北九州の小倉で、松山から見れば北西の位置にあるのだが、松山港の正面には島があり、南から回り込むからだ。夜の海を進んではいるが、完全な闇ではない。どの方角にも必ず光が存在する。そのあるものは、陸地の灯台や市街地のものであり、またあるものは、すれ違う他の船のものである。そのことが船乗りに与える安心感は、どのようなものであったであろうか。近代動力以前の時代には、殊に大きいものではなかったかと想像される。

フェリーくるしま船内にて
船内のロビーには、この船「フェリーくるしま」のスタンプが置かれている。押す。インクがやけに薄い。また売店には「船の御朱印」が売られているので、この船のものを買う。ペラ紙一枚のものだが、船員さんが丁寧に包装してくれた。日本全国のフェリーの御朱印を集めた冊子体のものは、買う予算が無かった。スタンプのインクの薄さについて報告しておいた。
窓際のラウンジスペースで遅い夕食。少し晩酌をし、今治駅で買った「鯛めし」を開封する。賞味期限ギリギリだ。今夜中に食べなければ。


隣席では、ビジネスマンらしき男性二人組が、やはり呑みながら明日の仕事の打ち合わせをしている。話が終わり、一人は自室に引き上げたが、残されたもう一人は暫くの間独酌を続けていた。
この、松山―小倉航路の夜行フェリーは、2025年6月末で運航を終了する。加えて、私が今乗船している、3月19日夜の前日まで、メンテナンスのため運休中だった。今回乗船できたのは、様々なタイミングが偶然ピッタリとハマったからなのであった。
明日の朝は早い。自分も今日は早目に就寝する。


関門海峡を抜け、夜明け前の小倉に上陸
起床。甲板に出る。スマホの位置情報によると、北九州近海を航行している。小倉の浅野港を目指し、関門海峡を進む。左右両側に、灯りに照らされた陸影が見える。いずれも近い。

海峡は大きくカーブしている。海峡に入る時に、船は南に進行方向を変え、中間部のカーブを曲がる時に、再び北に向きを変える。帆船の時代にこの海を航行するのは、潮流や風向に関する豊富な知識と、格別な航行技術と、細心の注意が必要とされたであろうなと思う。
関門橋をくぐる。この瞬間は見逃せない。車のライトが橋上を駆けていく。

そして勿論、海底を通る鉄道トンネル達とも、この船は立体交差している。
九州側の陸地には、大規模な港湾施設が連なり、殊に明るい。イルミネーションだ。港が近くなったことを感じる。海上にも航路標識が緑色に輝き、視界を流れていく。
船内アナウンスが、下船時の注意事項を伝える。接岸した後、乗客はすぐに下船することも出来るし、始発バスの時間まで船内で待機することも出来る。ただ、早く降りたい者は、着岸後すぐに下船しなければならず、その後は下船口は一度閉じられてしまうということだった。自分の好きなタイミングで、バラバラに船を降りることは、出来ない。

5時10分頃、無事に浅野港に着岸。徒歩客のほとんどは船内待機を選んだようだが、自分はすぐに降りることを選ぶ。船内の階段を下り、ボーディングブリッジを通り、5時12分。九州上陸。まだ暗い。夜間照明に照らされたここ小倉港の景観や、船体をゆっくりと眺める時間は、残念ながら無い。まだ眠っているフェリーターミナルを足早に通り過ぎ、徒歩で小倉駅を目指す。

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