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「抱っこすると癖になる」は本当? #51

こんばんは。

今日も静かに始めさせていただきます。

先日、ふくるんが小児科外来で働いている時、1ヶ月健診で受診した赤ちゃんのお母さんから次のような質問を受けました。

「抱っこであやすのはしない方がいいですか?抱っこばかりしているとクセになると母から言われちゃって。。。」

子育てについてはいろいろな考え方があり、迷うこともありますよね。

抱っこについても、

a:できる限り抱っこしてあげたい
b:抱っこじゃないと泣き止まないという状態は避けたい
c:抱っこは甘えにつながるからしすぎない方がいい

など、意見が分かれるところだと思います。

今回は、抱っこがクセになるのかを根拠を踏まえてお伝えします。

それではスタートです。


◼️抱っこはクセになるの?

「抱っこばかりしているとクセになるよ」

子育て中、言われた経験がある方もいるのではないでしょうか。

赤ちゃんが泣くたびに抱っこしていると、

「このままだと自分で寝られなくなるのではないか」
「甘えん坊になるのではないか」
「抱っこの時間がないときはどうしよう、困るな」

などと心配になることもあると思います。

しかし、現在の小児医学や発達心理学の研究では、「抱っこによって赤ちゃんがわがままになる」「抱きグセがつく」という考え方を支持する科学的根拠は見つかっていません。

◼️そもそも「抱きグセ」とは何か?

抱きグセとは、「泣いたらすぐ抱っこすることで、抱っこを要求して泣くようになる」という『考え方』です。

「抱っこを要求して泣く」とあります。

しかし、生まれたばかりの赤ちゃんには大人のような「駆け引き」をする能力はありません。

新生児の脳はまだ発達途中であり「泣けば抱っこしてもらえるから泣こう」と計画的に考えることはできません。

赤ちゃんにとって泣くことは、

● お腹が空いた
● 眠い
● 不快感がある
● 不安を感じる

といった状態を伝える唯一のコミュニケーション手段なのです。

不快や不安な状況を伝えるために泣く、ただそれだけなのです。

ですから「そもそも抱きグセという概念はない」と考えていいのです。

◼️抱っこで泣き止むのはなぜ?

2013年に発表された日本の研究では、赤ちゃんを抱いて歩くと赤ちゃんの心拍数が低下し、泣きが落ち着くことが示されました。

これは哺乳類に共通する「輸送反応(Transport Response)」と呼ばれる現象です。

母親に抱かれて移動すると、

● 心拍数が下がる
● 身体の動きが落ち着く
● 泣きが減る

という反応が起こります。 

つまり、抱っこで泣き止むのは甘やかしているからではなく、生物学的に備わった反応なのです。

『不快』の原因を取り除けば赤ちゃんは『快』の感情になり、リラックスできるのです。

なお、不快の原因を取り除く手段は抱っこの他にもあります。

【赤ちゃんの不快を取り除く手段】
● 抱っこ
● おむつ交換
● 授乳
● 温度調節
など

上記のことは特別なことではないですよね?

ですから、抱っこも特別に考えずに、対応できる時にしてあげればいいことがわかりますよね。

◼️抱っこは情緒の発達にも関係する

赤ちゃんは抱っこされることで、安心感を得ています。

皮膚と皮膚が触れ合うスキンシップは、愛着形成(アタッチメント)を促進することが知られています。

愛着とは「困ったときに助けてくれる人がいる」という信頼感です。

発達心理学者のJohn Bowlbyが提唱した愛着理論では、養育者との安定した関係が子どもの情緒発達の基盤になるとされています。

「乳幼児が健全に発達するためには、母親(または母親的な養育者)との温かく親密で継続的な関係が不可欠である」

Bowlby, J. (1988). A secure base: Parent–child attachment and healthy human development. New York: Basic Books.


また、抱っこやスキンシップによって「オキシトシン」と呼ばれるホルモンの分泌が促されることもわかっています。

オキシトシンは、

● 安心感を高める
● ストレスを軽減する
● 親子の絆を強める

働きがあると考えられています。

参考までに、ふれあいと生活におけるオキシトシンの働きに関する研究を発表したものがこちらです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/35/3/35_127/_pdf


◼️抱っこが多いと自立できなくなる?

さて、前述した、「抱っこばかりしていると自分で寝られなくなるのではないか、甘えん坊になってしまうのではないか」という懸念は『正しい懸念』なのでしょうか?

実は逆の結果が報告されています。 

安定した愛着を形成した子どもは、

● 自己肯定感が高い
● 情緒が安定しやすい
● 他者との関係を築きやすい

ことが知られています。

「たくさん抱っこされた子ほど親から離れられなくなる」のではなく、「十分に安心感を得た子ほど自信を持って外の世界へ挑戦できる」という考え方です。

これは愛着研究において長年支持されている知見の一つです。

◼️それでも抱っこが大変なときは?

ここで大切なのは、
「泣いたら必ず抱っこしなければならない」という意味ではないことです。

育児をしているのは人間です。

疲れている日もありますし、家事や上の子の対応が必要なこともあります。

抱っこできない時間があったからといって、親子関係が壊れることはありません。

大切なのは、赤ちゃんが「必要なときに応えてもらえる」という経験を積み重ねることです。

100点満点の対応を目指す必要はありません。

☑️専門家のアドバイスは?

スキンシップが赤ちゃんやママに与える影響について研究をしている人間科学博士の山口創氏(桜美林大学リベラルアーツ学群 教授 臨床発達心理士)の著書には以下のように書かれています。

スキンシップは長くすればいいわけではありません。オキシトシンの分泌の仕方からみても、10分程度で十分に高まることがわかっています。ですから、短時間のスキンシップを何回も繰り返したほうがいいんです。

たとえば、1時間のうち10分程度でいいので「ちょい抱き」と、集中的にコミュニケーションをする、なんていうのもアリです!

『幸せになる脳は抱っこで育つ』より

◼️まとめ:抱っこをたくさんしましょう!

「抱っこするとクセになる」という考え方は、現在の科学的知見では支持されていません。

赤ちゃんは抱っこを求めて泣いているのではなく、不快や不安を伝えてくれています。

そして抱っこは、

● 心拍数を落ち着かせる
● ストレスを軽減する
● 愛着形成を促す
● 情緒発達を支える

といった重要な役割を持っています。

もし赤ちゃんが抱っこを求めているなら、それは甘えではありません。

「あなたを信頼している」というサインかもしれません。

今しかない抱っこの時間。

抱っこの時間は赤ちゃんにとっては一生の土台になる大切な時間なのです。

◼️最後に

あなたが抱えている“小さな不安”が、
今日、ほんの少しでも軽くなりますように。

いつでもここに戻ってきてください。

どこかの森で、また会いましょう。

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