母から届いた、読めないLINE
脳出血で倒れ、高次脳機能障害となった母と、半年間歩んできたプロジェクトがある。
「みんなで一緒に乗り越えるリハビリ」
毎日、家族のLINEグループに動画や写真、コメントを送り合い、励まし合った。その小さな積み重ねが、何度もわたしたちを支えてくれた。
ある日、母からLINEが届いた。
きょいうやうがはんまえめがさめろゆめをみた
視んなっでおんせんいつまてるやゆめ
おはよう
そたとはかなしいいろだなかのいろをみると
会社勤めのころのおとうしんののおうしろすがたをあもいだす
べんとうをかついだせなかににあい
いってらっしゃをれんこするさ
それからわたしのさびしくしんぱいないちにとちがはじまるさ
そんなひひさえもつどってきてほしい
ゆうがたのそとのいろをみながら
いちにちをあおわる
はゆくここからにぬけだしたい
ここはかんごくだ
じばんんでえらんだからがまんしよう
口になとったなごめん
咲くじゃしまょしてくれ
乱れた文字の羅列。
読もうとしても意味が入ってこない。
携帯を閉じた。
辛さ、悲しさ、苛立ち。受け入れられなかった。
だが頭をよぎった。
「みんなで一緒に乗り越えるリハビリ」
そう決めて始めたのではなかったか。
“ちゃんと読もう”
深呼吸し、再び画面を開いた。時間をかけ、ひとつずつ読み取っていく。
今日4時半前に目が覚めて夢を見た。
みんなで温泉に行っている夢。おはよう。
外は悲しい色だ。その色を見ると、会社勤めの頃の
お父さんの背中を思い出す。
弁当を担いだ背中に「いってらっしゃい」を連呼する。
それから、わたしの寂しく心配な一日が始まる。
そんな日さえも戻ってきてほしい。
夕方の外の色を観ながら一日が終わっていく。
ここから逃げ出したい。ここは監獄だ。
自分で選んだから我慢しよう。
愚痴になってたな、ごめん。削除してくれ。
崩れた言葉の奥に、母の世界が立ち上がってきた。
朝の夢、父の背中、孤独な日々、苦しみ、そして反省。
ただの文字ではなく、打ち損じや歪みからも、母の心が伝わってくる。
悲しみと愛情と祈りが入り交じり、私の胸を震わせた。
助けたいと思っていた母が、むしろ私に教えてくれていたのかもしれない。
文字の奥を感じ合う
正直、納得のいく言葉に出会っていない。
でも、確かにここに、
感動を超え、輝く道を感じた。
母さん、ありがとう。
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