住み替えで旧自宅、売る?貸す?知らないと数百万円損する2つの分岐点
1. はじめに
こんにちは、ふじまるです。
個別相談の場で本当によく聞かれるのが、
「子どもが大きくなったから、もう少し広い家に住み替えたい。でも、今の家は売るのと貸すの、どっちが得なんでしょうか?」
というご相談です。
最近は家賃が右肩上がりに上昇していますよね。「売ってしまうより、賃貸に出した方が将来の収入になるんじゃないか」と考える方が、本当に増えました。
でも、ちょっと待ってください。
実は、住み替えのときに「売る」と「貸す」の判断を間違えると、知らないうちに数百万円の税金の差が出てしまうケースがあるんです。
しかも、その分岐点は「住まなくなってから何年経ったか」「所有期間が何年か」という、たった2つのポイントで決まります。
今日は、わたしが年間350件以上の個別相談で実際に出会った事例をもとに、住み替えで後悔しないための判断軸を、ていねいに解説していきます。
2. 最新トレンド:家賃上昇と令和8年度改正
① 家賃の上昇圧力
国土交通省の住宅市場動向や民間調査によると、首都圏の賃貸住宅の家賃はここ数年で着実に上昇しています。とくにファミリー向けマンションは、立地によっては数年前と比べて1〜2割上がっているエリアもあります。
これだけ家賃が上がっていると、「売却して数千万円を一括で受け取るより、毎月家賃が入ってくる賃貸の方がトータルで得じゃないか」と感じるのも、無理はないですよね。
② 令和8年度税制改正で「買換え特例」が2年延長
そしてもう一つ、押さえておきたい最新トピックがあります。
令和8年度税制改正法が2026年(令和8年)3月31日に成立・公布され、原則として2026年4月1日から施行されています。この改正で、「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用期限が2年延長されました。
これにより、現行法では令和9年(2027年)12月31日まで適用が可能となっています。
つまり、いま住み替えを検討している方にとっては、3つの大きな選択肢が並んでいる状態です。
3,000万円の特別控除を使って一気に課税をなくす
軽減税率の特例で長期譲渡所得の税率を下げる
買換え特例で課税を将来に繰り延べる
しかも、これらは「賃貸に出してしまうと使えなくなる」「期限を過ぎると使えなくなる」という制限つき。
ここから先は、相談の現場で実際にどんなケースで損が出ているのか、具体的にお話しします。
3. 現場の実感
ケース①「知らずに3か月経っていたら適用不可」
先日のご相談で、本当にショックだったケースがあります。
50代のご夫婦からのご相談でした。お子さんが独立されたタイミングで、駅近のコンパクトなマンションに住み替えたい、と。
ご相談に来られたとき、すでに旧自宅は賃貸に出して2年半が経過していました。家賃収入はそこそこ入っていて、「とりあえず賃貸に出しておいて、いつか売ろう」と思っていた、とおっしゃっていました。
ここで、わたしがハッと気づいたのが、**「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」**という3,000万円控除の期限です。
ご夫婦が住まなくなったのは2023年8月。つまり、3年経過する日は2026年8月。その日の属する年の12月31日、2026年12月31日が、3,000万円控除を使える最後の日だったんです。
「あと半年あるから大丈夫ですよ」とお伝えしたとき、奥様が「えっ、それを過ぎたら、3,000万円控除って使えなくなるんですか?」と顔色を変えられました。
知らずに2027年に売っていたら、3,000万円×約20%=約600万円の税金が、まるまるかかっていたかもしれない計算です。
ケース②「賃貸に出したら、特例の世界が全部変わる」
とある相談会で多いのが、「とりあえず賃貸に出して様子を見ます」というパターンです。
気持ちはとてもよくわかります。家賃が上がっている時代ですし、すぐ売らずに「保険」として持っておきたい気持ちは自然です。
でも、賃貸に出した瞬間、税務上は家屋の用途が「居住用」から「貸付用」へと変わることになります。
そして売却するときには、
3,000万円の特別控除は、住まなくなって3年経過する日の属する年の12月31日まで
軽減税率の特例も同様に3年要件あり
買換え特例も「居住用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡」が要件
と、すべての特例に「3年12月31日ルール」がかかってきます。
しかも、「居住用家屋の敷地の譲渡」については、「家屋を取り壊した後譲渡に関する契約を締結した日まで、貸付けその他の用に供していない当該土地等の譲渡であること」と、貸付けに関する細かい要件まで定められています。
「ちょっと貸してから売ろう」という判断が、3年を超えてしまうと致命傷になるケースが、本当に多いんです。
ケース③「貸している間に、減価償却で取得費が削られていた」
もう一つ、相談現場でよく出てくるのが、**「貸している間に取得費が減っていた」**というお話です。
賃貸に出すと、建物部分には減価償却が発生します。これは不動産所得の計算で必要経費に入れていく分、将来売却したときの「取得費」が減っていきます。
つまり、家賃収入を得ている間に、
「家賃収入で得した分」 vs 「将来の譲渡所得が増える分」
の両方を一緒に考えないと、トータルでは損していた、ということが起きるんです。
ある相談会では、「8年間貸してそろそろ売ろうかと思って……」と来られた方がいらっしゃいました。家賃収入で2,000万円ほど稼いだあと、いざ売却の試算をしたら、
3,000万円控除はとっくに期限切れ
取得費は減価償却で500万円以上削られていた
売却益にまるまる長期譲渡所得(20.315%)
という三重苦で、「これなら売っておけばよかった」と肩を落とされていたのが忘れられません。
4. 読者へのポイント:判断の2つの分岐点
ここまでの話を整理すると、住み替えで「売る/貸す」の判断は、結局この2つで決まります。
分岐点①:「住まなくなってから3年経過する日の属する年の12月31日」を超えるか
これが売却特例を使えるかどうかの最大の分かれ道です。
3年目の12月31日以内に売る予定があるなら、賃貸に出しても影響は限定的(ただし期間中の家賃で減価償却は発生)
3年目の12月31日を超えて貸し続ける可能性が少しでもあるなら、特例適用は原則あきらめる前提で判断するのが安全
分岐点②:所有期間が「10年超」かどうか
10年超の所有期間がある場合、
軽減税率の特例:6,000万円以下の部分は所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21%=14.21%
買換え特例:課税を将来に繰り延べ可能(売却価額1億円以下、居住期間10年以上などの要件あり)
と、強力な特例が使えます。
逆に、所有期間が10年以下の場合は、3,000万円控除が中心的な武器になります。
実務的な判断フロー
わたしが相談の現場で実際にお伝えしているのは、こんな順序です。
「3年目の12月31日まで」のカウントダウンを最優先で確認する
売る場合は、3,000万円控除+軽減税率(10年超なら)が基本セット
「もう一度マイホームを買う前提」なら、買換え特例も比較検討
「絶対に売る気がない」「相続で次世代に渡したい」「家賃収入で老後を支えたい」なら、賃貸の方が合理的になることもある(ただし税務シミュレーション必須)
「どっちが得か」は、ご家族の人生設計と、この2つの分岐点をかけ合わせて決まります。一律の正解はありません。
5. まとめ
住み替えで旧自宅を「売る」か「貸す」かは、
住まなくなってから3年経過する日の属する年の12月31日までというタイムリミット
所有期間10年超かどうかの分岐
この2つで、大きく結論が変わります。
家賃が上がっている時代だからこそ、「とりあえず貸す」は税務的にはリスクが高い判断になり得ます。せっかくの3,000万円控除や軽減税率を、知らないうちに失ってしまわないようにしてくださいね。
迷ったら、必ず売却の前に、信頼できる税理士に相談することをおすすめします。「とりあえず賃貸に出す」前に試算するのが、いちばんお得ですよ🌿
#住み替え #譲渡所得税 #3000万円控除 #買換え特例 #資産税
生成日:2026年5月10日 by ふじまる(資産税につよい税理士)
