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離婚で家を渡したら、800万円の税金?知らないと損する財産分与の3つの落とし穴

1. はじめに

こんにちは。資産税につよい税理士、ふじまるです。

「離婚するとき、お金や不動産を相手に渡しても、税金はかからないですよね?」 相談の現場で、本当によくいただく質問のひとつです。

たしかに、離婚にともなう財産分与には、原則として贈与税はかかりません。けれども、「税金がかからない」と思って手続きを進めた結果、あとから数百万円の譲渡所得税の通知が届いてびっくりした…という方を、私は何件も見てきました。

特に、不動産を渡す財産分与には、見落としがちな落とし穴がいくつもあります。今日は、私が相談の現場でよくお会いする「3つの落とし穴」を整理してみますね。

2. 最新トレンド:2026年4月から、財産分与のルールが大きく変わりました

まず最新情報から。

2026年4月1日に施行された改正民法(民法第768条)により、財産分与の請求期限がこれまでの「2年」から「5年」に延長されました。

これは、離婚直後はバタバタしていて財産の話を冷静に整理できなかった方にとって、とても大きな改正です。たとえば、2026年4月1日以降に離婚された方は、最大5年間、財産分与の請求ができるようになりました。

ただし、注意していただきたいのは、2026年3月31日以前に離婚されている場合は、従来どおり「2年」の期限が適用される、という点です。経過措置の境目にあたる方は、お早めに整理されることをおすすめします。

また、改正法では「夫婦の協力により取得・維持した財産は、寄与の程度が明らかでないときは相等しい(いわゆる2分の1ルール)」と明文化されました。実務でずっと使われてきたルールが、ようやく条文として明確になった形です。

期間が延びたことで、税務的にも「いつ財産分与をするか」を選べるケースが増えました。タイミングによって税金が大きく変わってくる、という現場感がますます大事になっています。

3. 現場の実感:相談会で見てきた、3つの落とし穴

落とし穴①:「もらう側」じゃなくて、「渡す側」に税金がかかる

先日のご相談で、こんな方がいらっしゃいました。

「夫名義のマンションを、私(妻)名義に変えてほしいと言われています。私はもらう側だから、税金はかからないですよね?」

ご質問のとおり、もらう側(妻)に贈与税はかかりません。

でも、ここで多くの方が見落とすのが、「渡す側(夫)に譲渡所得税がかかる」という事実です。

所得税基本通達33-1の4には、こう定められています。 「民法第768条の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる」

つまり、不動産を渡した瞬間に、「時価で売ったのと同じ扱い」になるんですね。

ご主人が30年前に2,000万円で買ったマンションが、今6,000万円に値上がりしていたとします。譲渡益4,000万円に対して譲渡所得税(長期譲渡なら20.315%、復興特別所得税込み)がかかってしまう――単純計算で約800万円。

「現金が一円も動いていないのに、なぜ税金が?」と驚かれる方が、相談の現場では本当に多いです。

ある相談会では、財産分与の合意書を作ったあとに「これ、譲渡所得税の話、誰もしてくれなかった…」と顔色を変えられた方もいらっしゃいました。離婚協議が終わってから気づくと、もう後戻りができないんですね。

落とし穴②:3,000万円控除は使えるのに、使い忘れる

「夫が税金を払うんですか…どうしよう」

そう肩を落とされた方に、私はこうお伝えします。

「もしマイホームを渡すなら、3,000万円控除が使えるかもしれません」

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除は、財産分与でも使える可能性があります。これがとても大事なポイントです。

ただし、ここに2つ目の落とし穴があります。

租税特別措置法第35条第2項第1号は、「当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者」への譲渡を、3,000万円控除の対象から除外しています。

ここでいう「配偶者」は――そう、戸籍上の配偶者です。

つまり、財産分与を「離婚成立前」にしてしまうと、まだ法律上の配偶者ですから3,000万円控除は使えません。「離婚届を出したあと」に名義変更をすれば、もう配偶者ではないので控除が使えます。

たった数日のタイミング違いで、3,000万円分の控除が使えるか使えないかが変わってしまう。これは、相談の現場でとても多い「あと一歩」の落とし穴です。

たとえば先ほどの800万円の譲渡所得税の例も、3,000万円控除が使えれば、課税所得は4,000万円−3,000万円=1,000万円となり、税額はおおよそ200万円ほどに抑えられます。順番ひとつで600万円違ってくる、というイメージです。

落とし穴③:「過当な財産分与」は贈与税の対象になる

3つ目の落とし穴は、「分けすぎ」の問題です。

相続税法基本通達9-8には、こんなただし書きがあります。 「その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分(中略)は、贈与によって取得した財産となる」

つまり、夫婦で協力して築いた財産の範囲を超えて、極端に多くの財産を渡してしまうと、その「過剰な部分」には贈与税がかかってしまうんですね。

さらに、「離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合」には、財産分与で取得した財産の全額が贈与税の対象になります。

相談の現場でときどきお会いするのが、「財産はぜんぶ妻に渡したい」とおっしゃるご主人です。お気持ちはわかるのですが、税務上は2分の1ルールの範囲を大きく超えると、危険信号です。

財産分与は「夫婦が協力して築いた財産の精算」と「離婚後の生活保障」のためのもの。そこから逸脱しない範囲で考えるのが、税務上も安全です。

4. 読者へのポイント:チェックリスト3つ

落とし穴を踏まないために、財産分与をされる前に、ぜひこの3つを確認してくださいね。

ひとつ目。不動産を渡すなら、「渡す側」に譲渡所得税がかかることを忘れないでください。

ふたつ目。マイホーム(居住用財産)を渡すなら、3,000万円控除の適用タイミングを必ずチェック。離婚届を出した「あと」に名義変更するのが原則です。

みっつ目。分与する財産の額は、「夫婦が協力して築いた財産の範囲内」が安全圏。極端に多く渡すと贈与税の対象になってしまいます。

ちなみに、もし不動産を「もらう側」になった場合、その不動産の取得費は「分与を受けた時の時価」になります。将来、その不動産を売却するときの取得費の計算に使いますので、財産分与時の評価額や近隣の売買事例の資料は、しっかり保管しておいてくださいね。

5. まとめ

離婚と税金の話は、感情と数字が入り混じる、とてもデリケートなテーマです。けれども、知っているか知らないかで、数百万円〜数千万円の差が出ることもあります。

財産分与で気をつけたい3つの落とし穴をもう一度整理しますね。
①不動産を渡す側に譲渡所得税がかかる
②マイホーム3,000万円控除は離婚後でないと使えない
③過当な財産分与は贈与税の対象になる

2026年4月から請求期限が5年に延びたことで、タイミングを選ぶ余地が広がりました。だからこそ、税理士・弁護士に早めに相談して、戦略的に進めることをおすすめします。

「もう離婚してから時間が経っているから…」とあきらめないでください。経過措置や時効の判断は、ケースバイケースです。気になる方は、お近くの税理士にぜひご相談くださいね。

ふじまるは、資産税の現場で年間350件以上のご相談に向き合っています。離婚と税金のことで頭を抱えている方が、少しでも安心できますように。

#離婚と税金 #財産分与 #譲渡所得税 #3000万円控除 #資産税

生成日:2026年5月16日 by ふじまる(資産税につよい税理士)

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