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「1つの部に3人の部長」体制を考える

10月27日の日経新聞で、「日揮、3人で分ける「部長職」 高まる負荷、役割再定義」というタイトルの記事が掲載されました。部長職に期待される役割が大きいために、分割するというイメージのようです。

同記事の一部を抜粋してみます。

日揮ホールディングス(HD)が部長の役割を再定義している。中長期ビジョンを実行するリーダーに徹する。そのためにプロジェクト管理、人材育成に専念する2つの管理職ポストを新設した。「3人の部長」が役割を分担し、人材と組織の成長を両立させる。

日揮グループでグローバルのプラント設計を担う空間設計部。部長として約120人を束ねるのは岡本尚子さん。部員のデジタルスキル習得への支援制度創設、再生可能エネルギーでの新規事業の戦略立案など、競争力を高める仕組みづくりに余念がない。「部の将来像を描き、達成への道筋を示すのが自分の役割」と言い切る。

岡本さんだけでなく、組織を統括する部長級の管理職はあと2人いる。1人は世界で遂行中のプロジェクトへのエンジニア配置などを差配する中西栄介さんだ。日々の業務を管理し、収益を高める人繰りを担う「PCM」(プロジェクトコーディネーションマネジャー)と呼ぶポストに就く。

もう1人は人材育成を主導する長崎純さん。約90人の非管理職の部員のキャリア開発を支援し、成長につながる人事異動の計画もつくる「CDM」(キャリアディベロップメントマネジャー)という役職だ。

日揮は従来、一人の部長が日々の業務のかじ取り、人材管理を統括してきた。人材や予算の管理といった「マネジャー」の比重が大きいが、事業環境の変化も激しく、新しいビジョンを描く「リーダー」としての負荷が拡大。事業転換を担っていく若手、中堅の人材育成も重要性を増す。

そこで2022年以降、海外事業を担う日揮グローバルの主要30組織にCDMやPCMを設けた。間接部門は部長とCDMのコンビ、事業を手がける部署はPCMを加えた「三位一体」の運営に転換している。花田琢也最高人事責任者(CHRO)は「一人に全ておんぶにだっこでは、部長がつぶれるという危機感を持った」と話す。

「中間管理職のミッションが分かりにくいね」。管理職改革の方向性のヒントは、米国の同業他社からきた外国人幹部が花田氏に放った一言だった。

チームワーク重視の日本企業では、柔軟な分担がプラスになることも多い。しかし、職責を細かく定義するジョブ型雇用になじんだ外国人の目には異質に映る。世界中でデジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)がプラント業界に変化を迫り、「管理職の役割を明確にした方が組織運営の効率が高まるのでは」との問題意識が強まった。

最終決裁者は部長だが、競争力の礎となる人材管理はCDMとPCMが部長と同等の立場で、意思決定に関わる。まず育成面で効果が出ている。部員の人事面談は、直属の課長級が業務の達成度を評価してきた。改革後は、それに加えてCDMがマンツーマンで中長期のキャリア希望に耳を傾け、必要なスキルや経験を助言。長崎CDMは「部員のキャリアの希望を一元的に把握し、長期の人材計画を立てやすくなった」と語る。

また従来の人材配置は足元のプロジェクト遂行を優先し、実績のあるベテランに業務が偏りがちだったが「育成も兼ね、若手の抜てきも増えてきた」(中西PCM)。空間設計部のアンケートでは部員の8~9割が「新しい制度を評価」と答えて、「CDMができ、キャリア相談をしやすくなった」との声が多い。

少し前から、従来の人事部門に加えて、各事業部門でも人事関連の業務を主な役割として担うHR Business Partner(HRBP)を設置する会社が増えてきました。人事部門が人事業務を統括・担当する体制だけでは、現場に即した実践的な人・組織づくりの推進に限界があるという問題認識からです。デロイトトーマツのサイトを参照すると、HRBPについて次のように説明されています。

事業・機能部門のトップといった経営幹部に対して、組織・人事課題の相談や解決策の提案をするとともに、事業や機能部門の現場における人事課題解決策の実行の推進役を担う

同記事のCDMやPCMの例は、HRBPの概念をさらに進めて、役割をより分担する仕組みというイメージなのかもしれません。

同記事から、大きく2つのことを考えました。

・1人の人材がマネジメントに必要な機能を全役担う必要はない(役者を分担してもよい)

古くから、「リーダーとマネジャーは異なる」ということが言われてきました。決まった一つの言い方・定義はありませんが、例えば、「リーダーは目指すべきゴールを描きメンバーを導く存在」「マネジャーはゴールに向かってヒト・モノ・カネ・情報・時間のPDCAをまとめる存在」のように表現することもできます。

実際には1人の人がリーダーでもありマネジャーでもある、1人2役のことも多いのですが、私たちには利き腕があるように得意不得意があります。自分はリーダー的な機能を発揮するのは得意だが、マネジャー的な機能を発揮するのはそうでもない、あるいはその逆、などがあります。同記事の例は、マネジメントの役職といえども1人に全役を期待するのを前提とせず、1人1役に近い形を前提としようということのように見えます。

この背景には、2つのことがあるのではないかと思われます。ひとつは、(上記の通り)そもそも1人の人材に全役を期待するのが難しかったこと。もうひとつは、近年さらに難易度が高くなったことです。

事業を取り巻く環境変化が速くなっているというのは、よく言われることです。事業のビジョン、それに応じた目標設定なども、「以前の自社では一度設定すれば3年間は有効だったものが、せいぜい1年間しかもたない。1年後には見直しが必要になる」のようなイメージで、事業戦略をより高頻度に見直すことが求められるようになっています。

人のマネジメントについても、多様性を束ねることが近年ますます各社の課題テーマとなっています。従業員において、外国人人材も含めた属性の多様化、子育てや介護など従業員の抱える様々な事情の多様化、従来の「一律正社員」ではない雇用形態の従業員、各人のスキルや強みを活かしたタレントマネジメントの推進・・・など、人マネジメントの対象となる要素がより複雑、広範になっています。よって、人マネジメントに係る役割を分担してマネジメントのクオリティを上げていこうという背景もあると思います。

同記事の例のように、一口に「マネジメント」で括るのではなく、いくつかの主な要素に分けてそれぞれ得意な人材が担う体制にするというのも、ひとつの有力な方向性だと言えます。

・全役担える人材の希少価値はますます高まる

中小企業や起業からしばらくの企業などは、「これはCDMの役割」「それはPCMの役割」「三位一体の合議」などのように、いろんな役者をキャスティングできない環境もあります。むしろ、そのような余裕などなく、1人の役職者が何役もこなさなければならないような環境のほうが多いでしょう。

そうした環境下では、「大企業でこの役割だけしっかり務め上げてきました」(これはこれで貴重な存在です)という人材より、「中小企業で何役もやってきました」のような人材のほうが、幹部人材として活躍できる場合も多いものです。

何役もこなすのが難しい環境になるのであれば、同時に何役もこなせるスーパージェネラリストの価値は高くなる。そのような考えでキャリアを積むのも、個人にとっては有力な選択肢だと考えます。

<まとめ>
管理職は、1人何役もありだが、役者を分けるのもあり。

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