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【論点】日本版FARAは、地方議会・行政にも適用すべきか

▶︎日本版FARA全体の論点は、以下で体系的に整理している。
 → 外国代理人登録法(論点整理・まとめ)

ある自治体に、外国政府系企業による大型投資計画が持ち込まれたとする。

国内のコンサルタントが、工場誘致の条件として補助金制度の新設や土地利用規制の変更を求め、地方議会には国への意見書を採択するよう働きかける。だが、国会議員や中央省庁には一度も接触していない。

もし、この「地方ルート」が日本版FARAの制度外に置かれるなら、重要な政策影響活動を見落とすことにならないだろうか。

近年、半導体工場、再生可能エネルギー施設、データセンターなど、大規模な外資系投資をめぐり、自治体が補助金、土地利用、インフラ整備などの判断を迫られる場面は増えている。

もちろん、外国企業による投資それ自体が外国影響活動なのではない。問題となるのは、外国主体との関係を明らかにしないまま、国内の政策や制度の変更が働きかけられる場合である。

1 地方ロビイング規制とは別の問題

この問題を考えるには、米国のロビイング開示法(LDA)と外国代理人登録法(FARA)の違いを押さえておく必要がある。

LDAは、連邦議会や連邦行政府の一定の職員に対するロビイング活動について、登録と報告を求める制度である。州政府や州議会へのロビイングは、原則として各州の制度が扱う。

これに対し、FARAは単なる連邦ロビイング規制ではない。外国政府、外国政党、外国企業などの「外国本人」と一定の関係を有する者が、米国内で政治活動や広報活動などを行う場合に、その関係と活動内容の開示を求める制度である。

単純化すれば、LDAが主として「どこに働きかけたか」を見るのに対し、FARA型の制度は「誰のために活動したか」を見る。

したがって、日本版FARAについて、地方への働きかけは地方の条例に任せればよい、と直ちに結論づけることはできない。

2 外国影響活動は地方でも起こり得る

地方公共団体は、中央政府の出先機関ではない。

条例、予算、補助金、公共調達、土地利用、企業誘致、環境規制、公共施設の整備など、外国主体が関心を持ち得る多くの政策を決定している。

地方議会は、地方自治法99条に基づき、当該地方公共団体の公益に関する事件について、国会または関係行政庁に意見書を提出できる。

そのため、外国主体が、国内の企業、団体、法律事務所、コンサルタントなどを通じて首長や地方議員に働きかけ、自治体から国へ要望を上げさせる経路も考えられる。

外国影響活動は、永田町や霞が関から始まるとは限らない。

国会議員や中央省庁への直接接触だけを登録対象にすれば、地方から国へつながる間接的な政策形成過程が制度の外に残る。

3 海外でも線引きは一様ではない

諸外国の外国影響力透明化制度も、地方政治の扱いについて同じ線を引いているわけではない。

豪州の外国影響透明化制度は、連邦の選挙、政府、議会などの政治過程を中心に構成されている。

これに対し、カナダで2024年に成立した外国影響透明化・説明責任法は、連邦だけでなく、州、準州、市町村の政治的・政府的過程も条文上の対象に含めている。ただし、同法は2026年7月現在、まだ施行されていない。

両国の制度も、外国主体の定義、対象活動、免除、連邦と地方の権限関係などは細部で異なり、この対比は大きな傾向を示すものにすぎない。

ここから確認できるのは、外国影響力透明化制度だから地方を当然に含む、あるいは当然に除外するという共通の答えは存在しないということまでである。

日本では、海外制度の一部だけを移植するのではなく、日本の地方自治制度と政策形成の実態に即して適用範囲を決める必要がある。

4 「投資相談」の中に政策提言が入り込むとき

もっとも、外国企業が自治体と接触しただけで登録を求めるべきではない。

既存の補助制度への申請、許認可に関する相談、入札への参加、住民としての生活相談などは、通常の行政手続である。姉妹都市交流、文化事業、学校間交流も、それだけで外国影響活動になるものではない。

難しいのは、通常の事業活動と政策提言が一つの面談の中で混ざる場合である。

既存制度を利用して工場を建設したいと相談するだけなら、通常の商業活動だろう。だが、進出の条件として、新たな補助制度の創設、用途地域の変更、環境基準や調達条件の修正を求めるなら、単なる行政手続とはいえない。

行政との面談に「投資相談」と名前を付けても、その中身まで商業活動になるわけではない。

ただし、政策変更を求めること自体が問題なのではない。企業や団体が政策を提言することは、民主的な政策形成の一部である。

問題は、その活動が外国主体の指示、依頼、監督、資金提供などに基づいて行われている場合に、その関係を社会に開示させる必要があるかである。

5 地方自治との緊張

地方議会や自治体行政を国の登録制度に含めれば、憲法92条の「地方自治の本旨」との関係も問題になる。

国が地方議会の審議方法を定めたり、自治体が誰と面会できるかを制限したりすれば、地方自治への介入となり得る。

そこで、日本版FARAの登録義務は、地方議会や自治体ではなく、外国主体との一定の関係に基づいて活動する者に課すべきである。登録、調査、公開、制裁も国の機関が担い、自治体に登録該当性の審査や接触拒否を求めるべきではない。

もっとも、名宛人を活動者に限定しても、地方議員との接触が国の登録・調査対象となる以上、地方の政治過程に萎縮効果が生じる可能性は残る。

そのため、登録対象は、外国主体との一定の関係に基づき、公的意思決定へ影響を与えることを目的とする活動に限定しなければならない。単なる面会や意見表明を登録対象とせず、請願や陳情の受理とも切り離す必要がある。

地方自治との関係で重要なのは、国が地方の意思決定を管理することではない。政策形成に関与する者の背後関係を、住民が判断できるようにすることである。

6 無登録活動をどう見つけるか

国が一元的な登録制度を設けても、市町村で行われた無登録活動を自動的に把握できるわけではない。

端緒としては、自治体や地方議会から登録機関への照会、住民、地方議員、報道機関からの情報提供、登録者の活動報告と公開された面会記録との突合などが考えられる。

疑いが生じた場合には、登録機関が活動者に資料提出を求め、外国主体との関係や活動内容を調査できる仕組みも必要になる。

登録制度は、正直に届け出た者だけを公開して終わる制度ではない。無登録活動を確認する手段がなければ、透明化は紙の上にしか存在しない。

他方で、すべての自治体職員や地方議員に、外国関係者を発見し審査する義務を負わせるべきではない。日常の面会や国際交流が、疑念から始まる制度になってしまうからである。

自治体側に求めるのは、外国主体との関係を判定することではない。面会や要望の記録を適切に残し、疑義があれば国の登録機関へ照会できる環境を整えることだろう。

7 日本は適用範囲の理由を示すべきだ

私は、日本版FARAを導入するなら、地方議会と自治体行政も原則として対象に含めるべきだと考える。

地方もまた、公的意思決定の場であり、ときには国の政策変更へつながる起点となるからである。地方を経由した活動だけを制度の外に置く合理的な理由は乏しい。

ただし、開示の対象にすべきなのは、外国との接触でも、外国資本による投資でもない。外国主体との一定の関係に基づいて行われる政策影響活動である。

海外の制度も、地方の扱いについて同じ答えを選んではいない。だからこそ、日本は地方を含めるのか、含めないのか、その理由を示さなければならない。

地方を含めるなら、通常の行政手続や国際交流を巻き込まない基準が要る。地方を除外するなら、地方を経由する外国影響活動をなぜ開示しなくてよいのかを説明する必要がある。

日本版FARAという名称だけを導入し、地方を含める理由も、除外する理由も示さない。そのような制度設計だけは避けなければならない。

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