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【論点】登録期間をどのように設定すべきか――日本版FARAにおける10日・45日・活動前登録の考え方

▶︎日本版FARA全体の論点は、以下で体系的に整理している。
 → 外国代理人登録法(論点整理・まとめ)

1. 問題の所在

外国代理人登録制度を導入するとしても、登録義務を課した後、どの程度の期間内に登録を求めるべきかは、独立した制度設計上の論点である。

登録期間が短ければ、外国主体との関係を早期に可視化できる。しかし、登録義務の有無について十分な法的検討を行う時間が失われ、過大な負担や萎縮効果を生じる可能性がある。

他方、登録期間が長ければ、実務上の負担は軽減されるが、活動終了後に初めて登録が行われることとなり、透明性確保という制度目的が十分に達成されないおそれがある。

もっとも、登録期間の問題は、単純に「10日か45日か」という数字の問題ではない。

対象活動の範囲、登録義務が発生する基準、適用除外の広さ、執行体制などと一体となって初めて、その期間の合理性を評価することができる。登録期間とは、登録制度全体の設計思想を反映する指標なのである。

2. 論点の分解

(1) 選択肢

A案 短期登録型

登録義務発生後、10日から14日程度の短期間内に登録を求める方式である。

米国のFARAはこの類型に近い。

短期間で透明性を確保できることが長所である。

もっとも、短期登録型が機能するためには、対象範囲が限定され、適用除外が十分に整備されていることが前提となる。

B案 中期登録型

登録義務発生後、30日から45日程度の期間を認める方式である。

米国のLobbying Disclosure Actや英国のForeign Influence Registration Scheme(政治影響階層)は、この類型に近い。

透明性と実務負担との均衡を図ることを重視する方式である。

(2) 考慮要素

対象範囲の広さ

登録対象が限定されている場合には、短期登録型も機能しやすい。

他方、情報発信、研究活動、広報活動など広範な活動を対象とする場合には、短期登録型は過大な負担や萎縮効果を生じやすい。

義務発生基準の明確性

登録義務の発生時点が明確であれば、短期間での登録も可能である。

他方、抽象的な概念に基づいて登録義務が発生する制度では、短期間の登録を求めることは予測可能性を損なうおそれがある。

適用除外との関係

登録期間は、適用除外と切り離して考えることはできない。

短期間での登録を要求する制度であっても、適用除外が広ければ、制度対象は限定され、実務上の負担は軽減される。

逆に、対象範囲が広く、適用除外も限定されている場合に短期登録を採用すると、制度全体が過度に萎縮的となるおそれがある。

活動の性質

政策提言や議会ロビイングは継続的な活動であることが多い。

これに対し、世論形成活動やSNS上の情報発信は、短期間で目的を達成することもある。

さらに、選挙介入や認知戦を目的とする情報発信については、10日以内の登録であっても、登録時には既に活動の目的が達成されている場合がある。

そのため、活動の性質によっては、登録期間の長短だけでは透明性を十分に確保できず、活動前登録を含む別の制度設計が必要となる可能性がある。

執行可能性

登録期間の長短だけで執行の実効性が決まるわけではない。

執行の実効性は、調査権限、行政組織の専門性、違反に対する制裁など、制度全体によって左右される。

登録期間だけを厳格化しても、執行能力が伴わなければ制度は機能しない。

3. アメリカ(主にFARA)でどう扱われているか

米国のFARAは、22 U.S.C. §612(a)において、外国本人の代理人となった者に対し、原則として10日以内の登録を求めている。

したがって、FARAはA案である短期登録型に近い。

もっとも、FARAの特徴は、単に登録期間が短いことではない。

22 U.S.C. §613は、外交官、一定の商業活動、弁護士による法的代理、宗教活動等について適用除外を定めている。

また、代理人性は、direction、control、request等を通じて総合的に認定される。

したがって、FARAの短期登録は、

「比較的広い代理人概念」

「広い適用除外」

「10日以内の登録」

という組合せの上に成立している。

これに対し、LDAは、2 U.S.C. §1603(a)(1)により、最初のロビイング接触の日又はロビイング接触を行うために雇用又は保持された日のいずれか早い日から45日以内の登録を求めている。

また、LDAでは、ロビイング時間や報酬額等の閾値によって登録義務発生基準が比較的明確化されている。

したがって、LDAの45日という登録期間は、明確な義務発生基準と結び付いた制度設計として理解することができる。

このように、登録期間の数字だけを比較しても、その合理性を評価することはできない。

4. 諸外国ではどうなっているか

英国

英国のNational Security Act 2023に基づくForeign Influence Registration Schemeは、政治影響階層と強化階層からなる二層構造を採用している。

政治影響階層については、取決め成立後28日以内の登録が予定されており、中期登録型に近い。

これに対し、強化階層については、高リスクの外国勢力との関係を対象としており、政治影響階層よりも厳格な制度設計が採用されている(登録期間等の詳細については一次資料確認中)。

したがって、英国制度は、リスクに応じて異なる制度を組み合わせる二層構造型として理解することができる。

EU

EU Transparency Registerは、一定期間内の登録を中心とする制度ではない。

登録の有無とEU機関へのアクセスとを連動させることによって透明性を確保する制度である。

したがって、EU型は、「何日以内に登録するか」という問題そのものを別の仕組みによって代替している制度として位置付けることができる。

5. 日本にあてはめると

日本版FARAを導入する場合、登録期間だけを独立して決定することはできない。

対象範囲、代理人性の認定基準、適用除外、執行体制などと一体として設計する必要がある。

対象範囲が広く、義務発生基準も曖昧な制度で短期登録を採用すれば、制度利用者に過大な負担を課し、萎縮効果を生じる可能性がある。

他方、対象範囲を限定し、適用除外を整備した上で短期登録を採用することは、透明性確保という観点から合理的な選択となり得る。

また、日本においては、制度運用能力も重要な問題となる。

登録義務の範囲が曖昧なまま制度を導入した場合、企業や団体は行政庁による事前確認を求める傾向を強める可能性がある。

その結果、自己申告制度であっても、実質的には行政庁による事前相談制度に近づくことも考えられる。

さらに、制度を所管する行政機関をどこに置くかによって、担保できる専門性や調査能力も異なる。

したがって、日本版FARAにおける重要な課題は、登録期間そのものよりも、制度を支える行政能力をいかに構築するかにある。

6. 考え方の整理

登録期間の問題は、単なる「何日以内か」という数字の問題ではない。

対象範囲が広く、義務発生基準も曖昧で、適用除外が限定されている制度に短期登録を組み合わせれば、過大な負担と萎縮効果を生じやすい。

逆に、対象範囲を限定し、義務発生基準を明確化し、適用除外を整備した制度であれば、短期登録も十分に機能し得る。

結局のところ、登録期間の合理性は、何日以内という数字そのものによって決まるものではない。

対象範囲、義務発生基準、適用除外及び執行体制との組合せによって初めて、その数字は意味を持つ。

したがって、日本版FARAの制度設計においては、登録期間を独立して論じることはできない。

誰を外国主体とするのかによって登録対象の範囲は変化する。また、代理人性をどのように認定するかによって、登録義務が発生する時点の明確性も左右される。さらに、どの活動を対象とするのか、どこまで適用除外を認めるのかによって、短期登録が実務上許容されるかどうかも変わってくる。そして、制度を実効的に運用するためには、登録期間に見合った執行体制を整備することも不可欠である。

このように、登録期間とは独立した論点ではなく、登録制度全体の設計思想を映し出す鏡なのである。

もっとも、情報発信や世論形成活動、とりわけ認知戦のように、極めて短期間で目的を達成し得る活動については、事後の登録期間をいかに短く設計しても、透明化のタイミングとして手遅れになる場合がある。

したがって、日本版FARAにおいてこれら即応性の高い活動を捕捉対象に含める場合には、単なる事後登録の期間の長短を超えて、活動前登録という別の制度設計をどこまで組み合わせるかが、独立した論点として問題となる。

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