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【論点】活動前登録を義務付けるべきか――日本版FARAにおける登録時期を考える

▶︎日本版FARA全体の論点は、以下で体系的に整理している。
 → 外国代理人登録法(論点整理・まとめ)

問題の所在

外国影響力透明化制度(日本版FARA)を設計する際、重要な論点の一つが活動前登録である。

本稿でいう「活動前登録」とは、単に登録時期を前倒しする制度ではなく、登録前の活動を認めない制度設計を指す。

活動前登録を採用すれば、外国からの働きかけが実際に行われる前の段階から透明性を確保できる。一方で、企業や団体の正当な政策提言や経済活動まで萎縮させるおそれもある。

もっとも、活動前登録の採否は登録時期だけで決まるものではない。

制度設計上は、

  • 登録義務はいつ発生するのか

  • いつまでに登録しなければならないのか

  • 登録前の活動を認めるのか

という三つの要素を組み合わせて考える必要がある。

比較法を見ると、各国制度はこれらを異なる形で組み合わせながら制度を設計している。

論点の分解

(1)登録義務はいつ発生するか

登録義務が発生する契機には、大きく二つの考え方がある。

第一は、外国本人との契約や代理関係、その他これに準ずる取決め(arrangement)の成立を基準とする考え方である。

契約や取決めの段階から透明性を確保できる一方、実際の活動開始まで期間が空く場合にも登録義務が生じる。

第二は、登録対象活動を開始した時点を基準とする考え方である。

実際の活動と登録義務を一致させやすい反面、「活動開始」をどの時点で判断するかという課題が残る。

(2)いつまでに登録を求めるか

登録義務が発生した後の登録期限にも選択肢がある。

登録義務発生後、極めて短期間で登録を求める方式もあれば、一定期間内の登録を認める方式もある。

登録期限を長く設定すれば実務負担は軽減されるが、その分、活動初期の透明性は低下する。

(3)登録前の活動を認めるか

さらに重要なのが、登録が完了するまで登録対象活動を認めるのかという点である。

登録前活動を禁止すれば透明性は高まるが、制度利用者の負担は大きくなる。

一方、一定期間内の登録を認めれば柔軟性は高まるものの、その間は無登録の活動が行われることになる。

アメリカではどう扱われているか

FARAでは、外国本人の代理人となった時点で登録義務が発生する(22 U.S.C. §612(a))。

登録は代理人となった日から10日以内に行うことが求められている。

もっとも、同条は「登録申請書を提出していない限り外国本人の代理人として行為してはならない」とも規定しており、登録前活動について厳格な規律を採用している。

したがって、FARAは、

  • 代理関係の成立を登録義務発生の契機とし、

  • 短い登録期限を設け、

  • 登録前活動を禁止する

という三つを組み合わせた制度である。

これに対し、ロビイング開示法(LDA)は、最初のロビイング接触を行った日又はロビイストとして雇用・受任された日のいずれか早い時点を起点として登録義務が発生し、その日から45日以内の登録を求めている(2 U.S.C. §1603)。

LDAでは、一定期間内の登録を前提として活動が行われる制度となっており、FARAとは制度思想が大きく異なる。

この違いは、外国影響力への対応と国家安全保障を重視するFARAと、国内ロビイング活動の透明性確保を目的とするLDAとの制度目的の違いを反映している。

諸外国ではどうなっているか

英国FIRSも、外国主体との arrangements(取決め)を基礎として登録義務を設計している。

もっとも、政治的影響力ティアと強化ティアでは登録期限や適用される規律が異なり、二層構造を採用している点に特徴がある。

オーストラリアFITSAでは、登録義務は登録対象活動を行った場合だけでなく、登録対象取決め(registrable arrangement)を締結した場合にも発生する。登録義務を負うに至った者は、その日から14日以内に登録申請を行わなければならない。

このように、FITSAも活動のみを基準とする制度ではなく、取決めの段階から登録義務が生じ得る制度となっている。

もっとも、法律上の助言、外交活動、商業活動、業界団体の活動など幅広い適用除外が設けられており、登録期限だけで制度負担を比較することは適切ではない。

日本にあてはめると

日本版FARAを検討する場合、日本の政策形成過程との適合性を考える必要がある。

日本では、政策提言は審議会への参加、税制改正要望、業界団体による要望活動、議員連盟との意見交換など、中長期的なプロセスの中で行われることが多い。

また、政策提言はPR会社や法律事務所などの代理人だけでなく、企業のインハウス部門や業界団体自身が主体となって行われることも少なくない。

一方で、国際情勢の変化や法案審議への対応など、短期間で行政との意見交換が必要となる場面も存在する。

したがって、日本版FARAでは、登録義務の発生時点や登録期限だけでなく、登録前活動をどこまで認めるのかという制度設計も、企業活動や政策形成過程に大きな影響を及ぼす。

さらに、その影響は、登録対象活動の範囲、登録義務者、適用除外、開示事項、制裁などとも密接に関係する。

考え方の整理

活動前登録を義務付けるかという論点は、「活動前か活動後か」という単純な二択ではない。

制度設計上は、

  • 登録義務をいつ発生させるか

  • いつまでに登録を求めるか

  • 登録前活動を認めるか

という三つの設計要素を組み合わせて考える必要がある。

比較法を見ると、その設計は一様ではない。

制度登録義務発生の契機登録期限登録前活動FARA代理関係の成立10日禁止LDA雇用・受任又は最初のロビイング接触(早い方)45日一定期間内の登録を前提として活動可能FITSA登録対象活動又は登録対象取決め14日14日以内は可

このように、各国制度は登録義務発生の契機、登録期限、登録前活動の取扱いを組み合わせながら、それぞれの制度目的に応じた制度設計を採用している。

もっとも、制度設計上の判断基準は示すことができる。

登録対象活動を広く設定するのであれば、一定期間内の登録を認める制度設計の方が実務との調和を図りやすい。

これに対し、安全保障上のリスクが高い活動に対象を限定し、活動開始前から透明性を確保することを重視するのであれば、FARAのように契約・代理関係の成立段階から登録義務を発生させるとともに、登録前活動を禁止する制度設計も有力な選択肢となる。

もっとも、活動前登録の採否のみで制度の優劣を判断することはできない。登録対象活動の範囲、登録義務者、適用除外、開示事項、制裁などとの組合せによって、制度全体の実効性と実務負担は大きく変わる。

今後、日本版FARAの制度設計では、活動前登録の是非を独立した論点としてではなく、制度全体の設計思想の中で位置付けながら検討することが求められる。

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