【ラジオ原稿】富士山自然図鑑⑮「山の貴婦人 ヤマシャクヤク」
ラジオFをお聴きの皆さんこんにちは、富士山ネイチャーツアーズの岩崎です。
先日、西臼塚の自然散策路を歩いていると、背丈30cmほどの株立ちした白い花に出会いました。赤ちゃんの握りこぶし大のやや大ぶりの、丸い白磁器のような美しい形。花の中にはバナナのようなフォルムの三本の雌しべを、黄色い花粉を携えたたくさんの雄しべが取り囲んでいます。
凛としたたたずまいから「山の貴婦人」の異名を持つ春の花。
今日は五合目から下ること千数百メートル。標高1200m付近の林床に咲く花「ヤマシャクヤク」のお話です。
晩春の山では白い花を目にすることが多くなります。花はそもそも私たちの目を楽しませるために咲いているのではなく、花粉を媒介してくれる昆虫たちを引き寄せるための広告として存在しています。そのためには昆虫たちの興味をそそる魅力的な色に寄せる必要があるのです。なぜなら、昆虫は私たち人間が見ることのできない紫外線を感知できるため、全く違う色で花を見ており、花は昆虫たちに美味しい蜜の準備ができていることを知らせる蜜標と呼ばれる模様を昆虫のために施します。当然この蜜標は人間に見える必要はないわけですね。そして、この時期の紫外線を最も効率的に反射し、昆虫に猛アピールできる色を選択した結果が白というわけです。ヤマシャクヤクが白いのにも大きな意味があったのです!
ところで、「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?大和美人を例える言葉としてよく知られています。
しかし、私はずーーーっとこの言葉に違和感を覚えていました。シャクヤクが立っているイメージも、ボタンが座っているイメージも、ユリが美しく歩くイメージも全く持てなかったからです。
そこで調べてみると、もともとこの言葉は大和美人を表す言葉ではなく、漢方の効能を覚えるための標語だったことが判明しました!
気がいら立っている時はシャクヤクの根が、座ってばかりで血行が悪い時はボタンの根が、めまいが生じてふらつくときはユリの根が効くのですよという意味だったのです!何年もモヤモヤしていた疑問が解消できました(笑)。
ラジオをお聴きの皆さんの中に気が立ってイライラしている方がいましたら、富士山の森へ行き、美しいヤマシャクヤクの花を見ていやされてみてはいかがでしょうか。あっ、くれぐれも根っこを掘り返したりしてはいけませんよ。
富士山ネイチャーツアーズ岩崎でした。
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