【ラジオ原稿】富士山自然図鑑⑤「まさにダブルインカム!?ミヤマハンノキの戦略」※無料
こんにちは。富士山五合目図鑑を担当します富士山ネイチャーツアーズの岩崎です。
このコーナーでは私の大好きな富士山で生きる植物をはじめとする様々な生き物たちにスポットを当て、彼らの生き様や、思わず「へぇ~」と声を出してしまいたくなる興味深い生態を紹介していきます。
富士山に行くのが楽しくなる、新たな富士山の楽しみ方が見えてくる、そんな情報をお届けします!

さて、今日は紅葉の話です。というより、あえて紅葉しないという戦略を立てた植物の話です。
10月半ばから11月上旬にかけては、富士山五合目周辺はカラマツという木が黄金色に黄葉し、秋の富士山の主役の座を恣(ほしいまま)にする大変美しい季節です。

しかし、そんな華やかなカラマツをしり目に、したたかに、マイペースに来るべき冬への準備を進める樹木がいます。その名は「ミヤマハンノキ」。秋も深まった11月にもかかわらず、まだ緑色の葉を保ち続けているのです。葉が緑色ということは、葉、幹、根が繋がっているということですから、冬が来るギリギリまで光合成で生産した栄養分を体に送り続けられるというわけです。
そして、日照時間が減り、さすがに限界を感じると、葉が枯れる前に緑色のまま落としてしまいます。水分が多く重たい緑色の葉は、風に飛ばされることなく、自分自身の真下に落ちて堆積します。実は葉の中には地球の三大栄養素の一つ、「窒素」が含まれています。この窒素を足元に効率的に、沢山貯め込むことが出来るわけです!まさに貯蓄型の生き方!

更に凄いことに、「ミヤマハンノキ」は根にも秘密を持っています。根に「根粒菌」と呼ばれる窒素を吸着してくれる菌を住まわせています。つまり、その「根粒菌」が、自身で堆積させた緑色の葉から、効率よく窒素という栄養素を根に送り込んでくれるのです。
ギリギリまで行う光合成によって得られる糖質と、自ら落とした葉から調達する窒素、まさにダブルインカム!
これこそが栄養価の乏しい富士山の溶岩台地で生き残るために「ミヤマハンノキ」が会得したクレバーな生存戦略なのです。
厳しい環境を生き抜く植物たちのしたたかな暮らしぶりには本当に感心しますね。
それでは、またお会いしましょう!富士山ネイチャーツアーズ岩崎でした。ありがとうございました。
