大人のピアノが教えてくれた、もう一つの価値
私は長年ピアノに関わる中で、上達することや演奏技術を磨くことの素晴らしさをたくさん見てきました。
けれども、大人になってからピアノを始めた方々との出会いの中で、それとは別の価値があることを教えていただきました。
講座を続ける中で、大人の方ならではの言葉を耳にすることがあります。
「何年やっても上手くなれないんです」
「発表会だから、素晴らしい演奏をしなければ」
「毎日練習しないとダメですよね」
「毎日練習しています」
もちろん、向上心を持つことは素晴らしいことです。
けれども私は、その言葉の奥にある「頑張らなければ」「できなければ価値がない」という気持ちを感じることがあります。
一方で、仕事や介護、家事、体調など、それぞれの事情を抱えながらも教室に通い続けている方がいます。
月に数回しかピアノに触れられない方もいます。
思うように指が動かない日もあります。
それでも仲間と笑い合いながら音楽を楽しみ、
「今日も来てよかった」
と帰っていかれる姿を見ていると、ピアノの価値は上達だけではないのだと感じます。
私自身、長い間ピアノに関わってきました。
上達する喜びも知っています。
けれど、大人の受講生の皆さんから教えていただいたのは、それとは別のもう一つの価値でした。
ピアノは誰かと比べるためだけのものではなく、自分の人生を豊かにするためのものでもある。
仲間と出会い、笑顔になり、前向きな気持ちを取り戻すきっかけにもなる。
私はそんな大人のピアノ文化を、これからも大切にし、その魅力を伝えていけたらと思っています。
