オープンイノベーションで実現!超音波解析AIで冷凍ビンチョウマグロの脂のりを検査する装置を開発!
こんにちは!富士通 広報note編集部です。
2025年4月9日に、富士通は、静岡発のデジタル技術で匠の技を継承した装置開発を行うスタートアップであるソノファイ株式会社(以下、ソノファイ)、食品加工装置を製造販売する株式会社イシダテック(以下、イシダテック)、東海大学[静岡キャンパス]とともに、超音波解析AI技術を搭載した世界初の冷凍ビンチョウマグロの脂のり検査装置の販売開始について、共同記者説明会を開催しました。
本装置は、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」のコア技術として開発した超音波解析AI技術を活用することで、世界で初めて非破壊でAIによる冷凍ビンチョウマグロの脂のり判定を実現し、目視検査に頼ることなく自動で、より高精度な脂のり判定を行います。
富士通と東海大学は、超音波とAIを活用して、非破壊で客観的に冷凍マグロの品質を選別する技術を開発し、2022年に冷凍マグロの鮮度評価に成功しました。
この共同研究の成果を社会実装につなげるべく、富士通は実用化に向けた取り組みを加速させました。
社会実装のためには装置化が必要不可欠。そこで出会ったのがイシダテックです。
これまで接点のなかった両社が、どのようにして出会い、装置の販売開始に至ったのか、本プロジェクトをけん引する担当者の方々へのインタビューを通じて、プロジェクトの舞台裏に迫ります!
担当者インタビュー

Q. まずは富士通とイシダテックの出会いについてお伺いしたいです。接点のなかった両社がいつどのようにして出会ったのでしょうか?
酒井:高速に安定してマグロの超音波検査を行う必要があることから、当初からハードウェアメーカーとの協業は不可欠であると考えていました。そのため、プレスリリース等で積極的な発信を行っていました。転機になったのは2023年12月に冷凍ビンチョウマグロの脂評価に関するnote記事を掲載したことでした。あるnoteのファンからイシダテックという面白い会社があるので一度話してみないかと引き合わせていただきました。
Q. 出会ってから1か月ほどで協業を開始しているとのことですが、協業の決め手は何だったのでしょうか?
中田:実は私はプロジェクトが進む途中で、ソフトウェア周りのことを検討するフェーズで参画しました。そのため、社長の石田からの伝聞ですが、決め手は酒井さんとnoteファンの方の熱意だったようです。酒井さんご自身は、数年間この研究に身を投じておられ、こちらの記事にもあるようにパーパスは「面白い仕事をする」とあります。これまでの研究経緯やこれから成し遂げたいことを、本当に面白そうに、そして熱意溢れる語り口で教えていただいたので、一緒に社会実装を成し遂げたいと思うようになったそうです。加えて、ファンの方の言葉から、最後に背中を押されたとも。「まったく知らない世界の『超音波解析AI』を社会実装するのは大変なことだ」と不安がる石田とのやり取りの中で、仕事において「『楽』にあぐらをかいて『楽しい』を忘れることなかれ」、と示唆してくれたそうです。(もちろん、言い方はもっと優しかったと聞いています)確かに、簡単な道ではないかもしれませんが、これが実現すれば「面白く」「楽しい」仕事になるはず。お二人の熱意からこのように考え、協業を決めたそうです。
酒井:イシダテックはnoteの記事等を通してさまざまな情報発信をしていました。そういった記事を見ていくと単なる町工場ではないということがわかりました。すでに多くの先進的な取り組みを行っており、ハードウェアだけでなくソフトウェアに関しても高い技術を持っていることを知ることができたのが大きかったです。あとは石田社長3代目でおよそ80年間続いている会社であることも大きかったです。石田社長は健全に事業を展開する能力が立証されている経営者だと感じました。
Q. 今回の販売開始に至るまで、プロジェクトメンバーはどのような道のりを歩んでこられたのでしょうか?印象的なエピソードなどがあればお聞かせください。
中田:富士通が制作した試作機をベースに弊社にて検証機を完成させた後、大きく分けて3つのステップでテストを実施しました。①社内でのテスト、②東海大学でのテスト、③エンドユーザー様環境でのテストです。これらのテストはいずれも順調にいったとは言えず、それぞれに課題がありました。
例えば、①社内でのテストでは、超音波プローブがマグロにしっかり押し当たったかを確認するために近接センサーを使用していましたが、マグロの状態によっては押し当てる力が弱く、センサーが正しく反応しないため、思い通りの波形を取得できないという問題が生じました。この課題に対しては、最終的に近接センサーの使用を取りやめ、電動シリンダの圧力情報を用いて押し付け完了を判定することで解決しましたが、そこに至るまでの試行錯誤は非常に印象的でした。
波形がうまく取得できない状況下で、酒井さんと安富さんが複数の波形を比較しながら原因を検討し、時には手で超音波プローブを持ってマグロに押し当ててみることで、押し付け力の不足が問題の本質であることを突き止めました。ただ波形データをAIに入力して推論を任せるのではなく、物理的に「なぜこのような波形になるのか」という仮説を立て、その仮説を実際に検証しながら問題を解決していた姿はまさに研究者だと感じました。
八木:初めて富士通のメンバーとお会いしたのが2022年4月でした。実際にお会いして超音波を用いて非破壊で冷凍マグロを検査して評価したい、最終的にこの技術を製品化したいという研究の熱量が伝わり、このメンバーでなら実現できるのではないかと思いました。しかし、製品化までの道のりは決して簡単なものではありませんでした。冷凍物を対象とした周波数の超音波の検出、人為的な検査でなく自動機械による測定の開発、など様々な問題に衝突し、その都度チームの方たちと解決策を考え乗り越えていきました。
特に、今回のビンチョウマグロの脂ののり具合はビンチョウの身の色が白いので熟練した専門家の技術でも難しく、見た目だけでは全く分かりません。実際にメンバーでこちらの刺身は脂がのっていない、こちらの刺身は脂がのっていると説明され、食べてみて何となく脂がのっているかなという印象でした。こういったことからビンチョウマグロの脂ののり具合を非破壊で迅速かつ定量的に評価したいなど有効な評価法の開発に進展したと思います。
安富:2022年に冷凍マグロを超音波で検査しようという研究を始めてから、冷凍物が検査可能な周波数の超音波を見出し、実際にマグロの中身が検査できそうだということが分かるまで1年。そして、人の手で検査するのはやはりしんどいよね、ということでロボットに強いメンバーを集めて研究用プロトタイプの測定機ができるまで1年。そして今回、イシダテック・ソノファイという強力なパートナーによっていよいよ製品へ一歩を踏み出すまで1年。やはりそれぞれのフェーズで苦労がありました。
冷凍マグロに一般的な超音波が全く通らず検査不能だったときや、プロトタイプを作る過程で制御用基盤から煙が出てダメにしてしまったとき、そして冷凍倉庫の近くで実証実験した際にこれまで想定もしていなかった気温に起因するトラブルが起きたときの絶望感は忘れられません(笑)もちろん、チームのみんなと協力してそれらを乗り越えたことも大切な思い出です。
Q. 世界初の先進的な装置を、約1年という短期間で開発できた秘訣を教えてください。
中田:富士通、東海大学、そしてイシダテックがそれぞれの専門性を発揮し、三者が連携しながらプロジェクトを進められたことが、今回の成果に大きく貢献したと感じています。
弊社は機械の開発には強みがありますが、超音波計測やマグロに関する知識はほとんどありませんでした。そのため、思い通りの結果が得られなかった際に、原因が機械設計にあるのか、超音波波形の解析プログラムにあるのか、あるいはマグロの個体差によるものなのかを、弊社だけで判断するのは困難でした。
しかしその都度、富士通や東海大学の皆さんと現場で意見を交わし、考えられる対策を一つひとつ実行していくことで、最終的に実用的な装置を完成させることができました。
また、さまざまなアイデアを次々と出す酒井さんと、それを一つずつ着実にソフトウェアとして形にしていく安富さんのチームワークの良さも、短期間での開発成功を支える大きな要因だったと感じています。
八木:チーム発足当時マグロに関する知識はありましたが、AI技術に関しては専門ではありませんでしたので、富士通メンバーの超音波解析結果の解釈とAI技術には非常に助けてもらいました。また、将来的に自動測定装置を用いて冷凍マグロを測定すると決まった際、マグロのサイズが異なるのでどのように装置で測定するのか疑問に思いました。こういったことから、イシダテックのメンバーが上記の問題点を踏まえて短期間に冷凍マグロ測定用の機械を考案していただき、最終的に「ソノファイ T-01」が誕生しました。
酒井:イシダテックのメンバーの技術を吸収しようとする意欲と力に助けられたところが大きいです。冷凍マグロはそれぞれに姿勢やサイズが異なり、それを一つの装置で測定することは非常に困難です。「ソノファイT-01」の前の機構検証用の試作機が存在するのですが、この試作機の開発段階で多くの暗黙知が生まれていました。こういった感覚的なものを短期間に技術移転できたことが大きかったです。

Q.富士通とイシダテックが最初に出会ったときのそれぞれの印象は?また今回の取り組みによってその印象は変わりましたか?
中田:最初に出会ったときには、研究内容について何か質問をすると毎回とても丁寧に楽しそうに説明いただき、この研究が好きで、誇りを持っているのだなと感じました。その印象は最後まで変わりませんでした。
富士通の人工知能研究所と聞いていたため、皆さんに会うまではAIゴリゴリの方々かと思っていましたが、AIはあくまでツールであると割り切り、社会課題を解決するためのアプリケーションの研究開発に注力していることが印象的でした。
安富:最初の印象は、地元に根付いた手堅い会社だなというものです。一方で、イシダテックのnoteではフレッシュさやインパクトのある記事も多く出ていましたので、手堅いだけではないワクワク感もありました。実際に一緒に仕事を始めてからは、第一印象どおりの仕事ぶりはもちろん、そのスピード感と技に驚きました。富士通メンバーではハードウェアに深く踏み込めずに四苦八苦していたポイントが鮮やかに解決されていくのをみて、やはりその道のプロは違うなと感動しました。
Q. 最後に、今後の展望や抱負をお聞かせください。
中田:富士通が長年取り組んできた技術を、産業レベルへと引き上げ、実用化していくことが、私たちの使命だと考えています。
技術経営(MOT)の世界で言うところの「魔の川」「死の谷」をなんとか乗り越え、いよいよ次は“ダーウィンの海”。焼津市というマグロとカツオに囲まれた立地を活かしながら、これからは富士通に頼るだけでなく、自力で航海できるよう、仲間とともに挑んでいきます。
酒井:今後、複数魚種への拡大や項目数の増加についてはソノファイが主導して開発していくことになります。主要なマグロ類の種類だけでも6種類あります。そういった意味ではラインナップの拡張はまだ始まったばかりです。また、初期段階ではありますが、官能評価というヒトが実際にマグロを食べた感覚と科学的な結果を比較する研究も行っています。人類がマグロを完全に理解するにはまだ長い時間がかかるでしょう。そういった意味ではわたしたちは広大な未知の末端を照らすのに成功したにすぎません。まだまだ大きな挑戦が待ち受けています。
終わりに
今回の記事はいかがでしたか?noteが出会いのきっかけとなり、オープンイノベーションを実現した今回の取り組みが、少しでも皆さまの活動のヒントになれば嬉しいです。
【イシダテック公式note】4月23日公開!
イシダテックnoteでは、今回の協業の裏側に密着。
イシダテックならではの視点で、舞台裏のエピソードや担当者の想いをお届けします。
お楽しみに!
※2025年4月24日にURLを追記しました。
富士通フロンティアーズとソノファイがコラボレーションした動画も公開中です!ぜひご覧ください!

