風になる:その曲に込めた思い出
陽のあたる坂道を自転車で駆けのぼる・・・
つじあやのさんの名曲
ジブリの猫の恩返しの主題歌になってますね。
でも、僕にとっては、2年前に虹の橋を渡っていった愛犬ナナのテーマソングなのです。
16歳を迎えたナナの認知症が始まり
この先長くないと悟って想い出作りの旅を始めたのが2023年の春でした。
小型犬用のバギーを購入し
暖かくなるのを文字通り指折り数え
犬を受け入れてくれる観光地を巡りました。

山中湖の近く、花の都公園はその一つでした。
ナナを乗せたバギーを押して散策し
芝生広場で夢のような景色に出会いました。
青空の下、富士山に見守られながらよちよちと妻の後を追いかけるナナ。

広場ではオルゴールの音楽が流れていて
その一曲が、風になる、でした。
この日以来、この歌が自分の中で勝手にナナのテーマソングになったというわけでした。
粗相するようになったナナの世話が辛い時
この歌を口ずさんで自分を励ましたものでした。
ナナの老化は急速に進み
翌年の春にはもう、旅行に連れて行くことは無理な体になっていました。
同じ所をグルグル回るようになり
そのうち立つこともできなくなりました。
それでも歩きたがるナナの為に、車イスを作りました。

廃材をそのまんま組んで作ったので
ハウルの動く城みたいな出来でしたが
せっかくなのでリボンやら造花やらくっつけて
飾ってあげました。
究極の車イスが完成した!
その2週間後でした。
朝からナナの調子が悪い。
リモートのミーティングを済ませて
獣医に診てもらうことにしました。
11月の中ばでした。
獣医の元に向かう道は紅葉のトンネルでした。
木漏れ日がキラキラして、夢の世界を抜けていくようなドライブでした。
強心剤の注射をしてもらって帰りました。
もう大丈夫かと思っていたのですが
ナナを見ていた妻が、
パパ、息が止まった!
抱き上げました。
心臓マッサージのつもりで揺さぶって見ました。
一瞬息を吸って、ナナが僕らの顔を見ました。
妻の泣き叫ぶ声。
窓の外では紅葉がキラキラと陽射しを反射していました。

ナナが逝ったら、マレーシアに移住しようね。
夫婦2人で決めていた事でしたが
こんなに悲しいなんて。
認知症で僕らを認識できなくなっていたナナ
介護は大変でした。
それでもいとおしい家族だったんだと
失ってから気づきました。
主を失ったナナのベッドを見たら
込み上げてきたものが、うわっと。
ナナのために、色々なものを作ってきました。
流動食を食べるための回転する餌台
食事用のイス
そして車イス。
100均ショップで飾りを探す時
メカを構想している時
今思えば
みんな至福の時でした。
ナナがくれた小さな幸せだったのだと
今になって気がつきました。
移住の準備の為に短期で訪れたマレーシアのコンドミニアムで
風になる がラジオから流れてきました
マレーシア出身で台湾で活躍する梁静茹さん
愛称 Fish Leong がカバーした曲でした
間奏のバイオリンが切ないです
ナナの思い出と共にあの頃の記憶が次々と蘇ってきました
僕らがマレーシアに行けるように、ナナが道を譲ってくれた
そのようにしか思えないのです

最後の日本の景色
今、マレーシア
居間はナナの写真で埋め尽くされています
ナナを抱っこする感触は今も手に残っています
もう一度抱っこしてあげたい
勝手にテーマソングに設定して
本当に身勝手なのだけど
風になる を聴くと
あの頃の思い出が蘇ります
辛かった思い出も何もかも
風になる のブックマークの上で指が止まります
もう聴きたくない
思い出すのは辛いから
もう一度聴きたい
思い出さないのは寂しいから
