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セブンの就業規則だけで、加盟店は本当に守れるのか

割引あり

——「もう来なくていい」が、オーナーの自爆ボタンになる時代

先日、社労士の先生と、就業規則についてかなり踏み込んだ打ち合わせをしてきました。

私の店では、以前から本部標準の就業規則をそのまま使うのではなく、社労士の先生と相談しながら、現場に合う形で独自に整えてきました。

今回、それをさらにバージョンアップしました。

なぜそこまでするのか。

それは、私が25年間コンビニ経営をしてきた中で、労務トラブルの怖さを身をもって知っているからです。

これは机上の話ではありません。

実際に揉めたことがあります。
実際に苦しんだことがあります。
実際に社労士の先生と一つずつ解決してきたことがあります。
そして、過去にこの就業規則の考え方に、私は本当に助けられたことがあります。

もし当時、一般的な就業規則だけで対応していたら、私は精神的にも経営的にも持たなかったかもしれません。

それくらい、労務トラブルは経営者を追い込みます。

お金の問題だけではありません。

時間を奪われる。
気力を奪われる。
店の空気が悪くなる。
管理職が疲弊する。
真面目に働いている従業員にも悪影響が出る。

そして何より、オーナー自身が、

「自分は何のために店をやっているのか」

と思うところまで追い込まれる。

私はそれを経験しています。

だからこそ、私は就業規則を軽く見ていません。


本部の就業規則を入れているから大丈夫、は危ない

誤解のないように言います。

私は、本部の就業規則そのものを全否定したいわけではありません。

本部の就業規則には、本部なりの役割があります。

最低限の形を整える。
加盟店に一定水準の労務管理を促す。
大きな穴を防ぐ。

その意味では、必要なものです。

しかし、問題はそこではありません。

本部の就業規則だけで、本当に加盟店の現場を守り切れるのか。

私はここに、かなり強い疑問を持っています。

同じセブン-イレブンでも、店によって現場は全く違います。

人員構成も違う。
高校生が多い店もある。
主婦層が多い店もある。
外国人スタッフが多い店もある。
夜勤の運用も違う。
シフトの作り方も違う。
発注、清掃、引き継ぎ、金銭管理、温度管理、廃棄管理のレベルも違う。

それなのに、

「本部の就業規則を使っているから大丈夫」

と思い込むのは、私はかなり危ないと思っています。

就業規則は、ただ置いておく紙ではありません。

問題が起きた時に、

何を根拠に注意するのか。
何を根拠に記録するのか。
何を根拠に改善を求めるのか。
何を根拠に処分を検討するのか。

そのための防御壁です。

防御壁が現場に合っていなければ、いざという時に弱い。


AI時代、従業員側の知識は強くなる

昔は、労務の知識を持っている従業員はそこまで多くありませんでした。

しかし、今は違います。

スマホで調べられる。
SNSで事例が流れてくる。
YouTubeで労務トラブルの話が聞ける。
AIに聞けば、それなりの答えが返ってくる。

もちろん、AIの答えがすべて正しいわけではありません。

しかし、従業員側が、

「これはおかしいのではないか」
「これは労基に相談できるのではないか」
「これはパワハラではないか」
「これは不当解雇ではないか」
「これは会社都合で休ませているのではないか」

と考えるきっかけにはなります。

つまり、従業員側の知識は、これからどんどん強くなります。

これは止められません。

であるならば、オーナー側も変わらなければいけない。

従業員が知識を持つことに腹を立てても仕方がない。

大事なのは、こちら側もそれに耐えられるルールと記録を持つことです。

本部の就業規則を入れているだけ。
注意記録はない。
改善期限もない。
面談記録もない。
服務規律も現場に合っていない。
処分までの流れも曖昧。

これでは、かなり危ない。

AIで従業員側の知識が強くなる時代に、オーナー側だけが丸腰でいていいはずがありません。


「もう来なくていい」は、オーナーの自爆ボタンになることがある

コンビニの現場では、正直こう言いたくなる場面があります。

「もう来なくていい」

遅刻を繰り返す。
無断欠勤する。
勤務態度が悪い。
引き継ぎをしない。
注意しても改善しない。
お客様とトラブルを起こす。
店内ルールを守らない。

オーナーとしては、腹が立ちます。

他の従業員にも迷惑がかかる。
店長やリーダーも疲弊する。
シフトも崩れる。
店の空気も悪くなる。

だから、

「もう来なくていい」

と言いたくなる。

気持ちはものすごく分かります。

でも、この言葉は危険です。

こちらとしては、

「問題を起こしたから休ませている」
「本人が悪いから来させていない」
「店を守るために出勤させていない」

という感覚かもしれません。

しかし、従業員側が、

「私は出勤する意思があります」
「働きたいです」
「シフトに入るつもりです」

と意思表示した場合、話は変わります。

会社側がその出勤を拒むのであれば、単なる欠勤ではなく、会社側の都合で働かせていない状態と見られる可能性があります。

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、平均賃金の60%以上の休業手当が必要になる場合があります。

つまり、

「こっちは悪くない」
「向こうが問題を起こした」
「だから来させていないだけ」

では済まない可能性があるということです。

こちらに記録がない。
注意履歴がない。
改善期限がない。
面談記録がない。
就業規則上の根拠が弱い。

この状態で、相手から、

「私は働く意思がありました」
「会社が一方的に出勤を拒みました」

と言われた時、オーナー側に戦える武器がなければ、かなり厳しい。


犯罪をした疑いがあっても、簡単に出勤停止にできるとは限らない

ここは、特にコンビニオーナーが勘違いしやすいところです。

仮に、従業員が重大な問題を起こしたとします。

オーナーとしては、

「こんなことをした人間を店に入れられるか」
「当然、出勤停止だ」
「もう来なくていい」

と思うかもしれません。

気持ちは分かります。

しかし、たとえ重大な問題があったとしても、会社側が一方的に無給で出勤停止にするには、かなり慎重な手順が必要です。

出勤停止は、懲戒処分の一つになり得ます。

懲戒処分として出勤停止をするなら、

就業規則上の根拠があるか。
その行為がどの服務規律違反に当たるのか。
証拠や記録があるか。
本人に事情を確認したか。
弁明の機会を与えたか。
処分の重さが相当か。
他の従業員との公平性はあるか。
手続きが適正か。

こういう点が問われます。

「腹が立ったから」
「店に入れたくないから」
「たぶん悪いことをしたから」

これだけでは弱い。

正当な出勤停止処分として認められなければ、会社側が出勤を拒んだだけと見られ、休業手当や賃金請求の問題に発展する可能性があります。

だからこそ、就業規則と記録が必要なのです。


会社都合解雇は、その場だけの問題では終わらない

さらにもう一つ、オーナーが軽く見てはいけないことがあります。

それは、会社都合解雇の後遺症です。

労務トラブルが起きた時、オーナーはついこう考えます。

「もう辞めてもらったらいい」
「会社都合でもいいから切った方が早い」
「解雇予告手当を払えば終わるやろ」
「助成金なんか使ってないから関係ない」

でも、私はこの考え方もかなり危険だと思っています。

会社都合解雇は、その従業員との関係だけで終わるとは限りません。

解雇は、使用者がいつでも自由にできるものではありません。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、労働者をやめさせることはできません。また、勤務態度や規律違反がある場合でも、1回の失敗ですぐに解雇が認められるとは限らず、行為の内容、損害の重大性、故意性、事情などが考慮されます。

つまり、オーナーが、

「これは常識的にアウトやろ」

と思っていても、それだけでは足りない。

第三者に見せた時に、

「なるほど、この行為は就業規則上のこの条文に違反している」
「過去にも注意している」
「改善機会も与えている」
「本人にも確認している」
「それでも改善されなかった」
「だからこの処分は相当だ」

と説明できなければ弱いのです。


助成金は、もらう前に“失う条件”を潰しておく必要がある

そして今回、私が特に強く言いたいのがここです。

コンビニオーナーは、助成金という言葉を聞くと、

「何がもらえるのか」
「いくらもらえるのか」
「うちも対象になるのか」

という方向に目が行きがちです。

もちろん、それも大事です。

しかし私は、それ以前にもっと大事なことがあると思っています。

それは、

助成金は、もらいに行く前に、知らないうちに“もらえない状態”になっていることがある

ということです。

たとえば、従業員とのトラブルが起きた時に、オーナーが感情的に、

「もう来なくていい」
「辞めてもらうしかない」
「会社都合でもいいから切った方が早い」
「退職勧奨で終わらせたらいい」

と動いてしまう。

その時点では、目の前の問題が片付いたように見えるかもしれません。

しかし、その離職の扱いが、あとから雇用関係助成金の申請に影響する可能性があります。

厚生労働省は、一部の雇用関係助成金について、離職区分「1A」または「3A」とされる離職理由で辞めた人が一定数以上存在しないことを支給要件の一部にしていると説明しています。ここでいう1Aは「解雇等による離職」、3Aは「退職勧奨の他、事業縮小や賃金大幅低下等による正当理由自己都合離職等」を指します。

つまり、助成金を考えるなら、

「どうやったらもらえるか」

だけでは足りません。

普段の労務対応で、助成金の可能性を自分で潰していないか。

ここを見なければいけないのです。

私はここに、就業規則の価値があると思っています。

問題従業員が出た時に、いきなり感情で切るのではなく、

注意する。
記録する。
改善期限を切る。
面談する。
再指導する。
それでも改善しない場合に、就業規則に基づいて次の判断をする。

この階段があるかどうかで、後々の説明力が全く変わります。

助成金は、申請書だけで取るものではありません。

日々の雇用契約。
出勤簿。
賃金台帳。
シフト。
注意記録。
退職時の手続き。
離職理由。

そういうものが全部つながって、初めて判断されるものです。

だから、就業規則は助成金申請のためだけに作るものではありません。

しかし、助成金を活用したいなら、就業規則と運用記録は、かなり重要な土台になります。

私は今回の就業規則を、社労士の先生と一緒に作ってきました。

もちろん、この就業規則があれば助成金が必ず取れる、という話ではありません。

助成金は制度ごとに要件が違います。
年度ごとに内容も変わります。
最新の条件を社労士など専門家に確認する必要があります。

ただ、少なくとも私は、コンビニ加盟店がやりがちな、

「もう来なくていい」
「シフトから外す」
「辞めてもらう」
「会社都合でも仕方ない」

という雑な労務処理が、あとから助成金や雇用関係の制度利用に悪影響を及ぼす可能性を、もっと真剣に考えるべきだと思っています。

助成金を取りに行く前に、まず助成金を失う条件を潰しておく。

そのためにも、現場に合った就業規則と、記録を残す仕組みが必要なのです。


果たして、本部の就業規則はここまで想定しているのか

ここで、私は一つ問いを立てたいと思います。

果たして、本部から渡される標準的な就業規則は、ここまで加盟店の現場を想定して作られているのでしょうか。

遅刻を繰り返す従業員に対して、どの段階で口頭注意をし、どの段階で書面注意に移るのか。

「もう来なくていい」と言った場合、それが会社都合の休業や実質的な解雇と見られる可能性まで想定しているのか。

従業員側から、

「私は出勤したいです」

と意思表示された時に、オーナー側がどう対応すべきか。

出勤停止処分にするなら、どの条文を根拠にし、どの事実確認を行い、どの記録を残すべきか。

会社都合解雇や退職勧奨になった場合、助成金など将来の制度利用に影響する可能性まで、加盟店オーナーに伝わっているのか。

私は、ここが非常に危ういと思っています。

本部の就業規則は、最低限の形としては必要です。

しかし、加盟店の現場で本当に起こる労務トラブルは、もっと泥臭く、もっと複雑で、もっと具体的です。

レジ差異。
無断欠勤。
遅刻の常習化。
引き継ぎ不備。
虚偽報告。
SNS投稿。
退職時の引き継ぎ放棄。
制服や備品の未返却。
「聞いていない」「教えてもらっていない」という逃げ道。
そして、問題を起こした従業員がAIで知識を得て、労務上の主張をしてくる時代。

この現実に対して、標準的な就業規則だけで加盟店を守り切れるのか。

私は、かなり疑問を持っています。


就業規則は、標準仕様と現場防衛仕様では目的が違う

本部の就業規則は、チェーン全体に配るための標準仕様です。

一方で、私が社労士の先生と作ってきた就業規則は、25年間のコンビニ現場で実際に起きた問題をもとにした、現場防衛仕様です。

標準仕様と現場防衛仕様は、目的が違います。

本部標準の就業規則は、チェーン全体の最低限を整えるためのもの。

私が作ってきた就業規則は、現場で本当に起こるトラブルに対して、

どこで注意し、
どこで記録し、
どこで改善期限を切り、
どこで面談し、
どこから処分を検討するのか。
そして、助成金や将来の制度利用の可能性を潰さないために、どこを雑に処理してはいけないのか。

そこまで落とし込むためのものです。

だからこそ、加盟店オーナーは、

「本部のものがあるから大丈夫」

で止まってはいけない。

自分の店を守るためのルールを、自分の店の実態に合わせて持つべきなのです。


コンビニオーナーは、労務リスクを軽く考えすぎている

私は、コンビニオーナーは労務リスクを軽く考えすぎていると思います。

もちろん、全員ではありません。

しかし、現場感としてはかなり多い。

「そこまでする必要があるのか」
「うちは小さい店だから」
「そんな書類を作るほどではない」
「今まで何とかなってきた」
「面倒くさい」
「注意したら分かるやろ」

こういう言葉をよく聞きます。

でも私は、これはリスク判断ではなく、たちまちの面倒くささの言い訳ではないかと思っています。

労務トラブルは、起きてからでは遅い。

起きてから記録を作ることはできません。
起きてから就業規則を見直しても遅い。
起きてから「前にも注意していました」と言っても、記録がなければ弱い。

普段から残しているから、いざという時に守れるのです。

そして、助成金も同じです。

助成金を使いたくなってから整えるのでは遅いことがあります。

普段の労務対応で、すでに不利な状態を作ってしまっていることがある。

だから、平時に整えておく必要があるのです。


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