推しの野菜があります。
- 野菜をこんなに愛すとは思わなかった。
特に野菜好きでもない肉食の男が
この度、芽キャベツにハマってます。
今年に入って100個以上食べてる。
うますぎ。

と言いたくなる
芽キャベツとの出会い
出会いは7〜8年前。
たまに行く小料理屋にて。
そのお店は寡黙な紳士がひとりで切り盛りしていて、雰囲気が良くて何より味が抜群だ。メニューが毎日変わるし、和も洋もある。どこで修行してきたんだろう?実はすごい人なんじゃないかと勘繰ってしまう。
「食べたら無くなっちゃうから食べたくない」と意味不明なジレンマに陥るほど、あらゆるメニューが美味しい。
特に衝撃を受けたのが『季節の天ぷら盛り合わせ』だった。そこで僕は初めて芽キャベツと対面した。
つゆ、なし。塩だけでいただく。何なら塩さえつけなくていい。もう衣にちょうどいい塩の味がついてるから。あれ何の魔法??
「どうもこんにちは、春です」と言わんばかりの優しさ。噛んだ瞬間に衣の塩気が口の中にレッドカーペットを敷いて、そこを颯爽と芽キャベツが闊歩する。さながらシンプルな緑のドレスを着たヒロインは野菜本来の甘さを発揮して存在感を放つ。口の中で美味アカデミー賞が開催されて見事、芽キャベツが主演女優賞を獲った。
感想をもっとわかりやすく言うと
サクッ。
じゅわ。
甘っ…。
なんで?
うわ、うめー。
である。
頭に「?」が浮かぶほどの甘さ。
僕は一旦、上を向いて目を瞑った。
幸せを逃さないように。
目を開いて顔を元に戻す。
その後、一緒に食べてた友達と共に笑った。
食べ物が美味しすぎると人は笑うのである。
野菜で感動したのは初めてだった。
新しい世界を教えてくれた寡黙なマスターに感謝しかない。
月日が流れ、僕は引越しをして、店に行く機会が減ってしまった。しかも芽キャベツには旬があるから冬から春先の時期を逃したら会えない。さらに店のメニューは毎日変わる。現実的に考えてどうしても芽キャベツとの遭遇率は低くなってしまった。
それから芽キャベツに会わない日々が何年も続いた。大切なものがあったとしても、意外と忘れて生きていける。これが人生のシビアで趣深いところだと思う。
ある男のせいで思い出してしまった
芽キャベツのことを忘れて平穏に暮らしてた。
が、ある男によって思い出す羽目になる。
僕に芽キャベツを思い出させた男。
それが令和ロマン・高比良くるま氏である。
昨年末に放送された『M-1グランプリ2024アナザーストーリー』という番組の密着中にくるま氏がサラダを食べて
「芽キャベツうめー」
と噛みしめるように言うシーンがあった。
その言葉が僕の脳内を揺らした。
芽キャベツ?
芽キャベツ…
芽キャベツ。
芽キャベツ!!
芽キャベツ食べたい!!
忘れてた恋を思い出して体温が上がる。
そういえば最近食べてない!
久しぶりに食べたい!
感情先行で生きてる僕はあっという間に心も頭も支配された。一旦、芽キャベツへの想いを整理するために動画を止めたくらい。M-1も相当好きなはずなんだけど一瞬芽キャベツの支配力の方が上回った。
情報整理の結果、今後の方針が決まった。
小料理屋のメニューは当日の店先で見ないとわからないので、電車で1時間かけて行くのはリスクが高い。よって『スーパーで探して食べるのが1番早い』という結論に至る。
供給が少ない
芽キャベツを思い出してからたくさんのスーパーを巡った。
まず、最寄りのスーパーには置いてない。2番目に近いスーパーには少しだけ置いてあった。
何日もかけて家から徒歩で行けるスーパーと、職場近くのスーパー15軒ほど捜索。これを愛と呼ぶのか執念と呼ぶのか。このコイントスでは愛がオモテ面になることを祈る。
結果、置いてあったのは7軒。
半分以上は取り扱いがない。芽キャベツの冷遇に心が痛む。置いてたとしても売り場の隅っこというパターンもあったので相当アンテナを張ってないと見落とす。
旬が短くて、売り場も少ない。会いに行かないと会えないアイドル。それが芽キャベツ。
さらに取り扱ってる店舗だとしても夜に行くともう売り切れてたりするから怖い。昼前に行ってすでに残りラス3だったこともある。なんて供給が少ないんだ。
価格は多少バラつきはあれど一袋200〜400円。幸せの値段としては安いもんだ。

(自分の記録用に撮った写真がまさか役に立つとは)
調べたら出荷量の95%が静岡らしい。
静岡ならどこのスーパーにもあるのかな。
静岡羨ましい。
それは美味しい宝石
売ってるスーパーを完全に把握したので欲しいときに手に入れられるようになった。うふふ。
天ぷらスキルがないので、シンプルに焼く。
テンプレ通りに裏表。半分に切って焼くだけ。
ほら見て。宝石だよ。

そして仕上げに塩をちょいと振る。
素材の力があるからこれだけで十分。
かじった瞬間に
「ぎゅっ」
っていう。
これだ!
「芽キャベツ、うめー」
くるま氏と同じ言葉、同じ音程で唸った。
なんだろうこの自然な美味しさ。
やり過ぎない感じ。素朴だけど優しい。
消しゴム落としたらすぐに気付いて拾ってくれるあの娘くらい素朴で優しい。
葉が詰まりに詰まってるのがわかる。
この小さな宝石の中に甘みが凝縮されてる。
大きなパワーが圧縮されてこの中に渦巻いてる。きっとナルトの螺旋丸と同じシステムなんだと思うんですよ。
野菜の完全体。終着地点。
最高だ。大好きだ。
久しぶりの再会をしてからは何日かに1回買って、焼いてはもしゃ、焼いてはもしゃ、と食べている。
この間は料理に入れてみたくなって、芽キャベツのペペロンチーノをローンチした。「ペペロンチーノをローンチ」というシャレを言いたくなるほど舞い上がる自分。

にんにく味の汁が芽キャベツの隙間に染み入る。麺の邪魔はしないけれど存在感は発揮する。身の詰まった歯応えがいいアクセントとなり咀嚼にリズムを与えてくれる。
…個人競技が得意だと思ったら団体競技もいけるんですか!あなたは!
芽キャベツは偉大だった。
ますます好きになる一方だ。
でも。
実は悲しいお知らせがある。芽キャベツの収穫時期は12月〜3月頃らしい。
もうすぐ3月。
つまり芽キャベツとの別れの季節がすぐそこまで来てるということ。ただでさえ品薄だからいつ売り場から消えてもおかしくない。
待って。行かないで。
いなくならないで。
もっと一緒に遊んでいたいよ。
もっと口の中でダンスをしようよ。
なんだこれ。野菜に対してセンチメンタルな感情が生まれることを初めて知った。
「推しは推せる時に推せ」
今まで自分には関係ないと思ってた言葉が痛いほど身に染みる。今の僕には推しの野菜がある。
残されたこの季節をできるだけ味わいたい。
もう芽キャベツとの別れが近づいてます。
もしスーパーで見つけたら是非、買ってみてください。
野菜をこんなに愛すとは思わなかった。
優秀賞をいただいた後日談
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