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熊と共生できる社会の実現へ 獣害を未然に防ぐアプリを開発

2025年、福島を含め全国的に深刻な被害が発生したクマによる獣害。その獣害を解決し、熊との共生を目指そうとアプリ開発に取り組んでいるのが国際教養大学4年の服部悠大ゆうたさんです。

服部さんのアイデアは、福島県と福島イノベーション・コースト構想推進機構が企画するビジネスアイデアコンテスト「イノベのたまご2025」の若年層ビジネスアイデア部門で最優秀賞を受賞しました。これまでも社会課題の解決に挑戦してきた服部さんに、どのように課題を発見し、解決策を考えたのか、その過程も含めてお話を伺いました。



福島でも深刻な「獣害」

2025年は熊による様々な被害が深刻な年でした。福島県内でも市街地への出没や人的被害が相次ぎ、ニュースでも連日取り上げられました。また、これまで生息していなかったとされる浜通りの自治体でも、初の捕獲や初の確認というニュースが流れました。また福島では熊に限らず、イノシシやシカ、サルなどによって農作物が被害を受けるなど獣害(動物による人間生活への様々な被害)は課題となっています。

そんな獣害を防ぐためのアプリを開発しているのが、国際教養大学4年の服部悠大(ゆうた)さんです。服部さんは高校時代から社会課題の解決に興味を持ち、大学では学生が使う交通手段の改善のため、ライドシェアサービスの立ち上げに力を入れていました。

そんな服部さんが獣害を解決しようと思い立ったのは2024年のこと。留学中の服部さんの目に止まったのは秋田県で熊被害が増えているというニュースでした。人的被害が増え、秋田市中心部のスーパーの店内に熊が数日間居座ったことに衝撃を受けました。また、服部さんが通う大学付近は、熊が出没するスポットとして知られており、服部さん自身も何度か熊に遭遇した経験がありました。

自分自身の体験をもとにアプリを開発

ある日、服部さんが山の散歩をしていた時、100-150メートル前方の茂みから「ガサガサガサッ」という音が聞こえ、見てみると熊を発見しました 。体長がおおよそ1メートルから1.5メートル、小熊からちょうど大人になりかけたくらいの熊でした。

熊に遭遇した際の鉄則は、熊の正面に立ち、手を広げて体を大きく見せながら、ゆっくり後ずさりしていくことです。それは服部さんも耳にしたことがある対処法でした

しかし、実際に熊と対面した服部さんは、反射的に熊に背中を向け、全力で逃げ出してしまいました。近くの建物に逃げ込み、何の被害もなかったものの、熊に対処する時の鉄則は実際にはあまり意味がないことを身をもって感じました。

また、調べてみると、自分が住む秋田県内には熊被害防止のためのシステムが複数あることが分かりましたが、現行のシステムの不十分さも見えてきました。服部さんが通う大学には、熊が出没すると在学生に対してメールで通知するシステムが存在しますが、人が配信しているため出没から通知までに時間がかかってしまうこともありました。週末を挟んだ結果、「出没から数日後」に通知を受け取るということもありました。

現状の対策方法として、自治体が熊出没箇所をまとめたマップを公開していますが、WEBサイトのため住民がサイトを見に行かなければクマ出没情報が分からず、リアルタイムで通知がされないという課題がありました。

服部さんはそんなご自身の経験や調査から「クマに遭遇した時にどうするかではなく、遭遇しないためにどうするか、ということを実現しなければいけないと感じました」と話します。そこで服部さんは自ら大学の友人を集めて「BearBell」という団体を結成し、熊などの目撃情報を瞬時に共有し、ユーザーの危機回避行動を促すアプリ「クマップ」の開発を行ってきました。

福島の獣害を解決しようと思った理由

これまでは大学のある秋田県で開発を進めてきましたが、今回、「イノベのたまご」への応募を考えたのは福島で熊による被害が増え、浜通りなど、これまで生息していないといわれていた場所での熊の出没を知ったからでした。

福島県は面積が広く、県土の面積の多くは森林です。服部さんは、広大な面積の福島では熊の行動を人間が感知しきれず、潜在的な脅威が隠れているのではないかと考えています。また、熊はもちろん、それよりも被害額が大きいイノシシによる農作物被害も課題と捉えており、福島の様々な獣害を解決できるサービスを実証したいと考えています。

服部さんは「獣害」を「1次被害」と「2次被害」に分けて考えています。「1次被害」とは農作物が動物に食べられてしまったり、人が襲われてしまったりすること。「2次被害」とは、動物の出没や1次被害を感知しているにもかかわらず、同一の個体が別の被害を引き起こしてしまうことです。服部さんは特に「2次被害」を防ぐことが重要で、そのためには1次被害の情報や出没の情報を周囲の人たちに伝え、危機を回避する行動を促すことが必要だと考えています。

服部さんが開発を進めるアプリ「クマップ」は、自治体等が収集した熊などの出没情報をリアルタイムでアプリ内の地図に表示し、周辺のユーザーへすぐに警告を送る仕組みや、AIを活用し、熊などの出没予測機能の開発を進めています。ユーザーが「SNS」のように目撃情報を投稿できるような機能も考えています。

服部さんは「熊の被害はもともと秋田で深刻でしたが、2025年は被害が生じている地域がどんどん南下していると感じます。福島で実証を進めてそこから全国へ広めたいと考えています」と話します。

「身近な社会課題」を解決し続ける

服部さんは東京の高校に通っていた高校時代、社会課題とその解決に興味を持っていました。高校2年生の時には、インドネシアのコーヒー豆を仕入れてイベントで販売し、利益を生産者に還元するというフェアトレード活動をしました。

また、同じ高校生にも社会課題を考える機会を持ってほしいと考えるようになり、社会課題について考える授業を高校の中で企画し、政治家に向けた政策提言を行いました。

大学からは東北地方に舞台を移し、交通や獣害などの課題解決に奔走しています。新しく団体を立ち上げた経験を何度も持ち、0から1を創ることを得意とする服部さん。「これからも時代が進むにつれて、様々な社会課題が生まれていくと思います。自分なりの解決策を社会で実現できるそういったチャレンジし続けるキャリアでありたいです」と話しました。