本と図書館の場を生かし、若者がやりたいことを実現する
白河市立図書館「りぶらん」は、JR白河駅のそばにあり、大人から子どもまで多世代が集う場として地域の方々に親しまれています。館長の中沢孝之さんは、中高生向けの本を充実させるだけではなく、地域の高校生の探究活動を応援してきました。
「図書館を地域の若者にとっていつでも戻れる場所にしたい」と語る中沢さんは図書館をどのような場所にしているのか。本や図書館をどのように探究活動に生かしていくとよいかを含めて、お話を伺いました。

駅前にある、開かれた図書館
白河市立図書館(りぶらん)は、2011年に新しく開館した図書館です。蔵書数は32万冊。大人向けの本から新聞、雑誌、DVD、子供向けの絵本まで数多くの本を取り揃えており、毎日多くの方が訪れます。平日が600人から800人。土日祝日は1000人以上の方が訪れる、白河市の中では人気の施設です。
図書館の窓からはお城を望むことができ、桜や紅葉、四季の風景を楽しむことができます。また、JR白河駅からは歩いて5分ほどの場所にあり、図書館のすぐ横を鉄道が通ります。平日の夕方になると、電車待ちの高校生が勉強場所としてよく利用しています。1階にはカフェがあり、図書館のすぐ横は芝生広場になっているので開放感を味わえます。
白河市立図書館は小さな子どもから高齢者まで、色々な年代の方に利用されています。中沢館長は「その方々に次も来よう、もっといろんなものを見つけよう、と思っていただけるようにしたい」と話します。

そのためにも図書館で働く司書の一番の仕事は、「調べたい、読みたい、わかりたい」という思いを伺って、的確に資料を提供していくことと考え、仮に資料が見つからないときは他の図書館に本がないかを調べ、取り寄せています。利用者の思いに応えることで、利用者が図書館でお気に入りの本を見つけたり、生きていくためのヒントを考えたり、「何か」を持って帰られるような場所にしようと、様々な工夫をしています。

高校生向けの本も充実
色々な年代に利用されている白河市立図書館。もちろん高校生向けの書籍も充実しています。中高生に向けた本を集めたティーンズコーナーには、小説や仕事に関する本だけではなく、参考書や「赤本」のような問題集、さらには漫画・コミックも約2万冊あります。ティーンズコーナーのすぐ横にはテラスがあり、屋外で本を読むこともできます。また、10代向けのフリーペーパー「SASUKENE」(さすけね)を発行し、おすすめの本を紹介しています。
探究を進めるうえでの図書館の利用法
地域のことを探究している高校生にとっても、図書館はよい情報を集められる場です。その地域のことをまとめた郷土資料や昔の地図、写真を見ることができます。白河市立図書館では「白河市に関する資料」として、「白河市の歴史」や「白河市の行政」さらには名物の「だるま」、「ラーメン」についての資料など多岐にわたって紹介されています。
スマートフォンを開けばなんでもすぐに調べることができる現代。その中で中沢さんは「本を使ってよりみちしながら、自分の調べたいことに行きつくことも大切」と話します。何か1冊本を見つけたら、その隣にはもっといい本があるかもしれない。自分が探している本が見つかるかもしれない。「あっちに行ったりこっちに行ったりすることでいい本とのいい出会いがある」とすすめます。
また、中沢さんは図書館で働いている本の専門家、司書にいろいろなことを聞いてほしいと話します。その時に大切にしてほしいのが、「自分が調べている内容についてできるだけ具体的に伝える」ということ。
「自分はこんなテーマの本を探してるんだけど、この図書館にもありますか?ということを伝えてもらうことで、司書が力になってくれる。本だけでなく、調べたいことについて詳しい人を紹介してくれるかもしれません」と話します。

「何かやりたい」高校生の背中を押す
中沢館長自身も探究活動のために図書館を訪れる高校生の背中を押してきました。特に印象的だったのが、2022年の夏、「図書館の図面を見せてほしい」と館長に依頼した高校生4人組。聞くとJR白河駅から図書館までの鉄道ジオラマを作りたいので、制作のために図面がほしい、という話でした。
「いいよ、ジオラマができたら持ってきて。図書館に飾ればいいよ」
そう快諾した中沢さん。そして3ケ月ほどたったある日、高校生が持ってきたジオラマの大きさは中沢さんの予想をはるかに上回るものでした。縦1.5メートル、横3メートルの大きさで、白河駅から図書館前のエリアが忠実に再現されています。また線路を様々な鉄道模型(Nゲージ)が走り、まるで現実の世界のようでした。

中沢さんは「せっかくいいものを作ってもらったんだから、皆さんが集まれる場所に置いて、見てもらおう」と多くの人が行きかう1階の入り口の横で展示することを快諾。子どもから高齢者の方まで数多くの方が訪れる図書館だからこそ、連日多くの方がジオラマを見に図書館に足を運びました。鉄道模型が走る様子を見る子どもたち。そしてジオラマのことを見ながら、「ここは昔こうだった」ということを語る大人たち。ジオラマを取り巻く利用者の間では自然と交流が生まれていました。
さらに中沢さんは報道機関にもジオラマを制作した高校生のことを紹介し、ニュースに取り上げられました。中沢さんは活動の成果報告会を図書館で開いてもらうよう高校生たちに打診し、大人が50~60人くらい集まるなど、図書館のサポートにより活動が広がっていきました。
中沢さんはそれ以外にも多くの高校生の探究活動を支援してきました。ファッションショーや書道の展示。白河名物のだるまの展示。中沢さんは「私たちは場所や環境を提供するだけで、そのためには高校生のやりたい思いが大事。こういうことをやりたいということを言ってくれれば、支援をするし、背中も押します」と話します。

若い世代が「いつでも戻れる場」に
大学がない白河市。高校を卒業すると地元を離れて市外に進学・就職していく高校生もいます。中沢館長は白河を離れる人たちにとって図書館を「いつでも戻れる場所」にしたい考えています。だからこそ高校生や若い世代の背中を押し、若い世代の挑戦を応援する場であることを目指しています。
中沢館長にとってうれしいのが、図書館を訪れる子どもたちや若い世代と話すこと。年末年始の休館前、顔なじみになった高校生から「明日から休みで図書館利用できないんですよね」と話しかけられることもあり、こんなふとした一言がうれしいと語ります。
「司書の仕事は、本が好きであることはもちろん、人が好きじゃないと務まらないんですよ」中沢館長はそう言って、図書館を訪れる方々に笑顔で声をかけていきました。

◆白河市立図書館「りぶらんサーチ」
白河市立図書館の「りぶらんサーチ」では、白河市立図書館だけではなく福島県内の図書館の蔵書も調べられるようになっています。調べたい本があればぜひ調べてみよう。
