テクノ反復横跳び
テクノが流れる音箱に
たくさんの人が集まって
思い思いに踊っていて
そのなかで
彼女は一人とんとんと
反復横跳びをしている
タンクトップに
半袖のシャツを羽織った
ポニーテールの
健康的な反復横跳びである
僕はつい
なぜ反復横跳びをしているのと尋ねる
音が大きくて聞こえないのか
はたまた
無視をされているだけなのか
彼女は一心不乱に跳ぶ
もう一度声をかけてみるが
それでもやっぱりだめだった
彼女の反復横跳びはとても早い
言ってみれば
BPM130の反復横跳びである
僕は神への供物みたいに
手元にあった新品の
テキーラ・サンライズを差し出すと
彼女はそれを何も言わずに受け取った
揺れる
彼女のポニーテールと
揺れる
液面の周波数が一致する
いつか
僕もそれになりたいと
思ったときには跳んでいて
僕らはしばらく跳んでいた
あと3往復するまでに
きっと僕らは同期する
メトロノームみたいに重心を下げて
僕はもっと早くなるのだ
あと3回
あと2回
あと1回
そのとき!
東の地平から太陽が顔を出し
街の凹凸は西へと影を伸ばし
その隙間を縫うように
始発電車が駆け抜ける
永遠に続くと思ったダンスは
パーティーの終わりと共に終わり
クラブの外の喫煙所
永遠と書いて"とわ"と読みたい派の僕と
どっちでもいい派の彼女に分かれて
熱い議論が行われた
聞けば彼女はOLで
夜はクラブのDJで
昼と夜の境目を
地上と地下の境目を
本音と建前の境目を
校庭に引いた白線みたいに
跳び越えてきたという
「フロー入ると気持ちいいよね」
という彼女の瞳はぐるぐるしている
心に小さなテロリストを
飼っている人の瞳をしている
「風呂?」
と聞き返す僕を見て
彼女は笑い
揺れるポニーテール
細まった目からこぼれた宇宙は
寄生するみたいに僕の目に流れ込む
瞳の宇宙は伝染する
