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W杯の決勝を前に思い出すのは、1994年アメリカ大会。ロベルト・バッジョの姿。

あと数時間でワールドカップの決勝戦です。
今朝の3位決定戦も、最後まで見応えたっぷりでしたね! 大きくリードしても攻めの姿勢を崩さないイングランドもすごかったけれど、後半早々のフランス。エムバペの反撃も、強烈な印象を残しました。
終わったあと、両国の選手が称え合う姿もすがすがしかったです。
ミック・ジャガー、今日は来てなかったのかな。すごく喜んだでしょうに。

決勝のカードもわくわくドキドキ。私は、2010年大会のスペイン優勝メンバーがものすごく好きだったので、16年ぶりの優勝を飾ってほしいけれど、メッシ率いるアルゼンチンの連覇も、実現したらすごいですよね。

メッシが初めてW杯に出場した時は、長髪をなびかせた可愛い少年でしたが、四年前には、おじさんになっちゃったなって(失礼!)思いました。
でも、今のメッシは、風格が漂う中にも、若い頃のようにはつらつとして、笑顔が輝いています。

スペインとの対戦というのも不思議な縁。
子どものころ、低身長症状と診断された彼に、救いの手を差し伸べたのは、スペインのFCバルセロナの下部組織。高額な治療費を負担して、身長だけでなく、サッカーの才能もぐんぐんと伸ばしました。
そのメッシが、ユニセフのカレンダーの撮影で、抽選で選ばれた赤ちゃんのヤマルを沐浴させていたなんて!
20歳のメッシも若いけど、ヤマルは生後半年ほど。目がぱっちりとした可愛い赤ちゃん。その2人が決勝で相まみえることになるとは、サッカーの神様は茶目っ気たっぷりですね。

前回のアメリカ大会にまつわる悲劇は、忘れることができません。
1993年。Jリーグが開幕した年。
アジア最終予選の舞台はドーハ。ワールドカップ初出場はまさに目の前でした。後半のアディショナルタイムに、イラクが引き分けのゴールを決めて、夢が絶たれるその瞬間までは⋯。
ピッチに倒れて空を仰いだり、座って膝を抱えて泣いていた選手たち。その中に、森保監督もいたのですよね。
日本がここまで強くなったのは、あのドーハの悲劇があったからこそだと思います。そこから努力を積み重ねてきた年月と、つないできたバトン。
今回の日本代表の活躍を思うと、本当に感無量です。

そして、日本が出られなかったその1994年アメリカ大会。私は、イタリアのロベルト・バッジョの華麗なドリブルや洗練されたシュートにすっかり魅せられてしまいました。
イタリアの至宝と呼ばれたファンタジスタは、それはそれはかっこよかったです。ポニーテールの黒髪をなびかせ、瞳は空のように澄んだ水色。
決勝トーナメントでは5得点でチームを決勝へと導いた立役者。
背番号10。エースにしか与えられない番号。
前年には、FIFAの年間最優秀選手バロンドール(その後、メッシとC・ロナウドが長く2人で競うことになった、あの賞です)を受賞しています。

決勝の対戦相手はブラジル。
当日、私は岐阜の実家にいたのですが、月曜日の未明で、両親を起こさないように、小さな音で、ブラウン管(!!)のテレビの前にかじりついていたのをよく覚えています。

試合は0対0のまま、延長戦でも決着がつかず、ワールドカップの決勝戦としては初のPK戦に突入。
そのころには、日本は夜明けを迎えていました。外はもう明るかったです。
息が詰まるようなPK戦が始まりました。
イタリアが2人外し、ブラジルは1人しか外していない状況で、イタリアの5人目、最後のキッカーはロベルト・バッジョ。絶対に外せません。
当時、彼は満身創痍だったといいます。それでも、その場に立ちました。

結果はご存じの通り、彼の蹴ったボールは、高く浮き上がって大きく枠を外れます。めったにPKを外さないバッジョの、ここ一番でのまさかの失敗⋯。
その瞬間、黄色いユニフォームのカナリア軍団と、サポータがうわーっと歓声を上げて飛び上がり、歓喜の渦が沸き起こりました。
会場の上は青空。
その空の下で、ポニーテールの天才は、ただ呆然と立ち尽くしていました。誰も駆け寄らず、誰にも駆け寄らず。泣くことも、くずおれることも、叫ぶこともせず、じっとたたずんでいる、ひとりのアスリート。
哀愁漂うとか、悲劇のヒーローとか、そんな言葉では生やさしすぎる、あまりにも残酷な現実。私も、呆然と、その姿を見つめていました。信じられませんでした。
サッカーの神様は意地悪です。

そのバッジョの姿は、今も脳裏に焼き付いています。
今回がアメリカ大会ということで、始まる前からたびたび思い出したし、決勝の前となると、なおのこと。

あのときのバッジョは、いったいどんな思いだったのか、それは、彼にしかわからないでしょう。

ミラノ・コルティナオリンピックのとき、そのバッジョが、NHKの番組のインタビューにサプライズで現れました。
黒かった髪こそ、ロマンスグレーになったものの、相変わらずポニーテールで、目が空のように澄んだきれいな水色で、相変わらず紳士で、なんだか妙にほっとして、うれしくなりました。
それにしても、あの悲劇を乗り越えるのに、どれほどの精神力が必要だったでしょう。並大抵のものではないはずです。やっぱり、すごい。ポニーテールのファンタジスタ。心から尊敬します。

今回のアメリカ大会の決勝戦は、どうかPK戦になりませんように!
そう切に願いつつ、両チームの健闘を祈っています!





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