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『意味よさらば』オンライン販売のおしらせ。

自己紹介って得意ですか?

ぼくはあまり得意ではありません。ほら、はじめましての人たちが大勢いる会議とか飲み会とか決起集会とかの場で「それでは端から順番に、自己紹介をしていきましょうか」みたいな流れになること、あるじゃないですか。あそこでなにを言えばいいのかわかんないんですよね。

たとえばこれが大谷翔平さんだった場合、「大谷翔平です。よろしく」で十分です。なんなら「おお〜」と声があがり、自然な拍手も起きるでしょう。あるいは発起人となった誰かが「発起人の牧秀悟です。本日はみなさんとの親睦を深めるべく、この会を設けさせていただきました。これから一カ月、どうぞよろしくお願いします」みたいに言うのもオッケーでしょう。

でもね、大谷翔平でも幹事でもプロジェクトリーダーでもない自分が、どれくらいの情報量で、どんな自己紹介をするべきなのか。どこまでの自己開示が求められているのか。かなりむずかしい問題だと思うんです。

いきなり中年トークになりますが、自己紹介と聞いてぼくがいつも思い出すのは、倉沢敦美さん1984年のデビュー曲『プロフィール』です。これ、どういう歌かというと、歌詞のなかで

1967年 4月生まれ いま16歳 ♪

『プロフィール』作詞・売野雅勇/作曲・井上大輔

と文字どおりに自己紹介をはじめる、個人情報ダダ漏れの歌なんですね。しかも「個人の宣伝につながる」としてNHKで放送禁止になったというオマケのついた。けれども一方、とくにファンでもなかったぼくでさえ、いまだに倉沢敦美さんの生年月を諳んじることができる事実は、歌謡曲おそるべしの証左と言えるでしょう。

これに対して「本を書けば、それが名刺代わりになる。自己紹介につながる」という考え方もあります。

たしかに「わたしはこういう本を出版している者です」というのは、一定の名刺になりうるでしょう。むかしほどではないにせよ「怪しい者ではございません」の証として、自著が果たす役割はいまもあるように思います。ぼくの場合も、たとえば『嫌われる勇気』という本は、なにかしらの名刺になっている気がします。

でも、『嫌われる勇気』や『さみしい夜にはペンを持て』が(名刺ではなく)自己紹介になりうるかというと、ちょっと違う気もする。あそこに「自分」がいるのはたしかなんだけれど、もっと自分は人間くさくて情けない男であるし、あのままで「わたしはこういう者です」とは言えない気がする。


というわけで、前置きが長くなりました。

本日からバリューブックスさんで、初エッセイ集『意味よさらば』の販売がはじまります。昨秋の文学フリマ東京のためにつくった私家版です。

今回あらためて読みかえしてみたのですが、なるほどこれは自己紹介の本だよなぁ、と思ったんですよ。ぼくが、ここにいる。ぼく以外の話は、ひとつもない。ぼくという人間のだいたいのところは、ここからわかる。

全30本、スケジュールを言い訳にまったく気負うことなく、焚き火を囲んでおしゃべりするように書き下ろしていった本です。読んでくださった方から「あなたって、こんなに○○な人だったんですね」とあきれられたら、頭を掻きながら「みたいですね」と答えることでしょう。

仮フランス装の176ページ(スピン付き)。装幀はプリグラフィックスの清水肇さんで、かわいい装画はながしまひろみさん。数年来の夢だった「ぺだるが表紙の本」でもあります。

また、この本に関連してバリューブックスの内沼晋太郎さん、弊社の田中裕子さん(そう、彼女の『書きたいことはないのですが』も一緒に販売されます)とポッドキャスト番組「本の惑星」でおしゃべりしました。こちらもどうぞお聴きください。在庫はすべてバリューブックスさんにお渡しすることにいたしました。


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