全編これ泰西名画?フェリーニの『カサノヴァ』
うっかりヒース・レジャー演ずるところの『カサノヴァ』と間違えて見ちゃったら、え❓❓となること必至だ。
ヒースの『カサノヴァ』は見ていないが、写真を見ると笑顔がかわいいイケメンのカサノヴァ。

対するフェデリコ・フェリー二監督のカサノヴァはドナルド・サザーランドがカサノヴァの肖像画を元に鷲鼻付けて演っている。
額部の髪を頭頂部まで剃り上げたカサノヴァ。

そして、ストーリーはない。🈚️
カサノヴァが遺した「我が生涯の物語」を下敷きに、ヴェネツィア共和国に生まれ、ヨーロッパのあちこちの宮廷、貴族の館を転々とした性豪の女性遍歴を延々と描く。
ストーリーが無い2時間30分を何故呆けたように見てしまうのか?
ニーノ・ロータの寂しげな音楽に伴われた絵巻物があまりに美しいから?
ヴェネツィアに行って、スマホで写真を撮る。
どこを切り取っても絵になってしまうのがヴェネツィア。

フェリーニのカサノヴァは、まさにヴェネツィア。
どの場面も絵になる。
映画の最初のシーンはヴェネツィアのカーニバル。
海の水もセットだ。
よーく見ると、アラ?ビニール?

映画の大部分、カサノヴァは女性に言い寄ったり女性とイタしたりしている。
登場する女性たちは、美しいのか美しくないのかわからない。癖のある容貌ばかり。
いや、女も男も、「この人たち皆んな、一体どっから連れてきたんだ⁉️」というような、不思議に濃い俳優ばかり。
所謂フツウが居ない。


彼を満足させたらご褒美があるわよ〜
この尼さんとは、彼女のパトロンが穴から覗いている前で、性技を尽くして(すごく体力要りそうな)セックスパフォーマンスを繰り広げる。
最後は、ゼーゼーしながら鬼のような腕立て伏せ。
コレも、有力者に取り立ててもらいたいがためのカサノヴァの就活なわけだ。

セックスシーンでは、このバタバタがチアリーダー的役割を果たしている。
織り物工房ではこのマダムと相引きする。

マダムはプンプン怒りながらカサノヴァに言う。
「アイツがまた来たの!」
「厚かましくて恥知らずなんだから!」
「遠ざけたのにまた寄ってきたの!」
「教会でもしつこく付きまとって、私の心を神様から遠ざけるの!」
カサノヴァは、悪い奴だ、じゃあ、お仕置きしてやらねば、とムチを取り出す。
「容赦なくやって!」とドレスをたくし上げ裸のお尻を出すマダム。
アイツ、とはどうやら彼女に取り憑いた肉体の悪魔らしい。
「ああ、出来ない…私はお尻を愛しすぎている…」とお尻に縋り付くカサノヴァ。
この辺、コメディですね。

この娘は、いつも血の気がない。
貧血で倒れる度、医者が来て瀉血するもんだから、ますます血が失くなってしまう。

貧血で倒れた娘を引っさらってイタしてしまうカサノヴァ。
ことが済んだあと、別人のように頬を染めゴンドラに乗る娘が映る。😑
侯爵デュボア邸


愛とは相手の身体を貪り尽くしたいという欲求だ、というのがテーマ?
いや、全く頭に入ってこない…昆虫に扮した二人の絡みがアレすぎて。
では、衣装デザイン部門でアカデミー賞を受賞したお洋服をいくつか見て見ましょう。



ロココスタイルですかね。
そして、この映画をつい何回も見てしまう大きな要素は、懐かしいような不安にさせるような絵図。

ゼンマイ仕掛けの金の鳥がパタパタ羽ばたく影が映っている。



ああ、挙げ出せばキリがないけれど、こういった場面を見るたびに胸の奥がキュッとする。
色?暗さ?
特に壁の色と塗り方。
私の心の原風景にドンピシャとマッチしてしまっているのか?
こうしてカサノヴァの女性遍歴が延々と満艦飾で描かれる。
ドレスデンのオペラ終演後、長年会っていなかった母親に遭遇するシーン。
シャンデリアが降ろされ、木製の巨大うちわでロウソクの火が消される。

足の悪い母親を迎えの馬車までオンブして運ぶだけの短い邂逅。

カサノヴァは礼儀を崩さないが、母親は辛辣である。
家族的な愛が欠けていたことを思わせるシーン。
この辺りから、最後に向けて画面はどんどん暗くなっていく。
数少ない明るい色は、自動人形のドレスのピンク。

そして、カサノヴァはこの自動人形とも情を通じてしまうのだった。😳

晩年、身を寄せていたボヘミアの暗い城では、城中の者たちに馬鹿にされ、揶揄われ、楽しいとは言えない生活を送っている。


夢の中で、彼はヴェネツィアに居る。
凍りついた運河の氷の上を女たちが逃げていく。
黄金の馬車から手を振るのは教皇と母親だ。
彼は自動人形とゆっくり踊る。
回転する彼の顔に光が当たる。
その顔は若々しく輝いている。
