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この音楽小説が凄い!大滝瓶太『口笛吹きと音楽の犬』

本記事は、「音楽モノの専門作家」をめざす不肖ふるたが、古今東西の素晴らしい音楽小説を称えるシリーズです。きちんとした書評ではございませんが、ゆるりとお付き合いくださいませ。
今回は、大滝瓶太さん著『口笛吹きと音楽の犬』(小学館 2026)

あらゆる楽器を操る作曲家志望の秋と、口笛で世界を切り開こうとする春菜。芸大キャンパスで出会ったふたりが挑むのは、世界口笛コンクールーー誰もが知っているのに、超マイナーな楽器の国際大会だ。クラシックからJ-POP、さらには映画音楽にボカロまで、ジャンルを横断した音楽がそこでは奏でられる。
〈きみにこの楽器を少しだけでも信じさせてあげる〉。春菜の言葉に導かれ、音楽家としての覚悟を決めようとする秋。しかし野望を秘めた前回大会覇者の登場で物語は思わぬ方角へ……

小学館『口笛吹きと音楽の犬』紹介ページより

音楽の描写

まず、これほど音が直截的に立ち上がってくる音楽小説がありましょうか。香気、ウィット、佇まい、すべて一級品。安易な比喩に逃げず、音楽史の俯瞰と理論の構築によって、音そのものが明晰に聞こえてきます。

ストーリーライン

口笛コンクールに臨む前半パートだけでも充分おもしろいのですが、後半はなんと主人公が口笛の新曲を創る展開。
過去に生きた作曲家から今を生きる作曲家へ、今を生きる作曲家から演奏家へと、音を介して縦軸・横軸が美しくつながります。

問い

「その音は音楽か否か」「たったひとりの為に創られた音楽とは」「作曲とは教え・教われるものなのか」など、さまざまに音楽を考察するその切り口があざやかで、問いが鋭角です。
読みながら、これまでの音楽経験を総動員して大いに考え、音・音楽についての認識をアップデート出来ました。

総じて、こころよく頭を使う読書でした。素晴らしい読書体験をありがとうございました。

曲目は本書に登場する楽曲、ピアソラ『タンゴの歴史 娼家1900』

本屋B&Bで開催された刊行記念イベントも楽しかったです。
口笛を深掘りするクロストーク他、なんと大滝瓶太さん(ギター)と青柳呂武さん(口笛)のコラボ演奏も。また本書を読み返したくなりました。

『この音楽小説が凄い!』シリーズ、今後もゆるりと続けてまいります。
大江健三郎の『「雨の木」を聴く女たち』、リチャード・パワーズの『オルフェオ』などなど、音楽をとおして世界文学の様相が新たな角度から見えると良いなと思います。


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