【短編小説】トライアングル
同窓会からの帰り、自転車を漕ぐ山村の背中に私は額を預けた。
山村の背中は広くて温かくて、懐かしい匂いがする。
「大丈夫か?」
山村の声が風に乗って聞こえて来る。
「大丈夫ー。」
山村に届くように、叫ぶ。
「高校生に戻ったみたいやな。」
その言葉に胸がいっぱいになった。
「ずっと言えへんかってんけど、言っていい?」
「何を?」
「山村のこと、ずっと好きやったー。」
酔ったフリで、目一杯元気な声で言った。
「知ってた。」
「えっ?」
山村は私の気持ちを知らないと思っていた。
「俺もお前のこと好きやったー。」
山村は私より大きな声で叫んだ。
なんの冗談?
山村は高2の夏からミドリと付き合い、28歳で結婚した。
ミドリは2次会には出ずに帰って行った。
「コンビニ、寄ろっか。」
山村の優しい声が聞こえてきた。
コンビニの灯りが眩しかった。
山村に顔を見られるのが嫌で、私は外で待っていた。
山村はレジ袋をカゴに入れると、自転車を押して歩き出した。
私は後ろをついて行く。
山村の背中にギュッと抱きつきたかった。
山村の背中を思いっきり殴ってやりたかった。
切なさと怒りが入り混じり、ぐちゃぐちゃになった胸の中。
公園のベンチに並んで座ると、山村はレジ袋からパック入りの林檎ジュースを取り出し、私に差し出した。
これ…
私が放課後に毎日飲んでたやつ。
なんで覚えてんの?
気付けば頬に涙が伝っていた。
「ずるいわ。」
「ごめん。」
「俺、本当はお前の事が好きやってん。でもミドリに告白されて、ミドリと付き合ったらお前とも仲良くなれるかなって。」
「いつ知ったん?私が好きやって。」
「卒業式の日。ミドリに聞いた。」
「その時にミドリと別れたらよかったやん。」
「別れたら死ぬって言われて出来ひんかった。」
でも結局、山村はミドリを選んだ。
ミドリは家で山村を待っている。
見上げると夏の大三角形が見えた。
この林檎ジュースを飲んだら帰ろう。
この恋の残り火は、林檎ジュースと一緒に飲み干した。

あとがき
学生時代の恋は何かもどかしい。
素直に表せない気持ち。
好きだからこそ、とってしまう好きとは真逆の行動。
そうして掛け違えたボタンはそのまま戻されることはない。
ミドリは山村と私の気持ちを知ってて先に帰ったのだろうか。
微妙なバランスで繋がる3人と、空に浮かぶ夏の大三角形。
でもいつだって、強かな女が最後に勝つ。
初めて小説っぽいものを書いてみた。
ちゃんとそれらしくなっているのか。
自分で自分の文章を客観的に判断するのって難しい。
詩を初めて書いたのも秋さんの企画。
小説を初めて書いたのも秋さんの企画。
秋さんに感謝です。
秋さん、宜しくお願い致します。
藤家秋さんのこちらの企画に参加しています。
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