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又吉直樹を唸らせろ! すてきな女むてきな女19

「又吉直樹を唸らせろ!レビューコンテスト実施中」
送られてきた写真の左端には、その文字ともにQRコードが印刷されていた。



「パパがこんなんあるよって。むくみちゃん書いてみたら? 私は又吉の小説は多分読まない笑」

なっちゃんから写真とQRコードのリンク先のアドレス、そしてメッセージが送られてきた。
私たちの又吉好きは なっちゃんのパパにまで浸透していて、新聞記事を見つけたなっちゃんパパが、わざわざ切り抜いてくれていた。ありがたい。

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1月28日、なっちゃんと私の好きな又吉が10年ぶりに長編小説「生きとるわ」を出版した。
又吉のことを好きと言いながら、又吉の小説は読まないなっちゃん。
又吉のことを好きと言いながら、発売日に本を購入していない私。
それでも、ふたりとも又吉のことが好きなのだ。

なっちゃんは又吉のエッセイを読んで、又吉に会いたくて某出版社に就職した経験があるほど、又吉のことが好きだ。でも彼が書く小説はあまり合わないらしい。

私は又吉のことが好きなのに、又吉のYouTubeはほとんど見たことがない。
なぜか見ようと思わない。
今更 又吉のYouTubeを見てしまったら、負けたような気がする。何に対して負けたと思うのかは自分でもよく分からない。
又吉にはずっとアナログでいて欲しい、と言う願望が、私の中にあるのかもしれない。おそらく、それは食わず嫌いようなものなのだろう。

なっちゃんが又吉の小説を読まないのと、私が又吉のYouTubeを見ないのは、違う理由だけれど、なっちゃんの気持ちはなんとなく分かる気がする。

好きな人の、全てを好きになるわけではない。
好きな部分もあるけれど、そこは合わないとか、ここは賛同できないとか、そう言うことって多々ある。
合わない部分があるから即嫌いとか、そう言うことではない。
職場や世間一般では、考えが違うとか意見が合わない=敵とか嫌いとか悪い人、 みたいに考えたり思う人が多い気がする。
そう言うことではないのにな、と思う。

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なっちゃんはいつも、私の「読書感想文の視点がいい」と褒めてくれる。だから私は調子に乗って、なっちゃんの勧めに従い、『生きとるわ』レビューコンテストに応募することにした。
コンテストの締切は2月23日、発表は3月末。

近所の本屋さんに駆け込み『生きとるわ』を購入すると、早速読みはじめた。読むのが遅い私は、週末を費やし2日間かけて読んだ。

又吉先生らしい、主人公の歪曲した思考に、途中イライラとしながらも、グッと引き込まれ、嫌いな主人公の事が心配になったり、複雑な感情に翻弄される。

付箋のついた『生きとるわ』を見つめながら、この気持ちを1,000字でどう表せばいいのだろう、と呆然とする。伝えたいことはあるのに、それは影みたいに、輪郭だけが浮かんでいるようだった。

結局、思ったようにまとめることができず、4つの感想文が出来上がった。でも、ひとつとして納得できるものはない。
書けたら読ませて、と 言ってくれていたなっちゃんに、恥ずかしいけどデータを共有し、4作とも応募した。

3月末、特設サイトを見てみたが、何の更新もされていなかった。

4月19日 用事があり、地元に帰る。
夕方、なっちゃんとハセショで待ち合わせをして、漏水被害後のハセショの状況偵察とお見舞い、そしてネンさんとラジオマガジンのしおり発送について相談する。
その後はいつものファミレスに移動した。

席に着くとなっちゃんが
「又吉のあれ、どうなった?」
と、聞いてきた。
又吉のあれ?
私は一瞬、なんのことだか分からなかった。『生きとるわ』レビューコンテストのことだと気がつき、ネットで検索してみたけれど、サイトには何も載っていなかった。

それ以降、なっちゃんも私も その話はしなくなった。

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