会いたいのに会いたくない。明石家サンタへのお願い。
私が武田砂鉄という人の声を初めて聞いたのは2022年頃、TBSラジオ「アシタノカレッジ 金曜日」だった。何がきっかけでその番組を聴き始めたのか、全く記憶にない。しかし 気がつけば毎週金曜日の夜を心待ちにしていた。
程なくしてアシタノカレッジは終了したが、2023年4月から「武田砂鉄のプレ金ナイト」に変わり、今も砂鉄さんの番組は続いている。
低過ぎず心地よい低音ボイス。
常に冷静沈着で何事にも動じない、飄々という言葉が妙にしっくり来る振る舞い。
アベノマスクが未だ自宅に届かないことを追求し続けるその姿勢。
些細なことも見逃さず、そこからあれやこれやと妄想する思考。
どこまで遡って調べてるんだよ!っと突っ込みたくなるほど細かい、ゲストに対する下調べ。
寒くても年中 T シャツで過ごすわんぱくさ。
などなど、好きな理由を色々並べてみたが「女は男の声に惚れる」らしいので、なんだかんだ言って声が一番大きな要因のような気もする。
そんな砂鉄さんの新たなラジオ番組「武田砂鉄のラジオマガジン」が9月から文化放送で始まった。月曜から木曜まで毎日3時間半の帯番組。
毎日彼の声を聴ける。これはファンなら嬉しい限りの出来事のはず。けれど私は戸惑っていた。週に4日3時間半をどう工面するか。
ラジオは耳さえあれば用事をしながら聴ける。しかし近頃は歳のせいか、何かに集中してしまうと周りの音が全く聞こえなくなってしまう。ふと何かに目を奪われると「あれ? 今のコーナー全く聴いてなかった」なんてことになってまた巻き戻して聴き直す始末。
だからある程度 何にも集中せずにラジオに注力できる余力を残しながら用事をしなければならない。
今もいくつかの番組を聴いている。フルタイムで仕事をし、今聴いているラジオをそのままに、この新しい番組を聴くのは至難の業。
私は苦渋の決断である番組を切り捨てた。
そして出来上がった私のラジオの時間割がこちら。

リアルタイムで聴くことは不可能なので殆どの番組をradikoのタイムフリーで聴いている。1日平均3時間40分。
朝起きてから出勤まで、昼休み、ご飯の支度をしながら、お風呂の中、ほとんどの時間を私はラジオに費やしている。読みたい本も読めず、書きたいnoteも書けず、ラジオに追われる毎日。
特に木曜日の聴取時間は7時間15分と飛び出ている。
ちなみに「プレ金ナイト」は番組終了後にアフタートークとしてYouTubeの配信もあるので実際はプラス30分くらいある。
仕事をしてる場合ではない。私はラジオを聴くために退職したい。
しかし先日、砂鉄さんは言った。「ラジオは一生懸命聴くものではないですからね」と。
「えっ? 私はあなたのことが好きで全力で聴いているのですよ!」
文化放送のある浜松町に向かってそう叫びそうになった。
「武田砂鉄のラジオマガジン」が始まって1ヶ月以上過ぎた11月5日、「武田砂鉄のプレ金ナイト」のイベント「THE アイアン・ショー」が開催された。イベントビジュアルはプレ金ナイトを聴いているという あの漫画家の浦沢直樹先生直筆。

平日に東京まで行くのは難しく、私は配信チケットを購入した。
このイベントの数日前、ラジオで散髪したことを話していた砂鉄さん。ラジオの番組サイトで写真を拝見するといつもよりかなり短め。イメチェンでもしたのだろうか? と思っていた。
約2時間のイベント。
冒頭は舞台袖に作られたラジオブースのセットで横に構成作家さんが同席。いつものオープニングトークの再現から始まった。
と、途中でおもむろに舞台中央に移動し堂々と話し始める砂鉄さん。ここで動く砂鉄さんを見て「うわー動いてる!」と西郷さんの銅像が突然動き出したかのような驚きを覚えた(いつも声だけ聴いているので歩く砂鉄さんがレア過ぎた)。
そして浦沢直樹先生のポスターの横に並ぶと「このポスターに似せて髪を切った」ことを告白。そういうことだったのか!
次々と明らかになる素顔とプライベート。
公開された仕事部屋の写真の平置きに山積みされた本やCDの地層に興奮し、いつもTシャツで過ごしているので寝巻きは勿論Tシャツとスウェットだろうと踏んでいたのにまさかの前ボタン式のパジャマを着ていることに驚き、寝る時は私と同じようにマウスピースをし同じマウスピース洗浄剤を使っていることに歓喜し、そこかしこに置かれたゴキブリにしか見えないブラックキャップにクスッと笑った。
そしてまさかのラスト。吉幾三さんの雪国を700人の観客の前で堂々と熱唱。更には客席に下りハイタッチまでしている。
いつも飄々としている武田砂鉄が、いつもよりハイテンションで絶対にやらないだろうと思うようなことをしている。
私の見立てによると砂鉄さんは人前で歌い、ハイタッチをして欲しくて次々に手を出す観客達の黄色い声に快感を覚え、ゾーンに入っているように思えた。そしてこの快感をまた味わいたいと密かに目論んでいるのではないか。
砂鉄さんのいつもとは違う奇妙な振る舞いに、私はこの配信を3回も観てしまった。
イベントのあった週は26時間のラジオに加え、6時間分(2時間×3回)の配信視聴。
私は砂鉄氏に時間を搾取され何もできない日々が続いている。一体全体どうすればいいのだろうか。
初回から逃さず聴いている「武田砂鉄のラジオマガジン」。今更聴くのをやめるわけにはいかない。
何よりこのラジオ、朝の番組とは思えないほど面白すぎる。
このラジオのことはまた別に綴ろうと思う。
時はもうすぐクリスマス。
もしも街頭で明石家サンタのインタビューを受けたなら、私は迷わずこう答える。
「武田砂鉄さんのラジオにゲスト出演して、根掘り葉掘り砂鉄さんから「取り調べ」を受けたい」

「今日のゲストは ふともも むくみ さんです」
いつかラジオからそんな声が聴こえたら「うおっ!!」と思って欲しい。
高校生の頃、好きだったサッカー部の青井くんと2人でハンバガーがーショップに行った。青井くんがハンバーガーを頬張る姿を見て私はスーッと気持ちが冷めてしまった。
何故だか分からないのだけれど、私は砂鉄さんに会ったらその時と同じ現象が起こりそうな気がしている。なんの根拠もない。何故なのかは分からない。
こんなに好きなのに会ったら好きじゃなくなりそうなので、一生会わない方がいいのかも知れない。
どうか私の夢が叶いませんように。
会いたいの?
会いたくないの?
自分でもよく分からない。
