隣の席が、すごかった——東大の近くで娘と過ごした、刺激的な一日
【効率の学び】大学受験の大変さを疑似体験 | Future Family Project 航海ログ
カフェで長女と勉強していた。
隣の席から、ものすごい熱量の声が聞こえてきた。
東大ロースクールの学生が、浪人を控えた高校生に、受験のすべてを叩き込んでいた。
長女と二人で、つい聞き入ってしまった。
【現場①】まずは理科クイズから
その日はまず、長女と理科をやっていた。
「塩酸って電気を通すんだよ」「えっ、知らなかった」
そこからクイズ大会になった。
「匂いがあって中性で電気を通すものは?」——塩化ナトリウム水溶液。 「臭くてアルカリ性で電気を通すものは?」——アンモニア水。 「気体が溶けて酸性になったものは?」——炭酸水。
長女が次々に当てていく。「すごい、よく覚えてるな」
パパが子供の頃にリトマス紙を舐めたらアルカリ性だった、という話もした。「なんで舐めるの」と長女が笑った。
水はH₂O、二酸化炭素はCO₂。分子の形まで紙に描いて説明した。楽しい時間だった。
【現場②】隣の席の熱量がすごかった
その間、隣の席の会話がずっと聞こえていた。
教えていたのは、東大のロースクールに通っているっぽい26歳くらいの学生。教わっていたのは、17〜18歳くらいの高校生。塾の先生と生徒のような関係に見えた。
内容が、とにかく濃かった。
勉強法について。 「逆算してやること。9月までに何を終わらせるか、ゴールから決める」 「教材は一度で完璧にしようとするな。何度も繰り返す『重ね塗り』でやれ」 「単語帳は1冊じゃなく5冊くらい並行して使え」
環境について。 「人間関係で追い詰められる前に、自分で環境を変える練習をしておけ」 今いる場所に固執せず、目的のために環境を選び直す勇気を持て、という話をしていた。
人間関係について。 「物事は学歴だけじゃなく人間関係で動く。だから、いろんな場に出続けることが大事だ」
そして、こんなことも言っていた。
「地位があって知見の深い人に会う時は、その人の論文や本をちゃんと読んでから会いに行け」
トロッコ問題や、自動運転AIの倫理の話までしていた。SNSの「身体性」の話も。
長女が小声で「あの人すごいね」と言った。パパも「本気で分厚いな」と思いながら聞いていた。

【現場③】ミラノ風ドリア1500個分
途中で、夏期講習の費用の話になった。
そのまま金額を言ってもピンと来ないだろうと思って、長女がよく知っているもので例えることにした。
「パパは君に、ミラノ風ドリア1500個分の費用を提供します。頑張ってください」
長女が「1500個!?」とびっくりして笑った。サイゼリヤのミラノ風ドリアが1500個。想像したら確かにすごい量だ。
「これは君が頑張るための夏だ。受かっても受からなくてもいい。チャレンジした過程が大事だから」
そう伝えた。金額のプレッシャーじゃなくて、覚悟の話をしたかった。子供がイメージできる単位に変えると、伝わり方が変わる。
とはいえ、その金額にドン引きですが。。。こっから10年、自分に使えるお金はないだろうw。
【現場④】そのまま東大を散歩した
長女の確認テストが返ってきた。前より点数が伸びていた。
点数そのものより、復習して前回より伸びたことを褒めた。「ちゃんと復習した結果が出たね」と言うと、長女は少し誇らしそうな顔をした。「すごいじゃん」と言って、二人で外に出た。
「せっかくだし、散歩がてら東大歩いてみようか」
工事中の赤門を横目に入構した。地図で現在地を確認して、三四郎池へ向かった。
鬱蒼とした木々の中に、静かな池があった。小さな滝もある。岩場が秘密基地みたいだった。「東京のど真ん中にこんな自然があるなんてすごいだろ」
ママにFaceTimeで中継した。「今、三四郎池にいます」と長女が言うと、ママが笑っていた。
安田講堂の前を通って、図書館前の広場に出た。

【考察】鬼滅の刃と、次の世代
帰り道、なぜか鬼滅の刃の話になった。
煉獄さんがなぜ命をかけたか。炭治郎を生かすためだ。伊之助がいなければ炭治郎は最初に死んでいた。みんなが命を繋いだから、最後に鬼舞辻無惨を倒せた。
「全てのことには意味があるんだよ。自分が死んでも、次の世代が生き残ることが大事なんだ」
そして言った。
「パパとママは、君たちを次の世代に繋ぐために頑張ってるんだよ。君たちが自分で生きられるようになって、また次の世代に繋いでいく。そういうことなんだ」
長女は黙って聞いていた。
隣の席のロースクール生も、同じことを言っていた気がする。
「終わった時に残っているやつが本当の友達だ」「いろんな場に出て、人と繋がれ」——あれも結局、人が人を繋いでいく話だった。
そして、一つ深く刺さったことがある。
「知見の深い人に会う時は、その人の本を読んでから会いに行け」——これは、僕が尊敬する研究者がいつも言っていることと、まったく同じだった。それを、見ず知らずの高校生に本気で伝えている。
これは愛だな、と思った。
自分が体験から得た知見を、次の世代に惜しみなく渡そうとしている。本気で生きている人は、本気で誰かを育てようとする。
本気の大人が、本気で次の世代に何かを渡そうとしている。カフェの隣でも、東大の森でも、それは同じだった。
【余韻】
800年後の子孫へ。
2026年6月中旬、ある親子は東大の近くのカフェで、隣の席の熱量に圧倒された。
帰り道、横断歩道までの50mを本気で走って競争した。
パパが勝った。長女が「くそ!」と言った。
刺激的な、いい一日だった。
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