小説|雪のように儚く(仮)|第6話|動く倒木
こんばんは
fuwamaru-studioです🤗
これまでの話↓
【第6話】
* * *
腰掛けていたはずの倒木が、
ゆっくりと動きました。
驚いて立ち上がり、振り返ります。
そこで初めて気がついたのです。
倒木だと思って腰掛けていたものは、
木ではありませんでした。
それは――
見たこともないほど大きな蛇だったのです。
あまりの恐ろしさに、持っていたおむすびを落としそうになりました。
逃げなければ。
そう思い、慌ててその場を離れようとしたときです。
「逃げなくて良い、食べたりせぬ……」
声が聞こえました。
思わず足を止めました。
辺りを見回しても、誰もいません。
「この周辺の山々は、山神様が守っておられる……」
もう一度、声がしました。
まさか――。
恐る恐る振り返ります。
そこにいるのは、先ほどの大蛇だけ。
信じられないことに、その大蛇が人の言葉を話していたのです。
逃げたい。
けれど、足が動かない。
目の前で起きていることがあまりにも現実離れしていて、ただ立ち尽くしたまま、大蛇の話を聞いていました。
大蛇は続けました。
「十七年後――」
「百年に一度の、山神様を祀る年を迎える」
百年に一度。
山神様を祀る年。
突然そんなことを言われても、何のことなのか分かりません。
しかし大蛇は、さらに続けました。
「その年を迎えるまでに、供物の準備をするように」
「供物……?」
聞き慣れない言葉に、思わず聞き返しました。
大蛇は言いました。
「そうすれば、百年先まで、この村の暮らしは守られ、繁栄する」
村を守るため。
百年先まで、村が繁栄するため。
そのために、
山神様へ供物を捧げる。
けれど――
いったい、何を用意すればいいのでしょうか。
私は恐る恐る、大蛇に尋ねました。
「お供物とは……どのようなものを用意したら良いのでしょうか?」
すると大蛇は、静かに答えました。
「お前は結婚し――」
「五年後に、一人目の子供が授かる」
そして、少し間を置いて言いました。
「その子は、男の子だ」
私は言葉を失いました。
まだ結婚すらしていない自分に、五年後、男の子が生まれる。
そんな先の未来のことを、目の前の大蛇は、まるですでに決まっていることのように話しているのです。
けれど、大蛇の話はそれだけでは終わりませんでした。
「そして、それから三年後――」
「二人目の子が生まれる」
「その子は――」
静かな山の中に、大蛇の声が響きました。
「女の子だ」
男の子の次に、女の子。
まだ結婚もしていない。
子供が生まれるかどうかさえ分からない。
それなのに、生まれてくる順番も、
男の子か女の子かも、すべて分かっているかのように大蛇は話します。
私はただ、その場に立ち尽くしていました。
そして大蛇は、
その女の子について――
さらに信じられないことを告げたのです。
つづく
