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あの金色が私の特別になった。

2022年の夏、私は第二子である長男を出産した。私はとにかくお酒が大好きなのだが、妊娠が発覚したときから当然禁酒の身だった。そしてそれは出産を経ても終わらない。出産したら、今度は授乳が始まった。


ふにゃふにゃだった息子の首がすわり、寝返りを打つようになり、離乳食がスタートした。もともと出が良くなかった母乳は、離乳食が順調に進むにつれてますます出なくなった。ほとんど咥えているだけのようなものだったけど、「なんとか1歳までは頑張ろう」と決意し、なけなしの母乳が止まらぬようにと毎日たっぷりの水分を摂った。


息子の誕生日を目前に控え、この意味があるのかわからない授乳にようやく終わりが見えてきた頃、私の頭はビールでいっぱいになっていた。
「妊娠出産と、このしんどい授乳期を経て久しぶりに飲む1杯は最高のものにしたい」、そう強く思うようになった私は、何を飲むのかを真剣に考え、アサヒ生ビール(通称マルエフ)に決めた。


マルエフは2021年9月に、約28年ぶりに家庭用の缶ビールが全国で復活発売したそうだ。
2021年9月といえば長男を妊娠する少し前で、その頃は竹内まりやさんの「元気を出して」のノスタルジックなメロディと、新垣結衣さんの「おつかれ生です」というキャッチーなセリフが印象的なCMが流れていた。わたしはお財布事情で家ではビールではなく発泡酒を飲んでいたので、CMを見ても「この曲って世代じゃなくても懐かしい気分になるよなぁ」と思うだけで、買って飲んでみたことはなかった。


そうして一度も飲まないまま長男を妊娠し、出産して授乳が始まり、CMのメインキャストは芳根京子さんに変わった。最高の一杯を求めるようになった私の喉は、「おつかれ生です」の言葉にゴクリと鳴った。私へのおつかれ様の一杯は、これがいいと思った。


迎えた息子の1歳の誕生日。食パンと水切りヨーグルトで作った赤ちゃん用のバースデーケーキとおもちゃのプレゼントでお祝いし、寝る前に最後の母乳をあげた。「これでバイバイだよ〜」と言いながら、ほとんど出ない母乳を一生懸命に吸っている息子の顔を見ていると、何故だか寂しくて泣きそうになった。授乳が終わり、「今日まで飲んでくれてありがとうね」と頭を撫でて、そのまま一緒に眠りについた。


数日後、ついにその時はやってきた。子どもたちを寝かしつけ、特別に買っておいたお刺身と焼き鳥をダイニングテーブルではなくリビングのローテーブルに並べた。見たかった映画を流し、冷蔵庫でキンキンに冷やしておいたグラスにマルエフを注ぎ、夫とソファで乾杯した。人生で飲んだビールの中で、本当に1番美味しかった。


その日から、我が家のビールはマルエフになった。頑張って疲れた日も、嫌なことがあった日も、ちょっと豪華な献立の日も、私は冷蔵庫を開けるたび、あの金色をまとったパッケージに「おつかれ生です」と囁かれている。

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