見出し画像

家族がつないだ画家の夢|ゴッホ展に行ってきました

素直に言おう。僕らは、ただ、絵を通すことによってのみ、何かを語ることができると。
そうだとしても、テオ、僕がいつも君に語り続けてきたことを、いま、もう一度言おう。
君は、単なる画商なんかじゃない。僕を通して、君もまた、絵の一部を描いているんだよ。
だからこそ、どんなに苦しいときでも、僕の絵はしっかり定まっているんだ。

原田マハ著『たゆたえども沈まず』より

上記は、原田マハさんの著書『たゆたえども沈まず』の一節です。
画家フィンセント・ファン・ゴッホが、弟で画商のテオドルス(テオ)・ファン・ゴッホに向けて、死の直前で囁いたメッセージ。

この物語は史実をもとにしたフィクションなので、実際にフィンセントがこの言葉を発したか定かでありません。
ただ、この言葉を通して、フィンセントとテオの関係性、そしてフィンセントの成功の陰にテオとその家族の多大なるサポートがあったことが伝わり、とても印象に残っていた文章でした。

この本を読んで以降、『ゴッホ』という画家に非常に興味を持ち、ゴッホに関連する原田マハさんの別著を読んだり、ゴッホ作品の展示会があれば迷わず鑑賞に行ったり…。
彼の作品、そして彼と彼の家族の生涯をもっと知りたい、という思いが日を追うごとに強くなっていました。

そんな中、東京都美術館で『ゴッホ展』が開催されている、との情報が。
「これは行かねば!」ということで、早速鑑賞に行ってきました。
本記事ではその時に感じた思いを留めておきます。

『ゴッホ展』について

『大阪展』『東京展』『名古屋展』の3か所にて、期間をずらして開催されています。(2025/11/9現在は『東京展』にて開催中。)

土日、祝日は日時指定予約制なので、もしこれから見に行く方がいれば事前にチケット購入してから向かうことをお勧めします。
(当日、会場でも購入できますが、チケット購入だけでも結構並びそうでした。)

展覧会名 : ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢
会期   : 2025年9月12日(金) ~ 12月21日(日)
       ※土日、祝日および12月16日(火)以降は日時指定予約制
会場   : 東京都美術館
       〒110-0007 東京都台東区上野公園8−36
開室時間 : 9:30-17:30、 金曜日は20:00まで
       (入室は閉室の30分前まで)
       ※11月25日(火)は休室日のようです。
        これから行く方はご注意を!

見どころ

《見どころ①》
フィンセント・ファン・ゴッホの作品を、画業初期から晩年まで計30点以上鑑賞することができます。

余談ですが、フィンセントが画家を志したのは「27歳」のとき。
そして「37歳」に亡くなるまで、画家としてはたったの『10年間』しか活動していないんですよね。

ただ、その『10年間』の中で数多くの心に響く作品を残しており、今回の展示ではそれを初期から晩年へと、彼の画家としての経過に沿って鑑賞することができます。
時間経過に伴って、各作品からフィンセントの心の変化も感じ取ることができるので非常に興味深いです。

《見どころ②》
展示会では、フィンセントが弟テオに向けて送っていた直筆手紙4通を見ることができます。
手紙の中に描かれた挿絵の繊細さ、そして手紙の中で度々訴えかけている絵画に対する情熱をひしひしと感じられます。

《見どころ③》
最新の画像・動画編集技術により、フィンセントの作品を巨大イマーシブ空間で文字通り『体感』することができます。
フィンセントの魅力は、厚塗りにより絵の立体感・奥行き感が感じられ、見ていると引き込まれてしまいそうな絵を描くところだと私は考えているのですが、この空間ではそういった魅力を存分に味わえます。
また、動画として視聴できることにより、今まで気づかなかった視点(絵に使われている色や重ね方等)が多く生まれ、非常に有意義な体験をすることができます。

感じたこと

フィンセントの作品はこれまで何度か目にしたことはあったのですが、今回の展示ではこれまで魅力に気付けていなかった作品に新たな魅力を感じることができました。
個人的に、特に印象に残った作品が以下3つ。(年代順に記載。)

① ルナリアを生けた花瓶(1884年秋)
フィンセントが画家として歩み始めて4年後の作品。
色彩理論を学び始める前、ということで、この頃の作品に晩年ほどの色鮮やかさは見られないものの、ゴッホ特有の立体感・奥行き感はこの頃から感じられました。
全体的に暗めの色彩の中で、ルナリアの白い花弁がひときわ際立って見える、けれども決してまわりから浮くわけではない、という絶妙な色使い、構図となっており、やはりゴッホの感性は画家として優れていたのだろうと感じました。

② 耕された畑(「畝」)(1888年9月)
南仏アルルに移ってから描かれた作品。
この頃の作品はゴッホの代名詞である『黄色』がふんだんに使われており、繊細かつエネルギッシュで私も好きな作品が多いです。
その中で今回の展示では『耕された畑(「畝」)』という作品を見ました。

絵画全体を通して絵の具を厚塗りして描かれており、絵を数センチの距離で見たときは「全体的に強く、平面的な作品になってしまうのでは…」と感じましたが、少し離れたところから改めてこの絵を見ると驚愕。
厚塗りのため全体的にエネルギッシュな作品でありつつも、繊細に色が使い分けられていることで作品に奥行きを感じ、広大な風景が本当に目の前にあるような感覚になりました。
また、畑や畝、空といった、景色を描くときの筆の使い方も繊細で、「いまこっちに風が吹いているんだろうな」とか「こんな音や匂いを感じていたんだろうな」とか。フィンセントが見ていた光景が実際に目の前に浮かび上がるかのような錯覚を感じました。

こういった感情はやはり実物を見ないと感じにくいものなので、展示会に来られてよかったと心から思えた瞬間でした。

③ 一日の終り(ミレーによる)(1889年11月)
フィンセントがサン=レミの療養院で描いた作品。
夕暮れ時、農民がその日の重労働を終え、家に帰ろうとしている風景を描いた作品です。
この絵を見たとき、何よりも真っ先に『農民に美しさ』を感じました。

絵のモチーフは男性(おそらく中高年)のため、人物だけだと決して美しいとは言えない(と思う)のですが、太陽が沈みかけている夕焼け空、そしてその夕焼けを受けて輝く畑と男性。
男性の周りが白く光り輝いて見え、無事に一日の労働をやりきった達成感や満足感、そして家族が待つ温かい家へ帰宅して休息と安らぎを得る幸福感。
そういった感情がすべてこの絵から自然と感じられました。

フィンセントの作品には農民を描いた絵も多いのですが、フィンセントが描く農民には、人間の『あるがままの美しさ』がひしひしと感じられ、フィンセントがどのように人間を見ていたのかが伝わってくるような気がします。

④まとめ
他にも魅力的な作品は多々ありましたが、私が特に感情を揺さぶられた作品は上記3つでした。
やはり直接目の前で見ないと、こういった心まで揺さぶられる経験はできないので、展示会はありがたいですよね。
そして、この感情をしっかりと忘れず心の肥やしにしていきたいと思います。

最後に

全体を通して、フィンセントとその家族の熱意がひしひしと感じられる展示となっており、そこまで出展数は多くないものの、非常に満足感がありました。
何よりも、これまではそこまで魅力を感じられていなかった『一日の終り(ミレーによる)』という作品の魅力に気づけたことが収穫かな!

展示は12月後半まで続いているので、購入したゴッホ展の作品集で復習して、再チャレンジしたいと思います。

購入したゴッホ展の作品集
↑購入したゴッホ展の作品集

そして2026年5月29日(金) 〜 2026年8月12日(水)の期間で『大ゴッホ展 夜のカフェテラス』が開催されるようです。
そちらでもまた新しい感動に出逢えることを期待したいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!