【ショートショート】さぶいぼが好きだ#さぶいぼ選手権
私は、さぶいぼが好きだ。
何を言ってるか分からないかもしれないが、とにかくさぶいぼが好きなのだ。
さぶいぼが立つのも、さぶいぼを見るのも好きだ。
冬は特に良い。冬空の下の公園で、一気に上着を脱ぐ。そうすると手の先から背中まで、一気にさぶいぼが立つのだ。
その感触を楽しみながら、さぶいぼをじっくりと観察する。さぶいぼ一つ一つが、湧き立ってから儚く消えるまで、とにかく舐め回すように観る。私の至福のひと時だ。
夏も良い。暑い日差しを浴びた後、冷房のガンガンに効いた部屋に飛び込むのだ。季節外れのさぶいぼも、冬と違った趣があるのだ。
そんな日々を楽しんでいた夏のある日、私はいつものように冷房を18度に設定し、近所の公園に散歩に出かけた。
夕暮れからもうすぐ夜になろうとする時刻だったが、今日は酷暑で、日が落ちても30度を超えていた。
そのせいか、大きな公園にも関わらず人の姿はなかった。
今日は部屋との気温差が大きい。きっと立派なさぶいぼが立つに違いない。と期待に胸を膨らませ、ジョギングコースを回る。
すると、一人の女性がベンチに座っているのが目についた。
ただ女性が座っているだけなら気にも留めない。
しかしその女性はかなりの厚着をしていたのだ。
今は30度を超え湿度も高い。なのにその女性は厚めのコートを羽織り、ツバの長い帽子とマスクをつけ、じっとベンチから動かない。
流石の私も心配になり、大丈夫ですか?と声をかけた。
「気にしないでください。大丈夫です。」
と返事が返ってくる。
しかし、僅かに見える女性の顔は白く生気がない。
私は女性の隣にさっと座り、声をかけ続けた。
厚着をしては危険だと必死に説いたが女性は顔も合わせず生返事を返すだけで要領を得ない。しかし懸命な説得にとうとう諦めたのか、ついに口を開いた。
「私…さぶいぼが嫌いなんです。」
どうもすぐにさぶいぼが立ってしまう体質らしく、それが気になり常に厚着をしてしまうのだとか。
私は、是非見てみたいと思った。
何とか見せてもらおうと必死にお願いした。女性は恥ずかしいのかこちらを見ようともせず困り果てている。しかし土下座も辞さない構えを見せたところでついに諦めたようだ。
左の手首を少しだけ見せてもらった。
雪のような白い肌が露わになると、少しずつぽつぽつと、露のように柔らかく綺麗なさぶいぼが立っていた。
なんと美しいのだろう。私はたちまち虜になってしまった。
もっと見たくなり懇願する。女性は困惑し拒絶したが、私の熱意は変わらなかった。
「こんな事を言うのもなんですが、私はさぶいぼが好きなのです。あなたのさぶいぼを見た瞬間に、私は恋に落ちてしまいました。あなたのさぶいぼも、あなたも、私は愛します。だからどうか袖を捲って見せてもらえないでしょうか。」
この言葉についに観念したのか、女性はゆっくりと手を差し出した。
私は女性の手を取り、優しく袖を捲る。白く雪のような腕が露わになり、ぽつぽつと、玉のようなさぶいぼが立ち始める。
ひとつひとつに可愛らしい、小さな赤子のような、目と口があった。
無数の目がギョロギョロと、辺りを見回している。その中の幾つかと目が合うと、小さな口から呻き声があがる。その呻きに呼応するかのように、新しいさぶいぼが生まれ、顔が生え、こちらを覗き込み、呻き声をあげる。
あまりの出来事に呆然としていた。
はっとなり女性を見る。女性は、いつのまにかマスクを外しこちらをまっすぐ見ていた。
目も口も鼻も、顔中を顔で覆われた女性はその全てで私を視て、その全てで吊り上がるような笑みを浮かべていた。
(1488字)
よしまるさんの#さぶいぼ選手権に挑戦させていただきました。
変化球と見せかけてド直球です。
我ながらよくこんな変なの書いたな…と思います。
お読み頂きありがとうございます。
