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学芸員は玉突きなのです

学芸員の就職事情の話でも。

学芸員は狭き門というイメージがあるかもしれません。募集が少ないという意味では間違ってはいません。ひとつの美術館に何十人も学芸員がいるということはありませんし、毎年新卒を採用するようなこともありません。

以前にも触れたことがありますが、学芸員の募集が出るのは何らかの理由でその美術館に欠員が出た時です。定年退職か、はたまた転職か。

さて、そこで必ずしも未経験の若手が求められるとは限りません。バランスというものがありますからね。若手ばかりが固まって、それを指導できる中堅がいない、なんていうことになったら美術館が回らなくなるわけです。

だから「経験年数○年以上」という条件つきの募集が出ることもよくあります。基本的に(全員ではありませんが)学芸員は、小規模美術館よりも大規模美術館を目指しますし、地方の美術館よりも中央の美術館を目指します。やはり前者よりも後者の方が、雇用条件がいいし、展覧会予算も余裕があるからです(これも例外は多々あります)。

さぁここから現実的な話をしますが、大手の美術館、中央の美術館は上記の理由で、人手には困りません。定年退職など順当な理由で辞めていく人はあっても、いきなり予期せぬ退職を申し出る人はあまりいません。
満を持して公募をすれば、たくさんの応募がありますし、何だったら一本釣りでどこかの美術館の学芸員をスカウトしても、承諾してくれる可能性が高いです。

逆に、大手とは言えない美術館、地方の美術館などは、いつ何時、所属の学芸員が辞めていくか予測がつかない怖さがあります。優秀な人ほど「もっといいところへ!」という想いを抱くものですからね。どこか別の美術館で公募が出ていれば、それに応募してしまうかもしれないし、それこそ一本釣りされてしまうかもしれません。

もしそれで急遽学芸員が辞めます、別の美術館に行きます、ということになったら、急いで募集をかけなくてはいけません。美術館の規模が小さくなるほど、カツカツの少人数で回していますから、一人欠けたままではとてもやっていけないのです。

仮にランクA、B、Cの3つの美術館があったとして、最上位のランクA美術館が「○○さんが定年だから来年度に向けて経験者を募集するか」と夏ぐらいに公募をかけ、それにランクB美術館から学芸員が応募して転職が決まると、今度はランクB美術館が年の終わり頃に欠員補充のための公募をかけ、それにランクC美術館から学芸員が応募して転職が決まると、最後はランクC美術館が年度末ぎりぎりに公募をかける、という玉突き公募が生じるのです。

それで、しばらくすると業界内では「あぁ、○○さんがあそこに移ったから、○○さんがその後釜に入ったのか」と答え合わせトークが交わされるのです。

弱肉強食というか、自然の摂理というか、まぁビジネスの世界ではどこも似たようなことはあるのでしょうが。