輸送中に作品が壊れたらどうする?
先日、大学で学生たちに一つの展覧会ができるまでの流れを解説しました。まぁ、ここ(↓)にまとめたような話です。
ただし、noteに書いているよりも、もっと具体的に実際の写真を出しながらお話しした感じです。
学芸員資格を取るための授業ではなかったので、興味が無い学生もいたでしょうが、それでも知らない世界の話って面白いですからね。わりと質疑応答の時に発言してもらえました。
その中で「輸送中に作品が壊れたらどうするんですか」という素朴な質問がありました。
たしかに気になりますよね。絶対にあってはならない事ですが、この世に絶対はありませんからもしもの場合を考えておかなくてはいけません。
企画展となれば、あちらこちらの美術館、博物館から収蔵品をお借りしてきます。作品は持ってくる時と返却する時の2回、トラック(場合によっては飛行機)で長旅をすることになります。
人間だって長旅をしたら疲れますよね。作品も同じです。どんなに丁重に扱ってもダメージは蓄積されます。
そうしたダメージが顕在化することもあり得ますし、もっと直接的に不慮の事故で衝撃を受けてしまうこともあり得ます。
そんなもしもの時のために、そう保険があります。
輸送する時は必ず保険をかけます。というか無保険では、専門業者は輸送を引き受けてくれません。
だから、作品借用の交渉をする過程で学芸員は保険の手配もする必要があるのです。学芸員以外の人がそうした作業を行うところもあります。
保険額がいくらになるかは、当然運ぶ美術作品の価格によって変わります。美術作品の価格なんてあるの?と思うかもしれませんが、それを評価額といいます。
評価額は、作品を所蔵している館の学芸員がつけることもあれば、信頼できる第三者(専門家・専門機関)につけてもらうこともあります。いずれにしても作品を借りる側の学芸員は、借用先に評価額を打診するのです。
「そちらで決めてもらって構いませんよ」と言われた場合は、全体の作品リストをながめてバランスを見ながら適切な額をつけます。
そしてその評価額の総額をもとに保険金額の見積もりをもらうのです。なかなか面倒な作業ですが、やらないわけにはいきません(繰り返しますが、無保険だとそもそも輸送してもらえないのです)。
ちなみに保険をお願いするのは、保険会社の場合もありますが、日通やヤマトのような大手の美術品専門運送会社であれば、保険付帯までお願いすればやってくれます。
というわけで、最初の「輸送中に作品が壊れたらどうするんですか」という質問の答えは「何かあった場合は保険金がおりるので、そのお金で修復、または賠償する」なのです。
もちろん直ればいいというわけではないですし、心臓がとまるからそんなことは絶対ないようにと願っているんですけどね。
こういう素朴な疑問って言われないとなかなか分からないから、いい機会でした。他にもいくつか「そこ気になる?」という質問をもらったので、また紹介しようと思います。
