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いってきました長沢蘆雪展

文藝春秋』で私が今年注目の展覧会として挙げたのが、府中市美術館の「長沢蘆雪」展です。開幕初日から入館待ち発生という話を聞いてましたが、後期に入ってようやく行ってまいりました

もともと前期ではなく後期に行くつもりではあったんですけどね。なぜなら、後期にのみ展示される無量寺の《龍虎図襖》が一番の目的だったからです。
個人的に思い入れの深いこの作品。その理由については、『文藝春秋』5月号かWEB版の文藝春秋プラスをご覧下さい(たいした話ではありませんが、有料媒体に書いたことなのでここでは書きません)。

展覧会は大満足でした。というか、《龍虎図襖》その1点を見るだけでも行く価値があったなと思います。それぐらいこの襖絵は良かったです。
印刷された図版やデジタル画像では伝わらない良さが実物にはあるのは、どんな作品にも当てはまることなのですが、この作品は特にそれが顕著でした。

襖に描いた大画面作品であることを体感しないと、迫力と可愛らしさが同居するこの絵の魅力はやはり実感できないですし、筆の流れや墨のにじみをまじまじと観察することで、この絵が本当に即興で描き上げられたものなんだと理解できます。この絵が持つ生き生きとしたライブ感、ノリノリで大きな筆を振るう蘆雪の姿は、図版や画像では感じることができません。
私もわかっていたようで、頭でしかわかっていなかったとしみじみ感じました。いやー行ってよかった……。

それにしても驚くべきは、府中市美術館です。展覧会を作る側の立場で考えると、無量寺の目玉作品を始め、遠方から大型作品を集めてくるには、それなりにコストがかかります。にも関わらず、主催は府中市美術館のみ!新聞社などが共催や後援に入っているわけではありません。
昔から競馬場のある府中市は財政状況が良いと言われますが、それにしたって公立美術館が単館開催する企画展のレベルを凌駕しています。

もう一つ心から感心するのは、数年がかりでコンテンツを熟成させた点です。府中市美術館は2005年から毎年春に江戸絵画をテーマとした展覧会を行ってきました。毎回、今回の「長沢蘆雪」展のような派手な企画展というわけではなく、地道に調査で掘り起こした作品を紹介するような渋い展覧会もありました。ただ、それを毎年繰り返すことで地元の人はもちろん展覧会好きの間で「府中の春は江戸絵画」という認識が出来上がっていきました。
展覧会のテーマカラーはオレンジで統一してきたのも、とても戦略的だなと思います。親しみやすくポップな江戸絵画というイメージを刷り込んで刷り込んで、そしてその集大成として今回の「長沢蘆雪」展の大ヒットとなったのです。

学芸員の調査力、研究力に加えて、広報戦略の点でも抜きん出ている府中市美術館おそるべしです(かなりの部分が、企画担当の金子学芸員の才覚によるのでしょうが)。

もう間もなく閉幕しますし、おそらく最後の駆け込みで人手もすごいでしょうが、気になる人は行って損は無いと思いますよ!

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今回の展覧会を見逃した人へ。
今年の8月11日から和歌山県立博物館で特別展「蘆雪生動」が開催されますよ。こちらはなんと無量寺の襖絵全55面すべてが公開されるそうなので、これはこれですごいぞ!!


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