美術館学芸員の男女論〜学芸員に向いているのは男?女?〜
みなさん、美術館で働く学芸員は男性と女性どちらが多いと思いますか?
以前調べてnoteにも書きましたが、答えはこちら。
男性学芸員482人、女性学芸員752人
文部科学省の社会教育調査(2018年度)で公表されている数字です。
女性の割合の方がかなり高いですよね。
実際にあちこちの美術館とやり取りしていても、だいたいこれぐらいの男女比だなと思います。
さて、なぜこれほど女性比率が高いのか。
学芸員という仕事は女性の方が向いているからなのでしょうか。
採用の時に女性を優先するようなことがあるのでしょうか。
学芸員になる前の段階に目を向けると、ある程度答えが見えてきます。
文系大学に進む男女比。
そして大学院に進む男女比。
もう言わんとすることはわかりますね?
だいぶ前に、学芸員には文系卒と美大系卒の2タイプがいるという話をしました。
世間一般のイメージでは、美大で絵を学んだ芸術家肌の人がそのセンスをいかして学芸員をやる、と思われていますが(え、そんなことない?よく言われるので)、実際は大学の文学部で美術史を学び、学芸員資格をとり、大学院に進んで研究を続けた後に、美術館に就職する、という方がどちらかと言えばスタンダードです。
学芸員の公募条件には「修士以上」とあることが多いのです。
さて、昨今「理系に進む女性の割合を上げよう!」という動きが活発ですが、その是非はさておき、実際に理系の大学に進むのは男性が圧倒的に多く、逆に文系の大学、その中でも人文科学の学部となると、女性の割合がかなり高くなります。
文部科学省が2019年度に行った「学校基本調査」によれば、人文科学の学部における男女比率は男性34.7%、女性65.3%です。これは薬学・看護学の男女比率に迫るぐらい女性比率が高いです。
人文科学の中でも美術史専攻となると、さらに女性の割合が大きくなるように思います。これは統計は無いので私の肌感覚なのですが、実際、私は大学院時代、同級生はおろか先輩後輩ふくめて他に男性が1人もいないという状態でした。久しぶりに男が来た!みたいな周りの反応だったのを思い出します。
私自身がそうあるべきとは別に思っていませんが、男性の方が実学思考が強い傾向にあるのは事実でしょう。
文化・芸術というお金になかなかならない分野の学問に進むのは、正直なかなか勇気がいります。「就職はあるのか?」「本当に食っていけるのか?」と二の足を踏む気持ちもわかります。
私はある意味そのあたりが鈍感だったために、「ま、なんとかなるかなぁ」という感覚で進路を決めましたが(親も深く考えていなかった)、現実をみるタイプだとなかなか進みにくい進路だと思います。
リスクとリターンだけを天秤にかけたら、見合っているとはお世辞にも言えませんからね。
なんにせよ、学芸員になる前段階の文系大学・大学院ですでに女性比率が高い以上、ある美術館が学芸員を公募して公正な試験をすれば、基本的に学芸員の男女比に偏りが出るのは当然と言えば当然です。
さて、ここからが現実的なお話になります。
このようにややもすれば、女性の学芸員多めで構成されることになりがちな美術館なのですが、もし完全に女性率100%になったりすると、それはそれで少々困ったことになります。
学芸員って、そんなにかっこいい仕事ではなくて、力仕事、汚れ仕事がたくさんあります。
作品を収蔵庫から展示室に持ってくるだけでも、サイズも重量も半端じゃない作品もあるのではっきり言って肉体労働です。
もちろん、学芸員になるような女性で「重いものは持ちたくありません」なんていう人はいないのですが、力仕事に限って言えば体格的に男性の方が向いているのは否めません(「いや、ヒョロヒョロの男だっている!」とか個別例を出すときりがないので、あくまで一般的な話だと思ってください)。作品によっては男2人でようやく運べるようなものだってあるのです。
逆に「手先を使う細かな作業は女性の方が向いている」という意見もありますが、これに関しては正直そこまで明確な差を感じたことがありません。少なくとも男女の筋肉量の差ほどの明らかな違いはないでしょう。
と、ここまで色々と話をしてきましたが、私なりの結論を書いておくと、学芸員という仕事においては男女で向き不向きの業務内容はあるけれど、個人の能力差を超えるほどどちらが優位ということはない、と思います。
要するに、男女どちらが有利ということもないかな、と。
重いものが持てるのと持てないのとでは持てる方がいいですし、手先が器用なのと不器用なのとでは器用な方がいいのは当然なのですが、それ以上に「幅広い展覧会企画を立てられる能力」だったり「作家の研究を深掘りしていける能力」だったり学芸員の本分といえる分野で力を発揮することの方がよっぽど大事です。
1人でなんでもできる必要はないですし、苦手分野は周りの助けを借りればいいのです。これは学芸員に限らず、どんなチーム仕事も同じでしょう。
ただし、そうした助け合いを可能にする環境であるためにも、どちらかの性別だけが極端に多いよりもバランスよく配分されるというのが理想なんですよね(そう上手くはいかないのが難しいところですが)。
というわけで、今回はちょっと切り口を変えて、「男性・女性」という視点で学芸員を語ってみました。
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