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ゆったり派、みっちり派

ゆったり派か、みっちり派か。なんの話かと言うと、美術館でどのように作品を並べるかに関してです。

絵画作品、立体作品どちらにしても、作品と作品の間隔をどれぐらい空けるかは非常に重要です。

美術館の学芸員が、展示の配置をどのように考えるかというと、まずは机上で(もしくはPCのディスプレイ上で)考えます。だいたい展示室をどのように使って、エリア分けをするかをざっくり決めます。本でいうところの章立てのようなものですね。
それからそのエリアの中に、具体的に一つ一つ作品を配置してみます。展示室の図面に書き込む人もいれば、イラレなどのソフトを使ってレイアウトする人もいます。
この時に、作品間隔を仮に設定して(たとえば1メートル間隔で考える、とか)図面を作ります。

さぁ、展示作業当日になりました。
実際に展示室に作品を運び、図面に従って並べてみます。絵画作品であれば、いきなり壁に掛けるということはなく、一旦養生した床に置いてみます(「養生する」で伝わりますかね? 要するに地べたに直接作品を置くのではなく、作品が汚れないようにシートなり巻段ボールなりを敷いた上に置きます。養生したところには土足厳禁)。
ひとまず一定の間隔で並べた作品を眺めると、「狭すぎる」と思うところもあれば「もっと近づけた方がいい」と感じるところも出てきます。

大事なことを言います。
美術作品は、1点1点パーソナルスペースを持っているのです。
マンガ好きな人なら『HUNTER×HUNTER』の「円」を想像してもらってもいいです。ウォルター・ベンヤミンが言うところの「アウラ(Aura)」のようなものかもしれません。

つまり、近くに別の作品を置くことを拒絶するような、存在感のある作品もあるのです。そうした作品に、あまり別の作品を近づけてしまうと、作品同士がケンカをして見る人を落ち着かない気持ちにさせてしまいます。

作品それぞれが必要とするパーソナルスペースを感じ取る、これが学芸員が磨かなくてはいけないセンスだと言ってもいいでしょう。
非常に感覚的な部分なので、数値で測ることができませんし、これだという正解はありません。学芸員によっても「これぐらい離した方がいいだろう」と感じる間隔は違います。
私は新人の頃、上司に作品を並べてみろと言われてやってみたところ、「狭すぎる!」とか「全部やり直し!」とかビシビシ直されました。そうしてただ機械的に等間隔で並べればいいというものではないと学んでいきました。

私は結構ゆったり並べるタイプなのですが、これだと当然作品総点数が少なくなります。見る人によっては「なんかスカスカだな……」と感じるかもしれません。
それを嫌って、つまりなるべくたくさんの作品を並べたくて、みっちりと作品を並べるタイプの学芸員もいます。作品にパーソナルスペースがあるのは分かるけれど、それよりも展覧会を成り立たせるための展示総数を重視するという考え方ですね。
お客さんからしたら、たくさん作品を見ることができる方がうれしいかもしれないので、これはこれで間違っていないと思います。

ただ、あんまりみっちり並べてしまうと、デパートの展示即売会っぽさが出てしまうので(伝わるかな?)、私は好みではないのですが。うん、本当に好みの問題ですね。

当然、見る側にも好みがあるでしょう。ゆったり見たい。たくさん見たい。人それぞれですよね。
だから展示の仕方であなたと相性がいい美術館、ちょっと合わないなと感じる美術館、いろいろあるということです。「なんかここの美術館の展示、いつ来ても落ち着くんだよなぁ」という場合は、きっとあなたと相性がいい美術館なのでしょう。

ぜひ、今度美術館に行った時は、作品の間隔にも注目してみてくださいね。

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