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日本の展覧会の黄金時代

美術館という施設と展覧会という制度が日本に根付くことで、「美術」「アーティスト」などの概念が浸透したという話をしました。

それでは次に、その展覧会がいかに人々を熱狂させてきたのか、実例をまじえて紹介したいと思います。
今では信じられないほどに、展覧会がエンターテイメントとして強大な力を持っていた時代が日本にはあるのです。

高度経済成長期の3大ヒット展

1945年に終戦を迎え、焼け野原となったところから、皆さんご存じのように日本は驚異的な復興を遂げます。右肩上がりに日本経済が発展していく様子は「東洋の奇跡」と他国から評されました。

そして1964年には東京オリンピック、1970年には大阪万博が華やかに開催され、その間に日本のGNP(国民総生産)は何とアメリカに継ぐ世界2位へと上昇しました。名実ともに日本は経済大国となったのです。

さて、そんな日本の勢いを物語るように、海外から超稀少な美術品、文化財を日本に持ってきて展示する特別展が次々と開催されました。

「ミロのビーナス特別公開」

まず、オリンピックイヤーの1964年には国立西洋美術館において「ミロのビーナス特別公開」が行われます。オリンピック発祥の古代ギリシャにちなんだ美術品がやってきたわけです。
この時の入場者総数は83万人で、1日平均では何と2.5万人が来場しました。

「ツタンカーメン展」

しかし翌年にはもうその記録が塗り替えられます。
1965年に東京国立博物館では「ツタンカーメン展 古代エジプトの秘密」が開催されました。エジプトでは門外不出とされていたツタンカーメンの黄金のマスクが特別に来日するということで、これを一目見ようと人々が押し寄せた結果、入場者数は130万人、1日平均で見ても2.9万人でした。
さらにこの展覧会は巡回展として、東京国立博物館の後に京都市美術館、福岡県文化会館でも開催され、3会場の合計入場者数は驚異の295万人です。都市部をのぞくほとんどの県の全人口よりもはるかに多い人数が展覧会に訪れたことになります。

「モナ・リザ展」

そして1974年、同じく東京国立博物館で開かれたのが「モナ・リザ展」です。
フランスのルーブル美術館の目玉レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が、日本にやってくるなんて今では到底考えられませんよね。この展覧会には2ヶ月弱の会期中に150万人が訪れました。
これは日本で行われた展覧会のうち、単館開催では入場者数歴代1位として今も破られていません。1日平均にしても3.1万人です。当時実際にこの展覧会に行った人の話を聞いても、「人の頭しか見えなかった」「数秒間だけ見た」そうです。そりゃそうですよね。
入場者数でこれを超える展覧会はおそらく今後も無いのではないでしょうか。

これだけのものを日本に持ってくることができるほどに、当時の日本はイケイケだったのです。そしてここにきて、美術は完全に大衆のエンターテイメントというポジションを獲得したと言えるでしょう。