パスポート 【ショートショート】
D市の国道沿いにある スーパーマーケット
の「東友」に 若いカップルがやって来た
彼らは 気さくで頼りがいがある 健太郎と
ちょっとお茶目で いたずら好きな 真澄 だった
二人は2年前 出会い系サイトで知り合ったが
その半年後には 同棲を始めていた
生鮮食品売場で パッションフルーツを眺め
ながら 健太郎がこんなことを言い出した
「ねぇ真澄ちゃん 今 お金は 無いけどさ
俺が何とかするから 海外旅行に行こうよ!」
「あっ いいね~ 健ちゃんと一緒ならどこでも
OKだけど でも海外は ちょっと無理かな~ 」
「えっ? 海外 ダメなの~? 南太平洋にある
ニューカレドニアなんか どうかなぁ?って
思ってたんだけどなぁ … 」
「そこ … “天国にいちばん近い島” だっけ? 」
「そうだよ! コバルトブルーの大海原に
ゆっくり沈む夕日を見に行こうよ! 」
「そうねぇ … 」
「とはいえ … 俺のパスポートは 有効期間が
とっくに過ぎちゃってんだよなぁ …
あっ 真澄ちゃんが 持ってないなら 一緒に
作りに行こうか? “パスポート”! 」
真澄は 健太郎の問い掛けには 何も答えずに
“りんご” が詰め込まれた ポリ袋を 指差して
こんな質問をした
「ねぇ ポリ袋に “訳あり”って書かれたシール
が貼ってあるじゃない? あの意味は な~んだ?」
「あぁ… 味や品質には問題ないけど 小傷が
あるとか 形が良くないとか 賞味期限が近い
とか … 普通に売れない理由があるので
安くしました! ってことだろう? 」
「なんだ 知ってたか … でもさ 6 個も入ってて
330円だなんて安いと思わない?」と真澄が
笑顔で言うと 健太郎は 大きく頷いた
「 よし! 買おう!」
ところが 真澄は何を思ったのか 急に真顔に
なると 突然こんな事を 言い出した
「あのねっ 健ちゃん … 驚かないでね …
私 健ちゃんに 黙ってた事 あるんだぁ」
「ん? なんだよ … 黙ってた事って 」
「私ね … 実は …訳ありなんだよ 」
「えっ! 何時から りんご になったの?」
「バ~カ 真面目に聞いてよ~!」
「ハハハ … ごめん、ごめん、悪かったよ!
一体 真澄ちゃんに どんな訳があるの?」
「私 … 4年前までね …」
「うん … 4年前まで?」
「 男だった!」
「 はぁ?」
「ゴメンね! 早く 打ち明けようと
思ってたんだけど 言い出せなくて…」
「 えっ! マジで? ホントなの? 」
「 ジャーン! 健ちゃん 引っ掛かかりました~
ねぇ!こんな美女が 男に見えるんですか?
そんな話 出鱈目に決まってんでしょ!
その目は節穴ですか~~? キャハハハ … 」
「チッ! ヤラレタよ~…」
二人は 買物を終えると 食材を車に積み込んで
キャ~キャ~言いながら 仲良くアパートへと
帰って行った
※ ※ ※
別の日の朝 健太郎は「遅刻だ~!」と叫び
ながら バタバタ出掛けて行ったけど 真澄に
とっては 貴重な休日だった
真澄は 押入れの天板を そ~っと押し上げると
奥に隠してあった “ある物” を 引っ張り出した
それは …
真澄のパスポートだった!
そして それに記載されていた内容は …
P(パスポート) JPN(日本)
TANABE(田辺)
MASUMI(真澄)
JAPAN(日本国籍)
M(男性)
10 APR 20 … (発行日)
4年前 … 真澄は 何年もかけて貯めた大金を
持って 日本から『 某国 』へと渡った
そして あるブローカーと接触し 念願だった
G病院に入院すると …
「彼」のパスポートには 出入国したことを
示す “ 証印 ” が しっかり押されている!
こんなの 健ちゃんに見つかったら …
「だから …
いつかバレるに 決まってるけど …
早く「パスポート」を処分しなくちゃ!」
(おしまい)
この記事は …
『studio_maki🍀note.2025.4.17_φ(・_・☘』
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