傑作ホラー&リベンジアクション「サユリ」
サユリ 鑑賞。前半のホラー展開から後半のばあちゃん無双は期待通りながら、前半の怖さも後半の喜怒哀楽揺さぶる展開も予想以上の面白さで感情がぐちゃぐちゃに。ばあちゃん無双はバイタリティも倫理もぶっ飛ぶ傍若無人で、ほんっとうに凄かった。上映回数少ないけど劇場は満員でした。
— 昼行灯 (@gamconp) August 25, 2024
押切蓮介の漫画は、ハイスコアガールやゲーム漫画は愛読していましたが、ホラーは未読で。サユリの原作漫画も、本作に合わせて購入。鑑賞後に読みました。
原作未読で挑みましたが、映画を楽しむには全く問題は無かったです。
まず前半の”曰く付きの家”に引っ越してきた則雄たち神木一家が、一人、また一人とおかしくなって死んでいく描写がしっかり怖い。さすがのR15で、流血描写も結構ありましたが、それでもずっとそういうシーンを見せ続けない塩梅はさすが白石晃士監督、慣れてるなあ、と。激しい流血は姉が首を切るシーンくらいで、怖いながらも抑制しているように感じました。
そして予告でも流れていた後半からの婆ちゃん無双。これは期待以上というか思っていた以上に無茶苦茶というか、とにかく生命力溢れる逆襲劇になっており、会場からも笑いやすすり泣きが聞こえる事態になっていました。
前半はボケていたように見えた婆ちゃんが以前は太極拳の師範で、則雄もしごかれていたと思われる描写が挟んであり、伏線はあったものの、”目が覚めた”婆ちゃんの変わりようは本当に凄い。演じていた根岸季衣さんの凄みが伝わります。
そこからまさかの修行シーン。ホラー映画でまさかの修行シーンですよ。沢山食べて沢山体を動かし、沢山寝て怨霊に付け入る隙を与えないというロジックには、不思議と納得してしまう力強さがありました。
加えて下ネタギャグをぶつけて退散させるという、怨霊ハラスメントまでやってしまう傍若無人。え、そんなんで退散しちゃうの?という疑問すらふっとばす口に出したくなる下ネタ(笑)に、会場からも苦笑に似た笑い声が出ていました。
そして人間側の準備が整ったところで訪れるクライマックス。
則雄を心配する同級生女子や、婆ちゃんが拉致してきたサユリ(怨霊)の家族を巻き込んで、法も倫理も無視した人と怨霊の白熱バトルが繰り広げられていました。ここも派手にCGを多用せず、強さと力強さと、結構なリアルさが表現できており、ハリウッド映画の1/10以下の予算で作っているだろうに、怖さでは負けない演出と技術に惚れ惚れしました。
クライマックスで明らかになるサユリの過去は、かなり凄惨で虫唾が走るものでしたし、父親に至っては因果応報な最後に、目を背けたくなりつつも溜飲が下がったりしていました。それでも怨霊であるサユリに対して過剰に同情的にはならず、きちんと生きる者の生命力で解決に導くラストは、確かにありそうでなかったホラーの着地点で、拍手喝采ものです。
最後に、見終わった後に読んだ原作漫画との違いなど。
基本的なストーリーは同じながら、細部に映画的なアレンジが加えられていました。
・則雄と住田(霊感女子)との交流がより甘酸っぱく、恋愛感情が明確に。あと住田がBL漫画を読んでいるというアレンジもあり、そこで交わされる会話が最高。
・冒頭から怨霊の存在が明確に。取り憑かれた姉が小学生の弟の頭を柱にぶつける(予告でも流れたシーン)衝撃シーンも映画オリジナル。
・婆ちゃんが太極拳をやっており、怨霊への攻撃手段にもなっている(これは原作者との話し合いで追加されたっぽい?)。
・下ネタギャグ
・サユリの過去(父親が……のやつ)
などなど、決して原作に忠実な映画化ではありませんので、漫画のほうが良かった、と感じるファンもいるだろうなあ、と感じました。
ただ、押切蓮介先生もあとがきで、「人間がオバケに一矢報いるホラーが見たくて描いた」とあり、この精神は映画にも見事に昇華されており、ホラー映画でよくある、解決したと思ったら恐怖は終わっていないエンドもなく、まさに生命賛歌、人間讃歌の内容になっていました。
余談ですが、上記変更点以外で、サユリの怨霊がやたらバールを持っている事が多く、実際彼女が殺されたときもバールを振り回しており、そのバールを妹が奪って殴るのですが、見れる間中ずっと頭の中に、「バールのようなもの」(よく犯罪時に警察発表で使われる言い回し)という単語が浮かんで一人妙に可笑しかったです。なんであの家あんなにバールがあったんでしょうね……?
公開館数も100強と多くなく、私が行った映画館でも初週にもかかわらず1日2回しか上映されていませんでしたが、座席はほぼ満席で、見た人の評判もとても良かったです。
まだまだ暑い夏が続く中、ゾッと身体を冷やした後、ご飯をたくさん食べたくなるという不思議な体験をするため、劇場に足を運んではいかがでしょうか。

