『Elysium-9の残響 ~触手の記憶~』
この話で出てくるAIが捏造した、架空の小説を現実化したよ!!
本当になんでもありだな、今の時代って…(笑)
メンバーシップだとお安く読めます。
『Elysium-9の残響 ~触手の記憶~』
第1章:静寂の残骸
軌道高度400km。
地球は青く、静かに輝いていた。
アリア・ヴェールは、Elysium-9の観測デッキで、ヘルメットのバイザーをゆっくり拭いた。
指先がガラスに触れるたび、微かな振動が伝わってくる。
それは、ステーション全体がまだ生きている証だった。
外の宇宙は冷たく、無音で、無慈悲だった。
内部は、甘く、重く、湿った空気が漂っている。
酸素供給システムはまだ機能しているが、空気には微かな甘い匂いが混じっていた。
それは、生き物の吐息に似ていた。
腐敗ではなく、むしろ熟成した果実のような、甘ったるい匂い。
アリアは32歳。
元生物学者であり、フィールドエンジニア。
Elysium-9は、異星由来の生命体サンプルを解析するための極秘研究施設だった。
公式には「深宇宙探査支援ステーション」と呼ばれていたが、実際はXeno-Parasite――寄生性異星生物の培養・観察を目的としたブラックプロジェクトの拠点だった。
3週間前、すべてが変わった。
冷却システムの「事故」が起きたという公式発表。
だがアリアは現場にいた。
培養槽の緊急解放警報が鳴り響き、緑がかった粘液が床に広がるのを、彼女は目撃した。
その瞬間から、通信が途絶え始めた。
最初は断続的だった。
次に、完全に途切れた。
救助船の到着予定は「無期限延期」。
彼女は知っていた。
これは事故ではない。
解放されたのだ。
今、アリアは一人で残されていた。
データ回収装置を背負い、暗い通路を進む。
壁はすでに、脈打つ有機繊維に覆われ始めていた。

元は金属とプラスチックでできた無機質な廊下だったはずなのに、今は青白い発光粘液が天井からゆっくり滴り落ち、床に小さな水溜まりを作っている。
粘液は光を反射し、まるで生き物の血管のように脈打っていた。
「ログ進捗……68.4%。メインサーバールームまで推定残り1時間58分」
アリアは独り言のように呟いた。
声がヘルメット内に反響する。
自分の声が、こんなに寂しく聞こえるなんて、初めてだった。
彼女は震えを抑えるように、深呼吸をした。
酸素マスクのフィルターが、かすかに湿った音を立てる。
重力発生装置が死んだのは、昨日だった。
今は完全なゼロG。
身体がゆっくり浮遊する。
アリアは壁に手をつき、小さな推進器の微調整で進む。
ブーツの磁気ロックはもう役に立たない。
代わりに、指先で壁の有機繊維を掴む。
それは柔らかく、温かく、指に吸い付くように反応した。
嫌悪感が背筋を走るが、無視するしかなかった。
通路の角を曲がった瞬間――
暗闇の奥から、何かが動いた。
ゆっくりと。
一本。
二本。
……数十本。
光る粘液を纏った触手が、静かに伸びてきた。
太さは人差し指から腕くらいまで様々で、先端は細く、先細り。
表面は脈打つ血管のように青白く発光し、粘液が滴り落ちては宙に浮かぶ小さな球体になる。
ゼロGの中で、それらは優雅に揺れながら、彼女の方へ近づいてくる。
アリアの心拍数が急上昇した。
ヘルメットのHUDに警告音が鳴り響く。
「心拍数142……危険域」
無視する。
逃げようとした。
推進器を最大出力に切り替え、後退する。
だが触手は速かった。
一本が、彼女のブーツの先を優しく撫でた。
冷たくない。
むしろ……温かい。
アリアは歯を食いしばった。
次の瞬間――
触手が、足首にゆっくり巻きついた。
締め上げる力は弱く、まるで古い恋人が足を絡めてくるような、親しげな感触だった。
「…離せ」
声が震えた。
だが触手は、まるで「もう大丈夫だよ」とでも言うように、優しく締め上げる。
粘液がブーツの隙間から染み込み、素肌に触れる。
温かく、滑らかで、わずかに脈打つ。
それは、痛みではなく、安心に近い感覚だった。
アリアの視界が揺れた。
頭の中に、かすかな声が響く。
『アリア……』
それは、レイの声だった。
彼女の瞳が、わずかに見開かれる。
5年前に失った恋人の声。
死んだはずの、温かな声。
「…嘘だ」
首を振る。
だが触手は増えていく。
一本が腰に回り込み、もう一本が腕を優しく絡め取る。
ゼロGの空間で、彼女の身体がゆっくりと開かれ、浮遊する。
抵抗する力が、徐々に抜けていく。
触手は、ただそこにあった。
彼女を傷つけるでもなく、ただ抱きしめるように。
アリアは息を詰めた。
これは、終わりではない。
まだ、始まりに過ぎないことを、彼女は本能的に理解していた。

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